第十八話・それぞれの事情
渚は部屋を出て、薫の待つ小部屋へと向かう。
階段を下りて角を曲がり、少し奥まった場所にある宴会場の斜向かいがそれだった。
「竜さん、渚です」
フスマの向こうに声をかけると、直ぐに薫からの返事がくる。
「あぁ、入ってくれ」
入室の前に軽く、失礼します、と断りを入れてから足を踏み入れる。
「そっちも来たばかりで疲れてるのに、呼び立てて悪いな。後、別に竜等で構わんよ」
「いえ、大丈夫です。じゃあ、竜等さん、差し障りがなければお話を伺わせてください」
四畳間の小部屋で、ちゃぶ台とでも言うような卓を向かい合うように座って、二人は話を突きつめ始める。
確認事項は二つだ。
第一に、薫がどこまで知っているのか。この旅館『氷境荘』が魔物の経営する店だということ、ここまでの来方など、大まかな部分から子細な部分までだ。
第二に、薫の思惑について。ここで顔を合わせた様子から、薫が『氷境荘』に来たのは偶然の産物だろう。しかし、その偶然はいささか出来過ぎている。
「まず、互いにどうしてここへ来ているのか教え合うとしよう」
薫も考えることは同じのようだ。
「えぇ、私達の理由は主に三つです。一つは単なる慰安旅行として、でしょう。これは建前のようなものなので気にしないでください。二つ目は、この旅館に住んでいる雪男さんに交渉を持ちかけにきました。以前にお話したと思いますけど、魔物にとって有力な情報を売るのが目的です。こっちはエリックさんと私で片づけられると思います。
そして三つ目ですが、これはまだエリックさんから話を聞くまではわかりませんが、荒事になるでしょう。けれど、私が出る幕はないと思うので大丈夫かと」
まず渚から話せる部分を喋っていく。
壁に耳あり障子に目あり、などと言うので閉じたフスマに視線を向けて気配を探る。とは言っても、渚にそんな鋭い感覚があるわけがないので、薫の反応を伺う。
「誰かが聞き耳を立ててる様子はないから安心しろ。次は俺の方だな」
どうやら、薫の言う通り盗み聞きなどはされていないようだ。
「俺達は慰安旅行がメインの目的だ。ただし、俺に関してはちょっと探りを入れたくて動いてる。こっちも話したことだが、下請けの奴らが妙な動きをしているもんで接待に紛れてるところだ」
なるほど、と納得する。
ひと月くらい前にケイと追いかけっこしていた際、話は聞いていたためことの繋がりは理解できた。互いに、慰安旅行が慰安にならなくなっているわけだ。
「それなら、後は突き詰めるところを突き詰めるだけですね。竜等さんは、この旅館の従業員が雪男や雪女だと知っているんですか?」
流石に単刀直入過ぎたか、薫が小さく表情を入れ替えて行く。困ったり、思案したり、一人で納得して笑顔になる。そして膝を打ち、渚に答えを返してくる。
「結論から言うと、俺達は宿の魔物達については全く知らなかった。それだけ魔物達は巧みに正体を隠していたわけだが、この宿は普通に人間も魔物も宿泊できるのは確かだ。渚は、何かその辺りのことで思い当たることがあるんじゃねぇか?」
渚もそれで全てが腑に落ちた。
「えぇ、魔物と人間と、どう客を振り分けているのかは把握しました。そして、私は例外中の例外だってことも分かりましたよ……」
薫の問いに答え、登山の先にあったものを渚は説明する。
