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美女と少年(前編)

 

 男性の依頼人の時はいつも(あき)が側に張り付いていたのだが、依頼人から、お礼と共に、話づらいという封書がよく届くので、改善をしようとなった。


「ん〜。秋くん、悪いんだけど、部屋の中でも、依頼者から見えない位置で、待機して貰ってもいい? というか、わざわざ、勇者サマの家で無体な真似はしないと思うんだよね。護衛とか、要らないんじゃないかな?」


 なんというか、ルージュから見た秋は慎重に思えた。

 護衛して貰ってる立場なので心苦しいが、秋の時間も奪ってしまうし、なるべくなら、リラックスして聞いて貰った方がいいかなと提案したのだが。


「それはオススメ出来ないな。いいか、大概の男なんてもんは、あっ、俺は別にして、年中発情期みたいなもんなんだ。ヤレそうか、ヤレないか、常にチェックしてるもんなんだ。俺は違うけどな」

「巨乳か、貧乳か、みたいな?」

「イヤー!そこは弄っちゃ駄目じゃないかなー」

 頭を抱えて、口調は素っ頓狂だ。


 夢見の仕事は口コミで順調にお客様を増やした、というか、増え過ぎたので、現在、基本は予約制で、男性依頼者の日と女性依頼者の日で分けさせて貰った。


 公爵家から出た噂により、現在圧倒的に増えてるのが、死者に合わせろと、インチキを見破ってやる、っといった類の貴族達と、よくわからない勝負を挑んでくる自称霊能者や教会とは違った宗教家である。

 まぁ、そんな事を言うのはだいたい男性なので、男性にだけ、ちょっと気をつければいいかな程度に思っていた。

 女性もいなくはないが、そんな事ばかり気にもしていられない。


 しかし相手が女性でも、秋は気にしてくれているようで、何らかの手を打ちたいと、零していた。


 その日は女性相談日で、女性の依頼者の話を聞く事になっていた。

 秋には、自由に自分のやりたい事を優先してと、ルージュは言ったのだが、ルージュと共に話を聞く事にしたようだ。

 依頼者の女性を一階の応接室に通す。

「初めまして、ラケルと申しまぁ〜す」

 ルージュより、少し見た目年上な女性で、軽い印象だ。

 豪奢や金色の髪に、グレーの眼が印象的で、豊かな胸の美女だった。

 胸や背中が大幅に開いていて、足のスリットが深く、とても挑発的だ。


「初めまして、私はルージュよ。依頼したい事は何でしょう?、夢に関する事なら、大抵は何とか出来るかと思います」


 ラケルはチラリと流し目で勇者を見る。

 その仕草が色っぽく、つられてルージュも勇者を見た。

 秋は貧乳派だか、ちっぱい派だとかと言ってたが、こんな魅惑的な美女を目にして、何か思うところはないのだろうかと疑問に思う。

「ねぇ、勇者サマぁん、勇者さまは、わたくしの依頼、お聞きになりたいのですか〜?」

 胸を二の腕で軽く寄せ、谷間をより強調させて、勇者の目前に胸が来るように、身を乗り出すと、顔を近づけていく。

 秋は冷めた表情だ。

 何故か、ルージュも対抗心が湧き出て同じように、秋の側へ行くと、秋の目を見つめる。

「秋くん、何か気になるの?」

 可愛い女の子を気取ったルージュに見つめられて、秋の眼が泳ぐ。


(勝った!!……って、何の勝負しようとしてるんだ。私は)


 そして近づけ過ぎたと、ルージュの頰が赤くなる。

 こほんとルージュがわざとらしく離れながら咳をすると、元の位置に戻る。

「ごめんなさい、勇者様(・・・)。イタズラが過ぎました」

 ルージュは素直に謝った。

「いや、貴重なものが見られたよ」

 秋が笑った。

 それを見てラケルは納得したかのように両手を軽く挙げ首を振る。

「……なるほど、勇者様は、セクシー系で攻めるより、可愛い系の女の子が好きなのねぇ〜」


 秋が頬杖をつく。

「それで?ラケルさんは俺を退出させたかったの? 俺を誘惑して何かさせたかったの?」

「ぃや〜ん、ステキぃ〜。話しが早〜い。でも、残念でした。ただ単に揶揄っただけよ。勇者に憧れてる子が近所にいてね〜、つい」

 がくんと秋の頬杖が滑る。

「アホか」


「……会いたい人がいるのよ」

 一瞬、ラケルの顔が切ない表情を見せた。

 逢いたくても、逢えない人。

 これは相手が死者の可能性が高いとルージュは予想した。


 そこへ、微かに庭をゆっくりと音を忍ばせて歩くような草の音が聞こえた。

 秋が咄嗟に何かの魔法を放ち、窓を開けると、窓のすぐ下にしゃがんでいる男の子の姿があった。

 見つかってしまった事で、諦めたのか、すくっと少年は立ち上がる。

 窓から首から上だけが、見える。

 ラケルが目を見開く。

「セルジュ!」

 バツが悪そうに男の子が笑う。

「やぁ、ラケル。偶然だね」

 赤茶色の髪に、青い目をした13才くらいの少年だった。

 どうやら、ラケルと知り合いのようだ。


「あなた、いつか捕まるわよ? ここ、勇者様の家よ?」

「エッ!?本当?凄いや!」

 ラケルは金色の前髪を後ろに流すと、不機嫌そうな顔を作った。

 それを見て、セルジュは些か萎れた。

「立ち話もなんですので、こちらへどうぞ」

 ルージュが部屋へと上がるように、案内をする。


 

ー登場人物ー


依頼人 ラケル

近所の子 セルジュ


次回の更新は2017年9月18日22時を予定です。

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