もう一人のナイト
ぼくはくま。
くまのぬいぐるみ。
テディベアだよ。
最近ライバルができたんだ。
うさぎの抱きまくら。
ウサギさん。
ショッピングピンク色の長身のウサギさん。
手足が長くてくびれがあって、きゅーとな耳もある。
ちょっとぼくは危機感を感じてる。
彼女が最近ウサギさんばかり抱きしめているんだ。
夜ベッドの中にもぐりこむと、隣にウサギさんを添えて携帯をいじる君。
そりゃあ抱きまくらだからなのかもしれないけど、ぼくの存在を忘れている気がする。
暗い部屋のすみっこ。ぼくは君の足元でこてんと座っているよ。お行儀良く。
肌触りも彼の方がいいみたい。
ウサギさんのほっぺとか、おなかとかいつも撫でてる。
ぼくはしっとをするより、かなしくて、さみしくて。
この青い瞳から透明ななにがか零れそうで、でもそんなのみたら彼女は心配するからそんなことはできない。もともと涙は出ないしね。
君は今日もあの人とのメールのやりとりを途中にしたまま寝ちゃった。
そっとぼくは二本の足で立ち上がり、彼女とウサギさんのところまでペタペタ歩く。
ふとんの凹凸をよけて歩くのにももうなれた。
ぼくはじっとウサギさんを見つめるけど、ウサギさんはなにも言わない。
ウサギさんは彼女を支えていた。ちょうど顔の部分に、彼女のあごが乗っている。彼女は幸せそうに口角をあげて、夢の中だ。
「可愛い嬢ちゃんだぜ。そこのくま坊よ、ふとんをかけなおしてやってくれ」
しぶいハスキーボイスでウサギさんは言った。
ぼくはふとんをかけなおして、彼女のおでこにぺたっと判子をおした。
今日もおつかれさま。いい夢を。
「おまえも寝るならおれのおなか使えよ。じゃ、おやすみ」
ウサギさんはそう言って目をつぶった。
ぼくはなにを心配していたんだろう。