密談2
ブライトンはしばらく驚き固まっていたが、恐る恐る言葉を繋ぐ。
「ええっと、クリストファーは本当にそんな大層なお嬢さんとの婚約を決意したんですか?」
「信じられないのも無理はない。最初は、彼女の活躍ぶりに私も頭を抱えた」
疲れた顔の宰相が言う。
「王家で囲おうとしたら、先に釘を刺されてね。クリストファーと王命で婚約させても良かったんだが、それも許されなかったんだ。婚約はクリストファー次第と言われていた。クリストファーが決断するまで、かなり気を揉んだよ」
遠い目をした王太子が言う。
「クリストファー殿は、年齢差を気にされていてね。正直、イザベラは同年代じゃ手綱を握れない。クリストファー殿に一目惚れするくらいじゃ、箱入りの王子様に魅力は感じないだろうしね。こちらとしては、惚れた弱みでもなんでも使って操縦してくれそうな、クリストファー殿が貰ってくれるとなってかなり助かる。まだまだ隠し玉があるから陞爵も簡単に行えるだろう」
レオナルドの言葉に3人が吠えた。
「「「まだ、何かあるのか?!」」」
「近いのだと武器関係かな。ダンジョンに潜るようになって、素材があり余ってるみたいでね。領地の騎士団の武器防具がかなり増えてる。錬金術の練習で作りまくってるよ。出来のいいのは、城の騎士団でも買い上げるか、献上してもらおうかと相談してる」
「ああ、黒の殲滅者の武器はブラックミスリルだと、冒険者間で話題になってるだろ」
宰相はソファに沈んだ。
「黒の殲滅者の着てるローブは、攻撃魔法が当たると魔法が掻き消えるとも聞いたな」
王太子もソファに沈んだ。
「それは事実だな。スタンピードの時しか使ってないらしいけどな」
レオナルドがあっけらかんと言う。
「ブラックミスリルの武器って…魔法攻撃が効かないローブって…」
ブライトンは俯いてぶつぶつと呟いている。
超希少素材であるブラックミスリルの武器は、十数年に1度くらいの頻度でダンジョンから出て、手に入れた冒険者がものすごく話題になる。
そして、手に入れた冒険者は必ず大成功を納め、歴史に名を残している。
そんな冒険者の憧れの武器だが、加工が難しく、扱える職人はほぼおらず、扱えてもダンジョン産の武器の性能を超えた者はまだいない。
実際はイザベラが自重なしで作成して、とんでも性能の武器が出来てたりするが、4人はイザベラが作ったとまではまだ気づいていない。
魔法攻撃が無効化されるローブは、同じ効果があるものが国宝で保管されている。
大きなダンジョンの下層の宝箱でもたまに手に入る為、高ランク冒険者は持ってる人が多い。
しかし、ローブの素材を考えると、イザベラの作成した物の方が遥かに貴重だったりする。
4人は、この事にも気づかない。
<使ってる>だけで注目されるアイテムを、<作成できる>事実に誰が気づくか楽しみである。
「あとなー、発表するか相談したい魔導具があるんだけどここで言っていい?これなら簡単に陞爵出来そうなんだけど」
レオナルドの言葉に、3人がガバッと顔を上げて姿勢を正した。
王太子が宰相と顔を見合わせ頷き合い、レオナルドに先を促す。
レオナルドがブライトンを見やると、彼も覚悟を決めた顔をした。
「備蓄倉庫1つ分くらいの容量のマジックバッグが量産できる。しかも、時間停止機能付き。今のところ、機能制限で許可した人間以外に中身の出し入れ出来ないって機能はつけるつもり。どう?」
3人はゆっくり内容を理解して、目を見開き、固まった。
今までは、マジックバッグはダンジョンでしか手に入れられなかった。
しかも、手に入れられるのは稀である。
そこから市場に流れるのは、更にごく僅かだ。
それを、量産である。
最初に意識を取り戻したのは、宰相だった。
「レ、レオナルド、それは誰でも作れるようになるのか?」
「いや、今のところイザベラだけだ。まあ、悪用されても困るからな、数も絞るつもりだ。クリストファー殿とイザベラで、販売体制を整えることになる。どうだ?王家がバックアップしてやれば陞爵しやすいだろう?」
「いやいやいやいや、それ革命だからな!その容量のマジックバッグが作成出来る事実だけですごいことだぞ!」
「利益はある、が、危険もある、か。ふぅ」
「なんでこんなすごい話聞いてるんだ、私。ああ、息子が関わるからか…こんな未来は予想外だな…まだまだ現役と思ってたのに、急に引退したくなってきた」
「くくっ一緒に悩んでくれる仲間ができて嬉しいな〜」
ここ数年イザベラに振り回され、度肝を抜かれ続けたレオナルドは、隠すより巻き込む事を選んだ。
嫁ぐ娘の為に、自分の為に、王家は逃がさない。