山頂の手前にあったキャンバスのこと、それが魔物と人間の客を区別するための結界――関所のようなものだという事実。渚は例外的にエリックと結界の場所を見つけ、そこを通りぬけたために魔物側と断定されたことも。
「本来ならもっと大人しい進入になるんでしょうけど、私の場合は何らかの異常が発生して一気に宿の裏庭に飛ばされたみたいです。たぶん、珍しいのでしょうけどこんなことも時として起こり得るんだと思います」
思い当たる原因は一つ。
渚が所持している『破魔の札』だ。
魔に属するモノであれば、ある程度ならば身を守れるという便利なアイテムである。実態を持つ魔物や魔法、物体に取り憑いたヒースのような相手には効果を現さないが、それ以外の力に対してはかなりの抑止力になり得る。
これを渡してきた神社の管理人が何者なのか、その意図を確かめねばならないと考える。
「なるほどな。天狗というだけあって、そういう仕組みになっていたわけだ」
「天狗が関係するんですか?」
「あぁ、いや、俗に言う神隠しって奴の正体なんじゃねぇか? 普通なら見つからないモノ、本来であれば通り抜けられないモノ、それが世界各地に隠されてるんだ。
けど、往々にして何か偶然が重なってそこを見つけて通り抜けちまう奴がいる。山頂に近いところから山の麓にある雪原まで飛ばされたんじゃ、そりゃヒト一人が神隠しに遭ったと騒がれてもおかしくないだろ」
「ここって山の麓だったんですか……。そっちから入ったらよかったのに、なんでわざわざ山登りさせられたんでしょ? そういう決まりがあるのかもしれませんけど……。
お陰さまで神隠しにあってしまったわけですね、私は」
なぜ天狗の名を冠した地名があったのかなど、渚のおかげで判明して万々歳である。渚にとっては迷惑な話だが。
それはさておき、人間の客が珍しくないことがわかり、魔物ではないことを隠しながら過ごさずに済むと安堵の息も漏れた。
「気苦労が絶えんな。どうだ、一杯?」
薫が苦笑を浮かべながら労ってくれ、お猪口と一合徳利を掲げてみせる。
「まだ十九ですよ、私。それに、チューハイ一本で酔いつぶれるぐらい弱いので、丁重にお断りさせていただきます」
「そうか。良い大人が法律違反はいかんな」
武器商人が法律を語るとは笑止千万である。
分かっていてやっているような薫の態度に、少し肩が軽くなったような気がした。
こうして会談は終わり、薫も宴会へと戻って、渚もエリックを待つために部屋へと返った。
ロッキングチェアーに体を沈め、前後の揺れに遊ばれるように暇を弄ぶ。夜の雪景色は白黒の世界に映り、僅かに針葉樹林のシルエットが遠くに見えるだけで何も変わることがなく、刺激も無く心穏やかな時間が過ぎて行く。
薫と話をして、抱えていた問題が解決したこともあるのだろう。
「森の向こうに、お屋敷みたいなのがあったっけ……?」
虚脱感に身を委ねている間に、無意味なことを考えながら眠りへと落ちて行く。
どれぐらいそうしていただろうか。意識の外で、慌ただしく人の動く音が聞こえてくる。夢か覚醒か、微睡みにたゆたう脳味噌がかき混ぜられる。
座卓を動かす音に、布団を敷く音もして、何人かが話している声も聞こえてくるし、渚に話しかけてくる人もいる。
「おい、せめて布団で寝ろ」
「……起こさないでやってくれ。死ぬほど疲れてるんだ」
寝ぼけた頭でボケてみる。
「起きてんだろ……。たくっ、仕方ねぇな」
呆れながらも、その誰かは渚を布団へと運ぼうとしただろう。
(運ぶ? どうやって?)
