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親子の邂逅

 

 (はる)は訝しげに男達を見た。

 捕まえると言ったり、収穫と言ったり。

 女性は見た感じ、軟禁とか監視をされているような感じはなく、伸び伸びとしていて、野菜を採っている。

「治癒魔法は神の末裔と呼ばれるエリエンストラの王族だからと言って、誰しもが持てる物ではありません。大きな傷の完治は難しいようですが、少しの傷位なら、完全に治す。神の祝福のような魔法です。そもそも、魔力を使って治してるのとは違うようなので、魔法と言って良いものかもわかりません。だから、治癒能力と言ったりします。彼女は、完全には治せないようですが、傷を浅くさせて、表明を塞いでいるようですね」


 それより気になってきた事があった。

 夕べから、見張られている気がするのだ、だが、振り返った所で、鳥だったり、獣だったりと肩透かしを食らっていた。

 しかし、遭遇率がこれ程高くもなると、何か違和感を感じるのだ。

 自然が豊かなのは確かなのだが。

 

「それではジュリア様救出作戦を致しましょう。ジュリア様以外は皆殺しで構わないですね」

 男がそう言うと、皆がガチャガチャと得物を掲げて是とした。

「俺は反対だ。まずはそのジュリア様に話を聞きに行こう」

 納得が出来てなかったのは、(はる)だけだった。


 ーー流されるな。


 しかし春一人が反対した所でこの流れは止まりそうに見えなかった。

 勇者と言えども、人に刃など向けた事がなく、怪我をせず、怪我をさせず、多人数を相手取れる程の力量はない。魔法を使えるようになったとはいえ、魔法を使いこなしきれてはいない。ただ、魔力量が非常に多かったり、人よりも、超常的に能力が上がっただけで、勇者としての活躍も魔獣退治位で、功績と呼べるような物を持つわけでもない。

「オリオン様はまだ若いので、奴等がどんなものなのか、まだ理解出来ないのでしょう。我等が出て行きますので、どうか、大人しくなさっていて下さい」

「勇者様、必ずや、ジュリア様を救出してきますので、ご安心下さい」

 其々が防具を身に付けて、得物を持ち出て行く。

 これから起こるであろう虐殺を想像して勇気を振り絞って、春は、もう一度止めに入った。

「考え直せよ。あいつら、武器なんて持ってなかったんだ。これでは一方的過ぎるんじゃないか?」

「勇者様、考え直さねば行けないのは、貴方の方です。()らなければ、()られます。奴等には、強力な魔力があるのです」

「我々が手本を見せますので、どうか魔獣だけではなく、魔族を討ち取って下さいませ」

 言葉が全く通じなかった。

 悔しさで手の平を爪がくい込む程、握った。


 目が良いものが居たのか、ある程度近付いた時、魔族から叫び声がした。

「人族が武器を持って攻めに来たぞー!!」

「みんな散り散りに逃げろー!!」

 見るとジュリアは片手に鎌を持ち、片手に幼児を抱いて、逃げようとしていた。

 とても王族女性とは思えない、生きる為の力強さを感じた。

 そこに空からの救い手が現れる。

 黒髪に紅い目、黒い翼、前魔王と呼ばれた存在だった。

 睨み付けて威嚇する前魔王は、迫力のあるかなりの美形だった。

 前魔王の雰囲気はまさに、ボスクラスで、眼差し一つで辺りを凍らせてしまいそうだった。

「魔王様だ!!」

「前魔王様よ!」

「私達を助けに来てくれたんだ!」

「アベル様〜!」

 応えるように、前魔王の周りがキラキラと光り輝くと、尖った氷が出来ていく、男共の頭上には巨大な氷が出来てきている。

 魔族の歓声が上がる中、人の悲鳴の声が聞こえて来た。

「ひっ、ヒ〜、魔王?!無理だ!!我々だけで、前魔王と戦えるワケがない」

「ウワァァァァア。死にたくない!勇者様!!」

「て、撤収だ!対抗出来るのは勇者様だけだ」

 一目散に、勇者(はる)を目指して戻って来る。

 全員が、魔族の里へ向かわずに、途中で引き返して来たのだ。

 なんと言うか、男共の都合が良過ぎて、乾いた笑いが出そうだった。


(最初に来た目的は、一応、結界の強度の確認が可能ならば現魔王の寝首をかく事だったのに、()魔王が来ただけで怖がって引き返して来るんだ?)


 そんな中で一頭の鹿が春に寄ってくる。

 くりっとした大きな目が、物言いたげに春をじっと見つめていた。

 鹿には何かが括り付けてある。

 鹿を傷付けないようにそれを外した。


(何だろう、これは布?)


