短期留学9
「あの、私、第二夫人にいかがでしょう?」
あっちゃー。
私の短期留学に合わせて、宰相閣下とクリス様が大使と一緒にリュクセト王国の建国祭の夜会に参加してくれたのだけど、クリス様に言い寄る女性がでてしまった。
リュクセト王国は大陸の中では小さめな国で、200年程前までは閉鎖的な国だった。
その為、新種の流行り病の薬を輸入するのが遅れて貴族が激減し、産めよ増やせよ政策で一時的に貴族は強制的に第三夫人まで娶ることになった。
もうとっくにこの政策は廃止されているのだが、いつの時代もいる好色な権力者のせいで、この無駄な慣習が未だに続いているらしい。
ただ、ここ数世代は貴族の令息令嬢が余りに余っていて、雇用するにも限度があるしどうしよう?と国の上層部は悩んでいた。
アッシュフォードの上位貴族は教育が行き届いてるから嫁も婿も他国から人気があるので、リュクセトの外務大臣が恥を忍んで我が国に教育について問い合わせたのが、私の短期留学の理由だ。
ぶっちゃけ、アッシュフォードで10歳前に学ぶ程度を学園で学ばされて愕然とした。
男性が学ぶ、領主科や騎士科、文官科はもう少し専門的なことを学ぶらしいが、女性が学ぶ淑女科は正直言って無駄でしかなかった。
男尊女卑と言うよりも、女性は家で守られる者という存在で、ほんわりおっとりしてる家庭的なタイプを育成してると感じた。
他国で見た、できる淑女!なタイプも、痛い勘違い貴族令嬢なタイプも、アッシュフォードみたいな文武両道タイプもいない。
うーん、たまにアッシュフォードの下位貴族にいる教育失敗した令嬢が近いかな?
読み書き計算、刺繍ができて、マナーが程々で、文学(恋愛小説)が好きな家からほぼ出ないタイプ!
他国からしたら、貴族として無知で無垢ななにもしないできない存在を育てる意味がわからないけど…。
まあ、一夫多妻制ならこのくらいの女性の方がいいのかもしれないね。
何かあっても修羅場にならないで、女性の泣き寝入りになりそうだ。
「ごめんなさいね、アッシュフォード王国は一夫一妻制なので第二夫人は娶らないの。愛人も許されてないから、他を探して下さる?」
「そんな愛人なんて…ひどい…」
うーん、素で悲劇のヒロインをする貴族女性って需要あるか?
策略で個人に使うなら強かだな〜と思うだけだけど、大勢の前でやるのは演技っぽいし自分に酔ってる感じがして恥だと思う。
というか、勝手に失礼な提案をしたのだから、ここは素直に謝るべきでしょう。
「この国の教養レベルだと他国では愛人になれるかも怪しいから、国内でお探しになるのが宜しいわ」
「でも…」
クリス様を涙目で見つめてるけど、クリス様は私の方を見つめて彼女を完全無視!
他の人との会話を盗み聞きして私達が年の差のある婚約者同士だとわかったみたいけど、既婚者じゃないなら第二夫人としてすぐ娶ってもらえそうって短絡的に声かけるのはどうかと思うよ?
「失礼だけど、挨拶もできないマナー知らずの女性は国内で消費して貰わないと国際問題になるから諦めてちょうだい」
ピシャリと言い切ったら、こちらを伺っていた何人かの男性が動いて連れ去ってくれた。遅い!
「ナチュラルに相手を悪者にして我を通そうとする方でしたね…」
「会話が成り立たないタイプだよね…学園は大丈夫だった?」
「ほとんどが男女別の空間なので、今までは無害でしたね。何というか、教養がなさ過ぎて子どもを相手にしてる感じです」
「確かに…他国を招く夜会に参加してはいけないレベルだったよね」
「リロイ王国とは次元が違うヤバさを感じました。あっちはマナーは一応できてましたからね」
帰国したら、宰相閣下に教育改革についてレポート提出しなきゃいけないのだけど、この牧歌的な国を教育改革したらどうなるのか予想がつかなくてめちゃくちゃ怖い。
知恵をつけた悲劇のヒロイン大量生産とか、凄くイヤだ!