背中と背もたれの間に手が差し挟まれた瞬間、寝ていた頭が一気に目を覚ますのがわかった。そして、その状態からどうやって自分が運搬されるのかも理解した。
「起きてます! 大丈夫ですから!」
危うく恥ずかしい格好で抱え上げられる、要するところのお姫様抱っこをされる直前に、渚は目を開けて叫んだ。
薫に続いて、またしてもエリックに手間をかけさせるところだった。普段ならそこまで戸惑わないのかもしれないが、一度でも意識すると人の大脳辺縁系にある大脳新皮質はそうそう簡単に切り替わらないものである。
「そんなに驚かなくても良いだろうが。別に俺は幽霊でもねぇし、怒ってもないぞ」
目の前にエリックの呆れ顔があり、渚を見つめている。渚はと言うと、ゆっくり体重を後ろに傾けて距離を取ろうとする。
「え、えぇ……。私も全然無事ですよ? エリックさんもご無事で何よりです。は、ハハハッ、ハハハハ……」
作り笑いで色々な感情を誤魔化そうとする。
こういうことは、もしかしたら恐怖や驚きといったものとは別物なのではないだろうか。否、感情にカテゴライズされるものではないと推察できる。
「頭でも打ったんじゃねぇか? まぁ、疲れてるなら寝ちまっても大丈夫だぞ。交渉は俺一人でもできるからな」
そう言うエリックも小さく息を漏らし、まだ温もりの残る座卓へと歩み寄って足を放りこむ。
僅かに寒さで震える体も、さっきまでの冷たい言い様も、渚を心配して駆けずり回り安否を確認できて安堵したからだ。
「どうした、疲れてるんじゃなかったのか?」
「お客様、お布団が敷けましたよ。騒がせてしまい申し訳ありませんでした」
エリックがなんだかんだ気遣いを込めて布団を差すと、視線が自然に移動していく。そしてカガミが朗らかな笑みを浮かべて一礼する。さらにその後ろ、入口に近いところに二人の大柄な影がある。
一方はカガミと同様に仲居をしているであろう女性だ。長伸痩躯の青白い肌に、黒い髪のロングヘアーが異様に映える。微笑みながらも、マダリンやルーデのように丸みのある美人ではない。深雪の如き白い双眸が渚を射抜くように見つめているからだろうか。
もう一方の男性は2メートルを超えるであろうかという巨躯を誇っており、紺色をした袴の上からでもその筋肉質が伺える。カガミの髪の元となったプラチナブロンドの髪を束ね、髭もまた一本に結わえて邪魔にならないようにしている。体毛も短く刈って目立たないようにしているが、本来は全身を覆うほど長かったのだろう。顔立ちは辛うじて人に見えるものの、やはり猿顔だった。
要するに雪女と雪男という、美女と野獣の取り合わせである。
「こ、これはお恥ずかしいところをお見せしました。カガミさんのご両親でよろしかったですか?」
佇む男女に渚が話しかける。
「左様。と言いたいところだが、ちょいとばかし訂正じゃな。隣の彼女は母親ではあるが、継母だ」
「旅館の社長にしてカガミの父、クラークと申します。こちらでの呼び名は光り輝くで光輝と呼んで構いません。私は継母のマリアンヌと申しますが、境目の花と書いて境花と気安くお呼びください。性は泉となっています」
カガミの父親は旅館の主人だったのか、と感心する。交渉の件を除いても、挨拶に来るという話に頷けるわけだ。
そして境花は女将と言ったところなのだろうが、継母ということはと僅かに視線をカガミに向ける。
「えぇ、お察しの通り、本当の母は数年前に亡くなりました。でも、僕には境花母さんがいるので寂しくはありません」
カガミは困ったような顔をするも、直ぐに屈託なく笑って見せる。心からそうなのだとわかる、素敵な笑顔だった。
そして、渚が思う自己像とはかけ離れた万里の雰囲気から察するに、カガミの言葉は両者を繋げたものではない。亡き母と渚のことを指して、似ていると言ったのだと思う。
「境花は良い女だったよ。気立てが良くてのぉ、可愛げがあるが稟として気品があった。それでも、美人薄命とでもいうのかのぉ……カガミが五つの時に心の病であっさり逝ってしもおた」
しみじみと懐かしむように光輝が奥さんの話をする。
しかし、渚やエリックにしてみれば全くわけのわからない話である。言っている言葉の意味はわかるのだが、まるで境花が既に亡き人のように話すので頭が追い付かない。目の前にいる境花が幽霊だとも考えられるが、どう観察しても生きた人間――魔物のように思える。
