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夜会にて


 勇者(あき)の仕事で、夜会に行かねばならない。


(留守番の方が、気が楽なんですけどね)


 (あき)自身は、面倒で出たくはないようだ。

 ルージュの監視や保護をしなくてはいけないという名目で欠席をするのが多いが、相手もいつまでも騙されてはくれていない。ルージュは半魔で攻撃魔法を使えないと、知られている所には、知られているのだ。


 それでも、勇者が保証人となっているし、いない時に何らかの罪を犯したり、罪が被せられたりでもしたら、目も当てられない。そして見張りを他人にさせられない、させるつもりがない勇者。


 それならば、パートナーや、従者として、夜会に出せばいいという事になった。

 ルージュが立ち入りを赦されなかったら、勇者も参加はしないという事だ。

 出来るだけ秋に迷惑を掛けないように、出来るだけ魔族のイメージを悪くさせないように振舞わなければならない。


 秋が選んだ朱色のローブ ドュ ソワールを着たら、髪を纏めペリュックを付ける。

 地毛で盛るのもいいが、地毛は黒なので、魔法が現実世界で使えもしないのに魔力が高いと思われるのも、嫌だし、変に注目を浴びないためにも、ペリュックをするのだ。

 流行りは金のペリュックだそうだが、衣装と一緒に悪目立ちをするような気がして、顔を際立たせて見せないためにも、白銀を選んだ。

 目元に少しラメを散らして、リップを塗ると完成だ。

 全体的に可愛い感じに、なったであろうか。


 秋はというと、紺色のアビ ド ソワレである。


 夜会の主催によって、服装は、自由な時もあれば、今回のような、古典風などといった、今から見たら仮装にしか見えない規則を設ける事もある。


 着替え終わると、秋と合流する。

「ルージュ、その頭凄いね。どうなってるの?」

「…こういう時は、似合ってるよとか、言うものではなくて?」……こう

 思わずそんなに、不出来だったのかとチェックしてしまう。

「元がいいから、大概の物は、似合うだろうけど。髪が白銀だし、複雑に纏め上げられてる」

「ふふふふ。黒髪は珍しいからね。人とは、多く接してきたつもりだけど、黒髪は秋くらいなもんでしょ。これで、私も普通な感じで、目立たなくなった?」


 ルージュの瞳が美しく紅く輝く。

 その瞳は、未だ汚れを知らぬかのようで、秋は目を背けた。

 髪が白銀であろうと、黒髪であろうと関係なく惹きつけられる。

「似合ってるのはいいが、変な男が寄ってこないか、心配だ」

 それを聞いてルージュは笑った。

「貧乳派は、少しなんでしょ? なら大丈夫じゃない?」

 ルージュは体型を気にしていたようだ。

 全身像を鏡に写す。

「男が最初に注目する場所が顔、次いで体だから」

 あんまり気にするなというつもりで、秋が口に出すがフォローになってない。

「へぇ……そうなんだ」

 ルージュの若干白けた目が、秋に突き刺さる。

「て、定刻になったようだ。迎えが来ている」

 門扉に主催者が出した送迎馬車が到着していた。

「行きましょうか、お姫様」

 そう言って跪き、手袋をはめたルージュの手の甲に口付けると、みるみるとルージュの頰が赤くなるのを見て、秋は楽しんだ。




 ガヤガヤと賑わう会場、主催者の公爵夫人に挨拶した後は、自由な時間となる。夫人の側には二人の男性がいて、どちらも夫人に熱い眼差しを向けていた。

 ルージュには歓迎ない事なので、気にしないようにした。

 地味に溶け込むように静かに壁の花をする予定だったのだが、いつの間にか、秋と引き離され、質問責めを受けていた。

 秋には未婚、既婚を問わず、老若男女が挨拶の為、顔見知りになりたいのか、詰め寄っている。

 今、勇者と会話しているのは、焦茶色の髪の青年だ。

 一方、ルージュの方はと言うと、どちらかと言うまでもなく、男性数人に追い詰められるかのようだった。


「ねぇ、君が魔族だって聞いたけど、魔族って、みんな君みたいに可憐な子が多いの?」

「えぇ?私くらいの女性は普通にいますよ?」

「夢見の仕事を依頼するときは、夜、君にも会えるのかな?」

「場合によります」

 苦笑いをしながら、質問に答えていく。


「細い腰だね。毎夜、勇者様は優しくしてくれるのかい?」

 何だか変な眼差しでルージュを見てくる。

「どういう事でしょう? 勇者さまは私だけでなく皆さんにも優しいかと思いますよ」

「貴女は勇者様のお気に入りと聞いてたんだけど。夜会に出ないのも、貴女を夜、一人にするのが嫌で、断られるとか?」

「勇者さまは責任感が強いので、見てない所で事件に巻き込まれたりしないようにとの配慮です」

 ねっとりと絡みつくような視線に、鳥肌が立つ。


「まぁ、これ程可愛いんだ。勇者様とて、男だ」

 男は、一方的に勇者との関係を決めつけ掛かっている。

 ルージュは恐ろしく感じて、後退る。


 秋をチラリと見るが、未だ焦茶色の髪をした青年と談笑していて、波が引けてないようだ。

 近くに行き、話の最中に秋と合流して対処してもらうか、自分自身で対処するか。


 ただでさえ、人の街において保証人になってもらい、同居して、護衛の真似をさせているのだ、また迷惑をかけるのは、とルージュは考えて行動した。


「あ、あの、気分が良く無いので、ちょっと失礼します」

 そう言って抜け出そうとすると

「そうか、それは良くないね。控えの部屋まで、ご一緒しよう」

「いえ、良いのです。本当に」

 そう言って足早に去るつもりが、後ろから男の一人が付いて来ている。

「気分が悪いのであろう?途中で倒れでもしたら、大変だ」

「お構いなく」

 腕でも掴まれたら終わりなような気がして、すぐに廊下へと出た。

 

次回の更新は2017年9月15日19時を予定です。

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