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第三話・卑しき僕達2

初っ端かなこの立ち絵ですか・・・。

シリアスかと思ったら、ちょっとネタをぶっこみすぎました。

後悔はしている。

だが反省はしていない。

挿絵(By みてみん)

 崩れ去る希望に、渚は言葉を詰まらせていた。

 ヒースとのやりとりはルーデも肩越しに見ていたため、彼女も居心地が悪そうにしている。


『渚が稀代の天才だとか、余程のマナ容量があるというなら話は別だけどね』

『あぁ、マナというのは魔法を使う上でのエネルギー……ゲームにはそこそこ詳しいみたいだから、魔力だとかマジック・ポイントみたいなものだと思ってくれれば良いよ』

 後者については、渚も理解の及ぶ点である。

 ゲームや作品等によって呼び名が違ってくるが、この世ならざる法則であってもそれを用いるのには燃料が必要になる。

 それが、『マナ』だとか『オド』、『マジック・ポイント』と呼ばれているのだろう。


『確かめてはいないけど、渚が非凡なマナを持ち合わせてるようには見えないね』

『マダリンねーさんと会ったのならわかるんじゃないかな?』

『特別に魔法を展開せずとも、相手を魅了したり、闇に意思を与えるほどなら話は違ってくる』

 要するに、渚はその点においても平凡な人間である、ということだ。

 では、前者についてはどういうことか。ヒースが説明を始める。


『魔法の使い方や、応用の仕方を教えることは不可能じゃないし、マナが平凡だからって絶対に魔法を覚えられないわけじゃない』

『けど、渚はもう10歳を超えているぐらいのはずだから、酷く見込みがないんだよ』

 ヒースの言い様では、今から魔法を覚えるのには時間が足りな過ぎるということのようだ。


「『今から、猛勉強しても覚えられないのかな……? 教えられるのに、使えないって意味がわからない……』」

 震える手に必死で力を込め、問いかける。


『勉強では越えられない慣れ、かな』

『渚は、パソコンを一から組み立てたことがある?』

「『ない。パソコンの構造や、組み立て方は学校で習ったけど……』」

『じゃあ、渚は、五十音を覚え始めたかどうかというぐらいの子供に、パソコンを組み立てて通常通りに使えるまでの方法を身につけさせられる?』

『もちろん、OSを変更したり、メモリの増築やCPUの増強といった応用まで、見よう見真似ではなくてね』

 そう聞かれて、「不可能ではないけど無理がある」という答えが正しいことを理解する。


『今から、如何に勉強したところで渚は魔法を使わない生活に慣れてしまっているんだ』

『魔法を使うには人間の言語じゃ無理だから、そこから覚えなくちゃいけない』

『そこからさらに、専門用語を理解して使い方を完璧に理解して、実践に移るまでには渚もヨボヨボのお婆さんだね』

『もはや、覚える意味をなさないのに教えるなんて労力、とてもじゃないけど僕は遠慮したいよ』

『魔物相手なら、人間を超える長大な寿命があるから報酬次第だけどね』


 投資するメリットがなければ、誰も投資したくはない。そんな理屈は、渚にだって理解できる。しかし、理解できることと、納得できることは違う。

 可能性が0パーセントでないのなら、今からでも挑んでみたい。他にも、裏ワザや例外があるかもしれないなら、それを模索する覚悟だってあった。


「ッ……!?」

 食い下がろうとしたところで、渚の両肩に置かれる手があった。

「ナギサ、無茶はしなくて良いんだ……。私は、ナギサに無茶をして欲しくて引き入れようと思ったわけじゃない」

「阿呆。お前のやろうとしていることは、手段と目的を履き違える邪法だ」

 渚を見下ろす、ルーデの優しい眼差し。

 軽く置かれた程度でありながら、絶対に手放さないという強い意志を感じるエリックの手。

 自分が如何に馬鹿なことをしようとしていたのかを知り、渚は恥ずかしくなる。


「……ごめんなさい。私、少し、焦っていたみたいです……」

 エリックのセリフの言外には、確かに渚でも魔法を使える裏ワザがあることを示していた。それが、ほぼ確定的に渚の身を滅ぼすであろうことも。

 ルーデに言われた通り、渚にできることをやれば良い、というのはわかっていた。しかし、それを探すために自分から未来を閉ざせば本末転倒だ。


「すぐに何かを見つけなくても良いじゃん。私たちからアドバイスできることなんて少ないけど、ここで皆のことを見ていれば自ずと出てくると思う」

「ほれ、さっさと次の奴を紹介してやれ。残りは二人……いや、一体と一匹か」

 ルーデに慰められ、少し落ち着きを取り戻す。すかさず、話題を変えようとエリックが自己紹介の続きを促した。

 しかし、室内を見渡しても、残る一体と一匹は見つからない。

 ヒース同様、何かの中に入り込んでいるのだろうか。と、そこまで考えたところで、ここへ来た時にはあった用具箱がないことを思い出す。


「えっと、残りの方って、この辺にあった用具箱の中なんですか……?」

「うーん、どちらかというと……そのもの?」

「? どういうことです?」


 ルーデの言っていることの意味を咀嚼し、解釈してみる。

 箱の中に潜んでいるのではなく、箱そのものに擬態している、ということだろうか。確かに、宝箱などに擬態して獲物を襲撃するファンタジーの魔物というのは珍しくない。用具箱が消えた理由も、それで納得が行った。

