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プチ宴会

 

 二体の飛竜が夜空に飛ぶ。

 飛竜に乗って魔王リーヴァイは単独で、勇者の家を急襲した。

「ふむ、勇者の割には、意外とこぢんまりとした家だな」



「飛竜だー!!」

「飛竜が、来たぞ!!」

「魔族だー!逃げろー!」

 人族が騒ぎ、隠れ、右往左往する中、勇者の家に魔王が降り立つが、家には光が付いておらず、人がいる気配はない。

「おのれ、勇者め。私が来たと察知して逃げたか?」

「恐れながら、魔王様。やはり、行く途中に、魔族領に向かう、馬の一騎駆けが、勇者だったのでは?」

 ミザが冷静に言う。


(しかし、あれは一人だった。では、ルージュ様は何処に?)


 勇者の家のドアを破壊して、光を灯し家探しする。

 置かれてる服の配置や、寝室などが別にあったので、同棲とは違う事に安心をする。

 ルージュ様の部屋だけは、念入りにチェックしたのは秘密だ。健やかにお育ちされているようで、安心をした。


(何処に隠した?応接室と思しき部屋のゴミ箱にルージュ様の物らしき長い黒髪が捨てられていた、間違いなく此処で、ルージュ様の髪を切られたのだ)


 普通の人族が、まず、勇者に頼まれたからと言って、明らかに魔族と見られるルージュ様を預かるような事はない筈だ。

(ま、まさかとは思うが、変態勇者に牢屋であんな事や、こんな事をされてたりはしないだろうな…。)

 蒼褪めながらも、地下牢があるのかチェックする。

 地下室には、牢屋などなく、数十本の貰い物と思われる、だがしかし、貴族が好んで飲みそうな高級ワインや高級ウィスキーなどの酒類が置かれていた。

(よし、何もなかった。健全だ)

 酒類を持てるだけ持ち、またミザにも持てるだけ持たせる。


 飛竜と共に広場に行き一旦、酒を置かせると、隠れていた街の者を次々とミザに捕まえさせて広場に集めて聞く。

「貴様らに聞くが。ここ最近この街に住み着いた勇者と、勇者と共に暮らしてた、魔女を知らぬか。序でに言うが、逃げたら殺す」

「ヒィ!お助けを……!!」

「魔王様の質問にきちんと答えろ!」

 ミザが喝を入れる。

「…………」

 口が開けず震えて黙って首を振る。

「し、知りません」

「わ、私も知らないです」


「ゆ、夢見(・・)の魔女ですか」

 その内の一人が喋った。

 おそらくルージュ様の事だとリーヴァイは見当をつけた。

「……夢見の魔女?そうだ、()でも()てるかと疑うような美しい魔女だ」

 ここでは、終わりの魔女とは呼ばれてないようだ。

 予言での混沌やら破壊の魔女の印象と、勇者が連れ歩き保護している攻撃魔法が使えない魔女という印象が、かけ離れてた結果だろう。

「行方不明になったと聞きました」

「そういえば昨日、勇者様は不審人物を探してました」

「よし、二人に褒美をくれてやろう」

 勇者の家から持ち出したワインを一本づつ、其々に渡す。


 ワインを貰った者同士でお互いの顔を見合わせている。

 まさか、魔族から、それも魔王から、物を貰うとは思っても見なかったようだ。

「他に誰か知る者はいないか?」

「き、昨日と言えば、勇者様は王都から一人で帰ってきたばかりの筈ですが」

 ワインを渡す。

「よし、褒美だ。行きも一人だったか、誰か見た者はいるか?」

「一人だったと記憶してます」

 また別の者にワインを渡す。

 ワインを渡された者は、そのワインが本物かどうか、歯で開けたのか、どこからかオープナーを借りたのか、飲み始めた。

 殺される前に飲んでおこうと考えたのかもしれない。

 他の者も、ワインを開けた。

 一気にワインの香りが広がる。


(話を総合して考えると、勇者は王都へ、一人で行き、昨日帰宅をした。そして、不審人物を探す……つまりは不在中に、行方不明になったという事だ)


 ミザの表情には、変化が見られない。

「ミザ、勇者と争った末に、ルージュ様は殺されたと言う話だったな?勇者と争った者の名は誰だ?」

「たしか名前はマリ()ンだと思いましたわ。前王女様救出の際に、一人で行き、結果、前王女様死亡で助けられなかったのを苦にして、近衛を除隊。許可しましたわ」


(マリ()ンねぇ。知らないな)


「他に情報を持つ者は言え」

「夢見の魔女は、望めば、生者でも死者でも、夢の中で会わせる事が出来るっていう噂ですぜ」

「!?」

 初耳だった。

 それを知らない他の者達も騒めく。

 夢で、自分の思い通りの事が出来るとは、だいぶ昔に聞いた事があったが、それは単に明晰夢と言われる類のものかと思っていたのだ。

「よし、ウィスキーだ」

 ウィスキーを渡す。

 広場は一気に小さな宴会場と化してきた。

「なぁ、意外と魔王様っていうのは、太っ腹なんだな」

「こんなお貴族様が飲むような上等なもんをポンポンと渡すなんざ、気前がいいねぇ」

「水代わりに普段飲んでいたワインと全然違うぞ」

「魔族ってのは教会じゃあ、醜悪な外見とか聞いてたが、人とは髪や目の色こそ違うが、なかなかの美男美女じゃないか」

「やはり、女ってのは出るところ出て、括れてるところは括れてないとな」

「違いねぇ」

 気の所為か、ミザがより胸を自慢するかのように張った。

 そんな会話がひそひそと流れ出した頃、だいたいの情報を集め終わったと判断して、マリ()ンという魔女を探しに行く事にした。

「ミザ、ルージュに関しての詳細が聞きたい。マリ()ンとやらは、どこに住んでいる?」



次回の更新は2017年9月28日8時予定です。

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