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2/2

結局やっぱりそうなった

 暮れなずみ始めた住宅街を一人の男に連れられて、とぼとぼと歩く。


 あの後は男達を解散させ、そのうちの一人に送ってもらうことになったのだが。


 男が「もしかして家を忘れたのは、アイツに殴られたからか」「あの野郎許さないコロス」としきりにそんなことを口走り始めたので、「いや、冗談に決まってるだろう」と適当にお茶を濁しておいた。


 男と中身のない会話を交えながら、頭の中でそっと今後の展開をなぞる。


 確か元のゲームの展開としては、このあと、りのるは双葉学園学園長実子、黒山千影という少年の手によって、りのるが人を殴った、という事実だけを学園長に報告されてしまう。


 あいつは人を殴った挙句に、このようなろくでもないことをしている奴だ、と。


 当然、これを聞いた学園長は激怒し、退学までには処さないものの、主人公に重い謹慎処分を下してしまう。


 もちろんこの処罰に驚いた主人公は、学園長に訴える。


 自分のしたことは正当防衛で、むしろ手を出してきたのは向こうだと。


 だが、千影を過剰なまでに溺愛する学園長は、聞く耳を持つどころか、一層主人公を責め立てるのだ。


 …あれは今思い出すだけでも、虫酸が走るような嫌なシーンだった。そして一ファンとして、そのような最悪の事態を免れられたことに安堵する。


 …だが、ここで重大なお知らせがある。


 先程、この男達は私のことをなんといったか。このお方?この人?彼らの発言は、まるで自分のことを崇めるような物言いで、なにより大人しく命令を聞き、付き従っていた。


 そして、ゲーム内でそんな露骨な扱いをされる人間を、私は一人しか知らない。


 なによりも、ゲーム中で主人公が拳で拳で殴るのは、また主人公によって殴られるキャラは、始めも終わりもたった一人、こんな事態を起こすことになるその張本人様だけ。


 序盤から薄々感じてはいたが、やがて目の前に現れた豪邸に、自分の予感と対応が間違っていなかったことを自覚する。


 案の定、その家の門の前で止まった男は私の方を笑顔で振り返った。


「家に着きましたよ、千影さん」




 そう、私が黒山千影なのです。

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