 広げて見ると魔法陣が描かれていた。

 男共が騒ぐ。

「これは渡りに舟かもしれない。我々はついている。何処に繋がる魔法陣なのか?双方向なのか、片道なのか」

 男の一人が地面に落いて、そう説明する。


(いやいや、見た事ない魔法陣をそう信用していい物なのか?あんたら、自分のいいように解釈し過ぎじゃないか?)


 春が警戒をしていると魔法陣が光りだす。

「誰か来る」

 来たのは見慣れた顔立ちの男と、夢に出て来た魔女と、見知らぬ女性だった。

「ゆ、勇者様…!!」

「聖剣の勇者様!!」

「た、助かった〜」

 散々自分達が、偽物と決め付けて吹聴し扱き下ろした、(偽)聖剣の勇者であった。

 魔女は夢で見たままの、美しい娘だった。

 思わず魔女を見て胸が高揚した。

 もう一人の女性も麗人と言って差し支えない。


 面白くない組み合わせだ。

「ふん、偽勇者様は、お約束のハーレムパーティーでも作る気か」

 男一人の美女二人、嫌味を言いたくもなる。

「お前は男だらけの水泳大会でも開くのか?」

 上から目線だ。


「オリオン様、ここは協力して、前魔王を倒しましょう!」

「そうです。性格はともあれ、聖剣の勇者は他者を圧倒して強いですから」

「現魔王も一度は聖剣の勇者の前に跪いたと聞きます」

 補助戦闘員が十数名もいて、偽勇者の戦力を思いっきり当てにしているのが、丸わかりだった。というか、性格はともあれって本人の目の前で言っていい事なのだろうか。

「「「さぁ、前魔王をお二人で!」」」

「「やだ」♡」

 二人の勇者がハモった。

 相手が油断している時なら何とかなるかもしれない。

 勇者補正で、勝てるかもしれないが、やたらと突っ込んで、やたらな怪我を負いたくはない。

 ましてや、襲撃に反対した俺に、自分達の尻拭いをさせようとしたのだ。それは心理的に反抗したくもなるのが人情というものだろう。ちなみに偽勇者のヤダには、語尾にハートマークでも付きそうな軽さであった。こいつのは単に、嫌がらせだろう。


 前魔王が翼を羽ばたかせ、追いつく。

「我を怒らせるな!怪我をしたくない者は、ここから立ち去れ!!」

 ダン、ドン、ダンと、氷が地響きを立てて地面にのめり込む様に刺さっていく。

 追いかけて来た前魔王がそう言うと、補佐役、補助戦闘員の男共は荷物をそのままに、みな散り散りに逃げ出していく。これはまだ脅しだと言うのに。


 そんな中、一人の魔女が前に進んでいく。

「お父様、お久し振りでございます」

 ルージュがそう言って礼をすると、前魔王のアベルの目尻が微妙に下がっているのが分かった。その場にいる者は直感した。


(((娘に甘いタイプだ!!)))


 周りの目があるため、厳しい顔つきのままではあるが、そうに違いないと思えた。


 そして何気にルージュは、爆弾を落とした。

「お母様を探せた?それと許して貰えたの?」

 前魔王(アベル)は一気に落ち込み、翼をたたむと共に、目があらぬ方向を見ていた。

「た、たぶん?」

 残念イケメンだった。


 春は苦悩した。

(語尾が疑問形で上がってますと、誰か突っ込んでー!)

 秋は目を逸らした。

(夫婦喧嘩か。義理の父になるかも知れん。迂闊な事は言えない)

 マリオンは理解した。

(男の下半身は別の生き物だからね〜)


 アベルは娘の前で、形無しとなった。

 そこに来たのは、ジュリアだった。

「あら、ルージュ。久しぶり」

 ジュリアは前魔王を居ない者のように、ルージュだけに声をかけた。

「ママ!心配したわ。臨月の体で出て行くんですもの。夢では、何度もお会い出来ても、実際の様子は、その通りだとはわからないんだし」

 まるで、ルージュは子供に戻ってたかのように母親に会えて上機嫌だった。

「ずっと探してたよ。人族の領土に帰ったのかと思ってた」

「心配をかけてごめんなさい」

「魔王を辞め、近衛も解散した。それでも我を許してくれない……」

「お父様が悪いんでしょ、別の魔女(ひと)とはいえ2度目なんだし」

「我は娘にも嫌われて、もはや何もないのだ!」

 切なげに訴える前魔王。そして同じ男なのだから、フォローを入れろとばかりにチラチラと、勇者達に目配せをしている。

 

((ルージュが父親を頼らなかったのは、父親の浮気のせいかー!!!???))

 

 一触即発の雰囲気はもはや何処にも無かった。

ー登場人物ー


前魔王 アベル


次回の更新は2017年10月6日16時予定です。が、番外編となっております。




ーーーーーーーーーーーーーー駄足

勇者1号「いいか、流されるな。流されるままにヤッちまうと、ああなるんだ!」


娘を前にションボリした前魔王を指差す。


勇者2号「……自業自得」





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