父の災難は止まらない
サフォークの案内で、王太子と宰相のもとへ向かう二人。
スパイは、イザベラの風魔法で運んでいる。
幼女の後ろを捕縛された男性が浮いているのは、すごく目立っている。
重厚な扉の前につき、サフォークがノックをすると部屋に招かれる。
中には金髪碧眼の青年と、銀髪碧眼の美丈夫が待っていた。
【アレクセイ・アッシュフォード】
王太子殿下
【ウィリアム・エグリントン】
宰相 王弟殿下
入室すると防音結界が張られた。
「レオナルド殿、堅苦しい挨拶はなしだ。後ろの浮いてる補佐官はなんだ?」
「レオナルド、此度はマリアンヌが世話になる。無事到着したか?」
王太子と宰相は、同時にレオナルドに問いかける。
「王太子殿下、宰相閣下、昨日マリアンヌ様は無事に到着されました。その際、娘のスキルで近衛兵から2名のスパイが確認され捕縛いたしました。また、こちらの補佐官もスパイだったので捕縛しました」
「「はっ!?」」
「こちらが娘のイザベラです」
「ローランドこうしゃくけちょうじょ、イザベラともうします」
「イザベラの話では、他のスキルの相乗効果により通常の鑑定スキルでは確認出来ないこともわかるようです」
それからお父様が、スパイ達の詳細を説明した。
近衛騎士のヴェラアースは、ギャンブルでスペンサー公爵に借金があり、マリアンヌ様の情報を売っていること。
同じく近衛騎士のパーズコートは、ランズウェイ公爵に妹が人質にとられ、マリアンヌ様のスケジュールを漏らしていたこと。
ローランド領内でマリアンヌ様を襲撃してきた盗賊は、隣国のヴァロワ王国からの暗殺者だったこと。
ヴァロワ王国の第3王女が王太子殿下に惚れて王太子妃の地位を狙っていること。
補佐官のロベルト・サンディは本名【カルロ・グラフモン】でヴァロワ王国のスパイであること。
11年前にサンディ男爵が亡くなった息子の身分を売ったこと。
「レオナルド、それが事実ならそなたの娘は凄まじいな」
「レオナルド殿、近衛の2人は後日こちらに連れてこられるか?事実確認をする」
王太子は疲れたようにソファの背もたれに沈み、天を仰いだ。
宰相はこめかみを揉みながら何かに耐えているようだ。
「連れてくるのは構いません。しかし、パーズコートの妹の救出を優先したく」
「スペンサー公爵は娘を側室に勧められたことがあるからその関係だろうな。ランズウェイ公爵は昔マリアンヌに惚れていた変態だ。まだ諦めていなかったか」
「パーズコートの妹か。騎士団で救出可能か?」
「それなのですが…妹の状態が不明なので、先にイザベラに潜入して確認してもらおうかと思います。隠蔽スキルの上位スキルを保有しており、感づかれずに潜入出来るようでして…イザベラ、見せてもらえるか」
「はい!おとうさま!」
イザベラがその場で隠密スキルで姿を消す。
「「「なっ!」」」
「すごいな。一瞬で消えたぞ」
「感知スキルでも確認できませんね」
「これは他に知られるとまずいな」
「イザベラ、出ておいで」
イザベラが姿を現すと、王太子と宰相は頭を抱えた。
「レオナルド、これは…王家に迎えることを考えないといけないかもしれんぞ」
「そうですな…第4王子が12歳ですが、婚約者にどうでしょうか」
「そ、それなのですが」
「あの!わたくしサフォークさまをくどいてるさいちゅうなのでこんやくはむりです!」
「「はあああ?!」」
「イザベラ!お願いだから少し黙ろう!」
「いやです!かってにこんやくしゃをきめられるなんてだまってられません!」
王太子と宰相に、驚愕の顔で振り向かれたサフォークは狼狽えた。
「さ、先程お会いした時にイザベラ嬢に結婚を申し込まれましたがお返事などはまだ…」
「ううむ、サフォークが優秀なのはわかっているが…確か怪我を理由に家督は次男に譲るとか言ってたよな」
「しかし、サフォーク伯爵家の次男って言ったら騎士団にいるモロ脳筋だよな?当主は無理じゃないか?」
「はい。次男に家督は譲りますが、領地経営は私が補佐をしようかと」
「え!?サフォークさまのけがはそんなにひどいのですか!?」
「はい。右腕と左脚の怪我の後遺症で戦闘は無理かと。左眼も失ってます」
「ポーションでもなおらなかったのですか?」
「特級ポーションがあれば治るかもしれないとは言われましたが…」
「なーんだ、とっきゅうポーションならありますよ!」
「「「「え?」」」」
「イザベラ?特級ポーションは幻のポーションって言われてるんだよ?ダンジョンでも発見されたのは過去に数回。なんで持ってるの?」
「れんきんじゅつでつくりました!」
「「「「はああああ?!」」」」
「いままではきしょうそざいがおおくてつくれるひとがいなかったのでしょう」
【特級ポーション 材料】
ヒュドラの肝
ドラゴンの花
オークキングの血
マンドラゴラ
上級薬草
強魔力水
「ヒュドラのきもは、スキルに【超回復】と【再生】のりょうほうをもってるこたいじゃないと、とっきゅうポーションにならないのでちゅういがひつようですね」
「なんでそんなこと知ってるの!?」
「しらべました!」
「いや、それよりその素材を自分で集めて作ったの!?」
「はい!ローランドりょうないであつまりましたから!」
「待って?!領内にヒュドラとドラゴンとオークキングがいたの?!」
「はい!こっきょうふきんのまのもりにいました!」
「ちょっと待って!魔の森に一人で入ったの!?…イザベラ、帰ったらお話しようか。全部話してもらうからね!」
「こちらがとっきゅうポーションです!サフォークさまおためしください!」
「レオナルド殿、後日報告をもらっていいかな。流石にこんな有能な人物を放置しておけない」
「イザベラ嬢、特級ポーションは国宝に匹敵するが、サフォークにあげていいのか?」
「まだありますしだいじょうぶです!こうかもしりたいですし!」
「「「「はあああああ…」」」」
「サフォーク、飲んでみろ」
「王太子殿下よろしいのですか?」
「私も効果があるのか見てみたいしな。サフォークの怪我は有名だ。これで効果があれば、特級ポーションのレシピが確立されるだろう」
「イザベラ嬢、私がいただいて本当によろしいのですか?」
「はい!サフォークさまのやくにたてるならほんもうです!」
サフォークがイザベラから特級ポーションを受け取り、意を決して飲んだ。
サフォークの身体が、ポーションを飲んだ時特有の淡い光に包まれる。
皆が見守る中、顔の変色部分が消えた。
光が消えると、サフォークが腕や脚を動かして確認し、左眼の眼帯を外した。
そこには失われたはずの左眼があった。
サフォークは何度も瞬きを繰り返し、右眼を隠して左眼だけで部屋をみた。
「目が視えます。身体も違和感が消えました」
唖然としたサフォークが呟いた。
「…特級ポーションが本物だと証明されたな」
「これはすごい発見になりますよ」
「娘が有能過ぎてツライ」