いや、そもそも一般的には妖怪として扱われる雪女が生物学的に生物として成立するのかは甚だ不明だが。
「貴方様、お二人が混乱されていますよ。事情を知らない方から見れば、その言い様では私が死んでいるかのように聞こえます」
境花が光輝をたしなめる。
「おぉっと、すまん、すまん。ここにおる境花は、前妻の境花の名を引き継いだ二代目でな。いや、正しくは影武者というべきなのかの」
「そういうことか。まぁ、確かにそうじゃなきゃこの旅館の説明が付かんわな」
それを聞いて、エリックは真っ先に得心したようである。
「え? えッ? どういうことなんです?」
渚は答えが導き出せずにエリックや光輝、境花、カガミを見渡す。
「要するにじゃ、カガミを生んだ境花は十年ほど前に亡くなって、今の境花が名を継いだわけじゃよ」
「そう、人間としての境花さんはおらず、私という魔物に受け継がれているのです」
「システムとか仕来りではなく、この宿を存続させるための苦肉の策として社会的に境花母さんを偽装しなければならなかったんです」
「魔物じゃ、まず店を経営するなんてこったぁできないからな。俺達みたいに、魔物だけしか知らない、実態が存在しない商売でもなければな」
四者が順に答えて行く。
そうして漸く、渚も理解ができた。
ここ『氷境荘』の経営主は境花で、彼女は生物学的には死んではいるが死亡届などを出さずにおけば、社会的には『泉 境花は存命している』ことになっているわけだ。そのため『氷境荘』は名目上、雪女の境花が人間の境花として継続している。魔物に戸籍などあるわけがないのだから、人間が作ったものを影武者として引き継がねばならなくなる。
ここ『氷境荘』は、砂上の楼閣だ。
そして、そこから一つの結論が導き出される。
「つかぬことを伺いますが……光輝さんは前妻の、人間の境花さんとは書類上では結婚なされていないことになりますよね? ということは――」
渚が絞り出すように、その事実を問いかけようとした。
それを光輝は、皆まで言わずとも、と引き継いでくれる。
「――あぁ、カガミに父親はいないことになっている」
やはりか、と渚は神妙な表情になる。
カガミは人間の境花の子として生まれているため戸籍は得られるが、その反面で父親である光輝は戸籍がない。故に、カガミは社会的には父親のいない子供ということになる。
無論、血の上では繋がりがあるのだから気にすべきことではないのかもしれないが、それでも血縁の繋がりを断たれている渚の母、小波のことを重ねて見てしまう。
「そう気を落とさんでもえぇ。例えワシら親子が人間から繋がりを認められんでも、ちゃぁんと血と心は繋がっておるんじゃ。何を気にすることがあるッ」
光輝はそう言いながら腕を組んで構え、満面の笑みを渚に向けた。境花が大木のような肩に手を置いて寄り添い、カガミが竹竿の如き指を握りしめる。まだ顔も知らぬはずの泉 境花が人見知りする子供のように、光輝やカガミの後から顔を覗かせているような気がした。
取り囲む全ての環境が酷く寒々とした中で、彼らは強く生きているのだ。この極寒の季節に負けないぐらい、温かい家族の絆で結ばれながら。
社会的な関係がなんだ、書類上の血縁がなんだ、と気にしていた渚が馬鹿のようだ。
「説明も終わったところで、そろそろ交渉に移って良いか?」
そうやって水を差すのがエリックだ。
確かに進めていかねばならない話ではあるものの、少しばかり空気を読んでくれても良いと思う渚だった。
「あぁ、そうじゃな。しかし、お主ももう少し甘やかしてやっても良いんじゃないかね?」
「そんなことすると、また話が進まなくなるからな」
光輝に苦笑を浮かべられ、エリックが鼻息を吹いてあしらう。
いったい何の話をしているやら、と渚は小首を傾げる。
「さて、通達はこちらに送られてきておるから大概は把握しておる。人間の軍隊がワシらを討伐するために動き出しているという話で、その作戦内容をお主らが把握している。こうして話が出回っている以上、進攻は時間の問題だということじゃな?」
「そうだ。こっちが掴んだ情報では、情報を得てから二か月あまりで既に五十以上あった魔物のグループが三十四組に減っている。残りはここみたいに厳しい環境下を住処にする魔物か、余程の上位グループだけだ」
