幕間 ――reverse side――
アケメネス朝ペルシアには、イラン人の栄華と誇りのルーツがある。
紀元前六世紀の昔、西アジアの覇権を握り、ギリシャと戦い、世界に文化を示したのがアケメネス朝ペルシアだった。イラン人はそのペルシア帝国の末裔だということに誇りを持っている。砂漠の遊牧民たちとは由緒が違うのだ。
そのアケメネス朝の中心地として栄えたのがペルセポリスだった。
ペルセポリスはギリシア語で「ペルシア人の都」という意味があり、世界遺産にも登録されている。そしてそのペルセポリスを――イランという国の礎を――築いた人こそがダレイオス大王なのです。
――というのがファルリンから何度も聞かされた説明で、創汰も今やそらんじることができた。
学園祭を翌日に控え、一年一組のペルセポリスは完成を迎えていた。
校庭の一角、二メートル四方の持ち場に作られたオブジェは、「ダレイオス大王と従者」のレリーフだ。
ペルセポリスの壁彫刻を模したそのオブジェは、近所の木材加工業者から譲り受けた廃材を削って作られていて、制作指揮官のこだわりに溢れていて、創汰もペルセポリス建設班の一員としてそのこだわりに一役買っていた。
「わあ、すごくいい出来!」
「さすがファルリンじゃね?」
「そうかなー、一線を画したかなー」
満更でもなさそうに胸を張る制作指揮官――ファルリンの傍らには、学園祭実行委員会の腕章を巻くスズメと晴人がいた。二人はペルセポリス建設班ではないけれど、完成の報を受けて駆けつけたらしかった。
同じ腕章を着けた二人はまるでペアルックのようで、なんだか公認の恋人同士のようで、創汰の胸はささくれる。
――でも、もうどうでもいい。
なげやりな創汰には、屋上の一件が影響している。
どんなに能力が高くても勝てないものがあると知った。みんなが晴人を愛している。女子の評価基準はやはり顔とコミュ力なのだと、忌憚のない答えを思い知らされた。
――顔とコミュ力もチートでなんとかなりゃいいのに。
辛くなって創汰は二人から視線を逸らす。すると今度は陽奈と目があった。陽奈は遠巻きに一人つまらなそうにしている。陽奈もペルセポリス建設班の一人なのだが、あの日以来言葉を交わしていない。朝食の時間も一緒にならなくなった。
気まずい視線を空に逃がす。
――二か月も学校を休んで大丈夫だろか。
創汰は、空の彼方、どこにあるかもわからないASXの四九八九番地星を思う。
ノルマはもう諦めた。
俺は悪に敗れたのだ。
目を閉じると、遠くで響くバイクの音が聞こえた。




