偽物の笑顔
二泊三日の研修はあっという間に終わり、それから何も進展のないまま夏休み一週間前になった。
「夏休みどうするよー? そうだ、祭り行かね?」
そう声をかけてきたのは、よっちゃんだった。
「いいね、行こうぜ!」
隣の席の男子が、僕に向かって言う。あれ、でも確か……。
「いいけど、お前彼女いなかったっけ?」
僕は気になったことを聞いた。
「あぁー、別れたわ。三ヶ月だからまぁ、そこそこってとこ?」
三ヶ月が長いのか短いのか、僕にはよく分からなかったので、適当に頷いておいた。
「ところでよっちゃんはどうなんだよー。彼女と祭り、行かねーの?」
僕はその言葉に驚き、よっちゃんを振り返った。
「あぁー……、予定あるんだってさ」
まだ、分からない。もしかしたら水月じゃないかもしれないじゃないか。
僕は焦りを隠そうと、何でもないように聞いた。
「あれ? よっちゃん彼女いたっけ?」
「んー、いるよ?」
聞きたい自分と、聞きたくない自分がいる。しかし、どうしてもはっきりとさせたかった。
「誰?」
「ん? 聞きたい? えっとねー、右から二列目、前から二番目の席の女子!」
遠回しに言われたが、僕は席を見なくても分かった。
そこは、その席は、水月の席だった。
「そっか、結局くっついたんだ。……おめでと」
僕には、それが精一杯だった。よっちゃんは、とても嬉しそうに「ありがとう!」と言って笑った。
結局、僕はよっちゃん達と祭りに行くことを断った。夏休みは、同じ中学だった友達とゲーセンに行ったり家でゲームをしたりして過ごした。それらの事はとても楽しかったけれど、やはり僕を満足させてくれるのは、生き物の死だった。あれから、たくさんの生き物を殺した。腕にとまった、どこからか逃げ出したであろうインコや、道端を歩いていた野良猫。どんなに可愛げのない生き物でも、生をやめる瞬間は他の何よりも美しかった。
夏休みの間、水月の事は毎日考えていた。よっちゃんと一緒に遊んでいるのを想像して、イライラして壁を殴った。手が真っ赤に腫れ、壁が凹んだ。
僕は、夏休みの初めにミクシィに登録した。沢山友達を作りたいとか、そういうのではなく、ただ単に暇だったのと元中の友達に勧められたのがあって始めた。
僕は、しばらくしてミクシィに感謝することになる。
使ってる人には悪いですが、ミクシィって辺りがちょっと懐かしいですよね。でもわたしはTwitterとミクシィしか使ったことないので、機能とかの面で書きやすいミクシィを使わせてもらいました。