夢見る終わりの魔女
初投稿です。完結致しました。ありがとうございます。
世の中、ままならない事ばかりである。
ルージュは予言された子供だった。
魔王と人間が交わった結果が、彼女だった。
そんな彼女は魔も人も関係なく、平穏に暮らせたら それでいい と願っている。
偉大な預言者は、"混沌の世界を生み出す者"として、"秩序を破壊する者"として、彼女を謳う。
彼女の願いとは、真逆な方向の予言だった。
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煌めく夜を切り取っとかのような ぬばたまの髪に、紅玉のような輝く瞳。
透き通った肌は、思わず触りたくなる衝動を生む。
扱うのは、夢の世界。
彼女は人の夢に入る事が出来た。
預言されし彼女を、人々は悪し様に罵った。
人々は彼女を"終わりの魔女"と呼んだ。
そして、魔王を倒しただけでは、悪夢は終わらないのだと、糾弾した。
『愛しき終わりの魔女』から抜粋
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「魔族の王で魔王なのよ。魔王は、わかりやすく純粋に力のある魔族がなるの。だから、血統ではないの」
ルージュは木漏れ日の中、冷たそうな澄んだ泉に足を遊ばせ、そう説明した。そこはまるで天国かと思える程美しい。
「あぁ、…本当に夢みたいだ」
青年がうっとりと微笑む。
ルージュは笑った。
「夢だからねぇ。他に何か聞きたい事ある?」
「そうだなぁ。他に、魔族の特徴ってある?」
「そうねぇ、例えば、魔力を使う時に私の父は黒い翼が生えたりするわ。人によっては、青い羽とか、尾骶骨の辺りに尾とかあったりね。特徴が人より沢山ある気がするわね。見た目は人族と全く一緒の人もいて、でも、そういう魔族は、姿を変えて見せているのかもね」
いつの間にか、青年は花冠を創り出して、そっとルージュの頭にのせて飾ってくれた。
ありがとうと、礼を伝えた所で、何故か、抱っこされた後に青年の膝の上に、小さな子供のように座らせられた。
ルージュは魔族の、元が付くけれど、王女なので、本来なら、当然許される筈はないのだが、その辺、皆がしない事だったので、マナー違反や、禁止事項に当たるのか、知らなかった。
「よくわからないんだけど、これって普通?」
「普通、普通。というか、これは夢だし」
夢の中でよく会うようになった青年は、この世界の事を殆ど知らなかった。
魔族の世界を教える代わりに、青年の世界の話を聞くのが、最近のルージュの楽しみとなっていた。
青年の世界では、普通の人族と違っていたらしく、創作活動が活発で、ロボットに乗って戦う話や、色々な道具を取り出して使う青い猫の話、などを素早く沢山の絵を使って動きが出るように観たり、恐怖を体験する為にお金を払ったりするらしく、色々と謎めいていて、聞いててとても興味深い。
夢の世界って事で時折それらを作ってもらい、見せて貰っているが、魔力で動かす物ではないらしく、想像を超えた世界だ。いつかは、行ってみたいと思う。
「で?話を戻すけど…、魔王が世代交代した所で、キミは、花嫁に指名されたんだ?」
「えぇ、現魔王のレヴィ……リーヴァイは、グラマラスな女性が好きみたいで、秘密の恋人もいるのよ。だから、多分何かの間違いか、私の居場所を作る為にそういう事にしたのかも」
ルージュの容姿は黒髪、紅瞳で、整った顔をしているが、欠点と言うべきか、男好きのする体型ではなかった。
いささか、胸に肉が足りていないと思われる。
「……居場所ねぇ」
そういうと青年は考え込む。
「私は……純粋な魔族でも、人族でもないから」
そこに感情を表す事はしない。
混沌の世界を生み出す者
秩序を破壊する者
黒髪に紅い目の半魔
終わりの魔女
一般には、黒が多い程、魔力が高いと言われている。
そして紅は人族が、持たない色の一つだ。
夢で会う青年は黒髪黒目、目に関しては黒には見えるが正確には、濃褐色といったところだろう。とても魔力が高いという事を示している。黒髪は稀に人族でも、いるが、ここまで黒に近い眼は、おそらくいない。青だったり、緑だったり、黒髪で無ければ、いるかもしれないが、青年のような強い魔力を有してる者は、人族では、他に見た事がなかった。
ルージュもその理論で行けば、その黒髪から、高い魔力を有してる筈なのだが、夢でしか使えず、攻撃が普通の人族の女性並みでしか無い。それでも、先代魔王の娘だからか、遠巻きながらも、魔族では、少しは受け入れて貰えている雰囲気がある。
「私は、"人"をもっと理解しないといけないと思うの。私のもう一つの血だもの。そこに私の居場所が出来る可能性だってあるでしょ? だから、まず母様の住んでいた西の森に住む事にしたわ。私でも、きっと人の役に立てる事がある筈」
青年が穏やかに笑う。
「ねぇ、その内、本当のキミに会いに行っていい?」
ルージュは特に意識せずに答える。
「そうね。秋くん、いつかは会えたらいいわね」
ーこの話での主な登場人物ー
終わりの魔女 ルージュ
魔王 リーヴァイ(レヴィ)
夢の青年 秋
作品タイトル変更しました。
『終わりの魔女』から『魔力を持たない魔女に変態勇者と過保護な魔王』です。