救出作戦
イザベラは、影部隊と共に救出作戦に参加した。
作戦に参加することが決まった際、前世のトランシーバーのような通信魔導具を嬉々として提供し、レオナルドが(また国宝級…)遠い目をした一幕があった。
影部隊は、イザベラに追跡を撒かれた者がほとんどであり、イザベラを侮る者はいない。
商人一家に変装し、転移門を使いランズウェイ領へ移動。
イザベラが地下牢にいたパーズコートの妹を救出し、影部隊が公爵家の悪事の証拠を集めた。
救出完了後に、ローランド領の影部隊とレオナルドに通信魔導具で報告。近衛のスパイ2人も城へ移動された。
レオナルドは、2つの影部隊が到着するのを城で騎士団と共に待っていた。
捕らえてから、ずっと妹の心配をしているパーズコート。
妹が救出された後、公爵からの報復の可能性もある。
彼ら兄妹を保護する為、レオナルドは動いていた。
城で再会したパーズコート兄妹は、抱き合って泣いていた。
イザベラは、2人の姿を見て、動揺した。
(これは現実なんだ…)
何故かお腹の辺りが重くなった。
今まで、精神が身体につられていたのだろうか。
前世にはない【魔法】という【玩具】を手に入れて、調子にのっていたのだろうか。
今世をちゃんと生きてるつもりだった。
でも、気づいてしまった。
【画面】の向こう側、そんな感覚で観ていたのでは。
【ゲーム】の世界、そんな感覚で考えていたのでは。
ほとんど領地からでないで、自分のしたいことをしてきた。
この【魔法のある世界】で、新しい生である【貴族】としてちゃんと考えていただろうか。
前世に引っ張られていなかったと、言えるだろうか。
身近に【理不尽な不幸】がやってきて、やっと理解した。
私の周りが強かっただけだ。
理不尽に対抗できる力があった、それだけなのだ。
何かを考えこんでいるイザベラの頭を、レオナルドはそっと撫でた。
イザベラは、レオナルドの顔を伺った。
レオナルドは少し眉を下げて、困ったような顔をしていた。
ああ、いくら規格外でも、この小さな女の子が、この人には自分の可愛い娘なのだ。
心配されて当たり前のことをしてきた、とやっと理解した。
「おとうさま、心配かけてごめんなさい…」
前世ではよく観た、見返りを求めず他者を救う【ヒーロー】に、私はなれない。
家族に害になるから、暗殺者もスパイも捕まえた。
行き先の邪魔になるから、盗賊を捕まえた。
私には高尚な心なんてない。
でも、何かを成し遂げるチートを持ってる。
これが、アッシュフォード王国の裏社会で【黒の断罪者】と恐れられる人物の誕生した日となる。