両者が話を切り出し、緊張感が高まっていく。
渚もここへ来る前に学習しておいた資料を、頭の引出しからぶちまけて整理していく。
雪原を根城にする雪男や雪女、またスノーフェアリー等の種族が進攻を受けるのは春季の雪解けを待ってからと推測できる。それまでの約ひと月に、交渉が進められそうなのは二十組にも満たないというのが『アドリアーナ・ルクヴルール』のブレインであるマダリンおよび補佐役エッタの見解だ。
残り十数組の内、日本政府の攻勢を凌げるのは『アドリアーナ・ルクヴルール』を含めて5組ぐらいだろう、とのことである。それに当たる人間社会に潜む魔物グループで上位を占めるのは、古くから日本の地に根付き虎視眈々と勢力を伸ばしてきた鬼人種オーガの1000の軍勢。各自が序列300前後という実力に加え、裏の様々な組織に根を伸ばしているため、銃火器という人間の優位性が通用しない点も大きいだろう。
次に、全体の総数は百に満たないものの、一体ごとがエッタに匹敵するかそれ以上の戦闘能力を誇る幻獣種の混成部隊である。巨大な飛竜の一体、高速の獣鳥の一体、その数体だけで地上戦力など手も足も出なくなる。航空戦力を大隊規模で揃えてこない限りは打ち勝つ術などない。
続いて、死霊使いの不死の軍勢達である。序列800前後からそれ以下の下級死霊種であればほぼ無条件で使役と召喚ができる上、敵軍を殺めて生ける屍を集めることさえできれば、勢力はオーガよりも多くなる。対人だけに関して言えば、という条件付きで最大戦力を保有できるグループだ。
最後に、精霊種の中でも序列155位のニンフだろう。ニンフと一言に言っても、生息する場所によって分化する上に、自然を味方につけることができる特性を持つ。また、一か所のニンフを消滅させただけでは復活できるというのだから、敵勢が余程の大軍で分担できない限りはたった数匹で趨勢を覆すだけのポテンシャルがあるのだ。
他に数組ほど有力な勢力はあるが、いずれとも日本政府の攻勢を凌げる条件を揃える、もしくは維持するのは難しいと言える。
「敵の情報を得られることに加え、お主らがワシらへの助力を申し出てくれるというのは聞いている。それで、お主らはワシらに何を望む? 協力関係か? それとも金か?」
聞いてくる光輝の目が鋭く光る。
「金だ」
間髪入れずにエリックが答える。
他の魔物達からしてみれば金銭を選択する理由がわからず、嘲られてもおかしくない返答だった。しかし、光輝達も同じくして人と交わって生きているために、納得したとばかりに息を漏らす。
奪って生きられるほど今の人間界は楽ではないし、生きるために奪うのは命だけで十分だ、とぼやいていたルーデの言葉がなんとなくわかる気がした。
そして、協力関係を望まない――というより望めないのは、『アドリアーナ・ルクヴルール』側に利がないからである。春季の雪男達を味方につけたところで大した戦力にはならない上、場所が場所だけに戦力を常駐させるわけにもいかない。それをどこのグループとも契約していたのでは人員も足りなくなる。
『情報は売って差し上げますけど、使い方はそっちでお考えになって』というのがマダリンの揺るがぬスタンスだった。魔物側に着いてこそいても、諜報を主体とする『アドリアーナ・ルクヴルール』のあり方もまた合理的と言えるだろう。
無論、それに従うか否かは個々の自由でもある。
「そうか。そういうことならば、この話はなかったことにしてくれや」
『……!?』
返ってきた光輝の選択に、渚達は驚きを隠せなかった。
交渉決裂もあり得るとは予想していたものの、それでも可能性の低い選択だと思っていたからだ。
何も数千、数億という金額を要求しているわけでもないのに、どうしてなのかと問いただそうとする。
口を開くより早く、光輝が言葉を続けた。
二章が終わるころには『アドリアーナ』勢の過去に関する伏線がほぼ張り終わるので、番外編なんかも差し挟みたいところです。
クロスオーバーなんかもやりたいですしね。
ということで、ご意見、ご感想、アドバイス、俺とクロスオーバーしようぜってご希望も含めてお待ちしております。
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