5 事故
検問を抜けて少しして、時間を見る。午前一時を過ぎていた。
今日は八月八日だ。社長選考合宿の一日が終わった。参加者はもう、眠っている頃だろう。
私は光月陽一を殺すために、六人村近くの合宿所に向かっていた。助手席には彩花の赤い携帯電話が、サイドボードの中には本間順平のくれた銃がある。
まだ少し手は震えている。
まっすぐで平坦な道が続く。周囲には田んぼがあるはずだが、暗くてよく見えない。規則正しく退屈に並んだ外灯が催眠術のように眠気を誘う。
ガムを噛み、大声で歌いながら目を必死で開けていると、ふいに左右の風景が変わった。
白い壁。これは、住宅の壁、住宅地だ。
心臓が止まりそうになるほど、緊張してきた。再び、手が汗ばみ、ハンドルが滑りそうになる。
六人村だ。
とうとう六人村に入った。
目的の場所は、村を通り抜けた先にある小高い山の上である。
もう少しだ。あとほんの少しで、私の戦いが始まる。何も考えられなくなってきた。どうすればいい? どうすればいい? 深呼吸だ。深呼吸をして気持ちを落ち着けなければ。
と、矢先。
何かが割れる音がした。
視界が奪われる。
フロントガラスが割れたようだ。
破片が私に降りかかる。
とっさに死の恐怖を覚えた。
ハンドルを左右のどちらかに切ったような気がする。
意識が消えた。