 では、果たして用具箱の魔物はどこへ消えたのか。


「えーと、一体の方はまだ戻ってきてないから、先に一匹の方を紹介するよ。恥ずかしがり屋で、本来の姿を隠しちゃってるけど、気の良い奴だからよろしくしてやってくれ」

 そう言いながら、疑問顔の渚の視線を指で頭上へと誘導していく。

 そして、頭上に、強いては天井に張り付いている用具箱に目を見張る。


「……」

 それが、さらに色や形を変えながら、(うごめ)きのたうつ。垂れてくる。

 そんな不定形生物を見れば、言葉を失っても責められはしないはずだ。

 粗方の予想はできた。


「こちらがスライム君だ。ほら、スライム君、ナギサに挨拶、挨拶」

 スライム。

 いつの時代からか、某国民的RPGでほぼ雑魚として扱われるようになってからだろうか、それが定着してしまった悲しき魔物。

 それに伴い、不定形の生物全般は雑魚かかませ犬程度であると長年、扱われ続けてきた。

 そのスライムが、渚の頭上から垂れ落ちつつその無色半透明の身をくねらせる光景というのは、実際に見てみると存外恐ろしい。加えて、嫌悪感を煽るものがある。

 そもそも、こうした不定形生物の発祥はコズミックホラーの殿堂クトゥルフ神話などに行きつく。

 例え害意がなかろうと、その動作がスライム君の挨拶なのであっても、正気度が削れることに違いはない。


「は、初めまして……。漣 渚、です……。よ、よろしくッ!」

 叫び声を上げずに自己紹介できたただけ、渚が如何に努力したか褒め称えるべきであろう。

 しかし、スライム君の猛攻は止まらなかった。

 自己紹介に対し逆に気をよくしたのか、スライム君がその体を細め、渚の衣服の隙間から滑り込んでいく。上着とシャツの間ならばまだしも、肌着よりも内側へと。


「……ッ!? ヒウッ……!」

 肌を撫でる温かいのか冷たいのかよくわからない感触。全身を包みこむ、滑らかでありながら粘り気を持った形容し難い存在。それが全身を隈なく流れ、張り付いて、最後には皮下へと吸収されていくようにさえ感じた。当然、デリケートな部分にまで撫でまわしていくものだから、周囲を憚らず背筋に走る快感に嬌声を上げることとなる。


「だ、ダメ……ッ! そんなとこに、震えないで……! は、はぁ、はぁ、ゥクッ!」

 無理やり取り出そうとスライム君の粘つく体を引っ張れば、さらに無理やり入り込もうとして振動する。すると、脳髄へと走る刺激が強くなり、手足から力が抜けて身悶えせざるを得ない。

 (ひざまず)き、桃色の声を上げながら、肩で息をする。その頃になると既に、スライム君は渚の全身へと纏わり付いていた。

 何もないかのようにその色素を肌色に変色させる。伸縮、軟化、硬化、変色、がスライムの特性であるようだ。


「フゥ……フゥ……。酷いよ……。彼氏もいないのに、先に大事なところまで……」

 受けた屈辱と羞恥に如何なる抗議の声を上げようとも、もはやスライム君を体から引きはがすことはできなくなっていた。

 時折、衣服を持ちあげて蠢く以外にその存在を確認する術がないほど、渚の全身にフィットして吸着してしまった。


「ひゃぁ……スライム君がこんなに直ぐ懐くなんて、実は渚って魔物使い? それに、何々? 『誰よりも体の凹凸がなくて馴染む、馴染むぞ!』だってさ」

『……』

 ルーデのアテレコなのかはわからないが、それが渚へ最後の留めへとなった。

 エリックにさえそれらの光景を同情の眼差しで見詰められては、自身がどれだけの恥辱を受けたのかを認識せざるを得ない。


「シクシク……。もう、お嫁にいけない……」

「大丈夫だ。スライムでの一人遊びは魔界だと割とメジャーだと聞くしな……」

 嘆く渚の肩に、二度目のエリックの手が置かれる。

 慰めようとしているのだろうが、人間の渚にはあまりフォローになってない上、要らない情報である。

 立ち直るのに時間がかかりそうだ。


「えーとぉ、残念なことに最後の一人はまだ帰ってきてないから、紹介は後になるな。特に今からやってもらいたい仕事もないし、使い物にならなくしちまったコートと携帯電話を買いに行くか?」

「ちょ、ちょっと待ってください……。今、足に力が……」

 ルーデに呼びかけられるものの、スライム君の絶技に骨抜きにされてしまった渚は生まれたての小鹿のように足を震えさせる。

 ヒースの机を掴んで漸く立ち上がれる程度だ。

 その様子をルーデが愉快そうに眺めていると、どこからか軽快な音楽が流れてくる。ついつい心がピョンピョンと跳ねそうになるリズミカルで長閑なBGMである。


「うん? この音楽は……? キャッ!?」

 するとルーデが、ピョンでは済まない初速で机を飛び越し、自分の縄張りであるソファーへとダイブする。ゴミと衣類の海でダイビングを楽しんだ後、携帯電話を探し当てて電話口に出た。



どうやら作者は、シリアスブレイクしないと死んじゃう病みたいです。

美少女でもないのに○ヘ顔とか誰得なんでしょうか?

ご意見、ご感想、アドバイス等、お待ちしております(無茶振り)。

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