魔法少女の笑顔が無敵でナイトメア!☆
第零章・学園に光臨した三人娘
「ナぁああああいトっメぁああああああああああああああ!!!!」
漆黒の波動が大地を掛ける、目の前の敵手に延びていく。
現在彼女が放った魔法、
世界の混沌と原罪の、その偏在率を操作し、意のままに災厄を時空跳躍顕現させる、所謂、時空系の魔法。
「ふん!甘いなぁ!まだまだぁ!!」
そう大声上げながら、目の前の災厄をいとも容易く切り伏せる黄金の影。
盛大なスパークと電光が中空を駆ける、
溢れ出た光はこの瞬間だけで、恒星一つ分にすら達していた。
そんな中でソレを為した当人、
金髪青眼の少女が、ピカピカと青色の光り輝くコートを翻す!
「魔法使い! 華麗に優美に! 煌びやかにケンザン! 参上!」
ニッコリと輝かしい笑顔、ピース!
西洋系の幼女だった、
それに合わせた如何にも古典的な魔法使いっぽい、しかしファッション性に溢れた、同色の尖がり帽子。
ふざけた調子と裏腹、凛とした顔立ちは神秘的ですらある。
ギャップは止まる所を知らない、
口調とは対極の澄んだ瞳、どこか物憂げに世界を見つめるかのような、どこか今一つ捉え所のない水平の彼方を幻視させる。
そう、視線はどこか聖母の穏やかさを、見るもの全てに感じさせずにはいられない。
「汝知れ、これは聖女の資格であぁ~るゥ!」
言いつつ、彼女のよっぽど言ってやりたかった台詞だろう、その黄金の聖剣を切っ先だけ向けた。
それだけで世界を否定する。
法則の蹂躙はその神から与えられた神器、それの為せる技である。
聖なる波動を振りまきちらしながら、光が粒子がその剣に収束していく。
「エクストラァァーーー!」
気が狂ったような、雄たけびのような大声である。
「ニューファアリングロックオープン!!!!!エクスカリバーディヴァインド!!!っセイバぁあああああ!!!」
少女は盛大な大声を上げ、目の前に先ほどの漆黒の波動、それよりも数段上の魔法を出現させるのだ。
彼女の攻撃に、だがしかし、対するのは対面のモノではなかった。
つまり、迎撃を加えたのは先のナイトメアを放った少女ではない。
もう一人である、
高みから頭上を見下ろすかのような少女がいた。
それはサカサマの逆、
地平を反転させて、空に逆に立つ、不可思議な影だった。
「それは邪悪すぎて、歪な闇」
その言の葉に波動を、当たりに発散させている。
何かが漏れ出でるほどに凝縮した、暗い憎しみを全てに向けていたのだ。
「そんな有様、
何処までも空虚で威圧的で、世界の全てを敵と信じるかのような。悪の権化を体現し続ける存在は、そう、それが、わたし」
頭上から全てを、サカシマに平眼する神のような姿は、どこまでも漆黒な瞳と長い髪を持っていた。
それに加えて、服も黒のローブで、全身黒尽くめなそれ。
言葉を一言、世界に命じた。
「消え去れ!!」
頭が可笑しくなるような、少女自体の気性は言うに及ばず、万人が認める声。
「イデアスターフィス!ミフィストテンペスト!!!」
その叫び声は、マンドラゴラのにも似た、歌い上げるような詩にて。
世界の根源の、さらにその先から何かが、
そう、聖剣の力を襲った。
肉眼では何もわからない。
深淵が現れ、進行方向の全てを飲み込んだのだ。
この偉業を成し遂げた人物は、平然としている。
どこからどう見ても、中学か高校生にしか見えないが、
その発する気やオーラは尋常な物ではない。
明らかに存在の規模が違う。
表面に見えている、そんな女学生のような姿は仮初に過ぎないと、
これまた見るもの全てに確信させる。
そういう存在自体が先の漆黒の災厄と同種。その力の根源に座すかのような少女だった。
「みんなぁー!すごいなぁ!!!超強いじゃないかぁ!!よぉおおおし!!私この学園にはーいろぉ!!」
と高らかに宣言したのが、最初に攻撃した少女。
銀髪に赤眼。
先の聖女に似た、典型的な魔法使いの衣装と似ている。黒の尖がり帽子と、漆黒のカッコいいファッショローブを纏い。
それに超スーパーロングストレートの銀髪を映えさせた。
特に顕著な特徴は、先の少女二人とは多少以上に毛色の違う。
突き抜けた明るさと無邪気さ、無垢さを顔一杯に浮かべて微笑むその表情。
そんな元気の塊のようなその少女に。なぜだか他の二人は頬を赤くして俯くのだった。
「よーしいいぞー、それくらいでぇ!!お前達の実力はぁ!!この時空郷ナルディアが確認させて貰った!!お前達は文句なしで、我が学園に相応しいぞ!!」
と、先の少女三人とは似ても似つかぬ野太い声。
その主は、ガッチリとした西洋鎧を身に纏いながらも、全く物腰が重くない。
軽々とした身のこなしで少女達に近づいていく。
三人娘も既に制止の声とともに、広場中央に集まり、彼ではない。彼女の言を聞き始めた。
そんな彼女達の、まるで先生かのような。
腰ほどの赤髪に、紅のような猛禽類のようなギラギラした瞳。
全身から溢れ出る闘気は、まるで幻想に聞く竜のよう。
長身で、大剣ですら振り回せそうな、巨大な筋肉達磨のような。
鍛え上げて到達できるのか、不可思議なほど引き締り、雄雄しすぎる体付き。
その頼もしさを通り越した雄大さは、正しく山だ。
彼女が歩くたびに大地が動くかのような衝撃が、これも見るもの全てに一様に普遍的な感覚として与えるだろう。
大自然の驚異のような。
そういう存在自体が何かの災害かのような女性は。目の前に集まってきた少女達に、自らの巨大な威圧感を払拭するかのように。
ニっと、聖母のような、穏やかでいて慈悲深い。どこまでも愛嬌と畏怖を感じさせる”スマイル”を浮かべ、こう言った。
「ようこそ、中央国、中央時空魔法学園へ。
知っての通りここは、ドリームワールド中央域、夢の集結点。
夢の、幻想の限界点だ。
精神世界最高幻想力場を誇るポイントで、それら幻想の顕現世界でもある。
だから君達も此処へ誘われたと言ってもいいだろう。
さあ、ここでの修行が君達を更なる高みへ、同様に誘える場所である事を願うよ」