初めての恋
今年、高校生になった僕は、人生で初めて恋をした。
同じクラスになった、少し不思議な女子。「水月」と書いて「みつき」。水月という名は、彼女にとても似合っていると思った。彼女は、ショートヘアーの髪を耳にかけ、いつも楽しそうに笑っていた。しかしどうしようもない気分屋らしく、突然キレだしたり、訳もなく泣き出したりすることがあった。
それとは別に、少し気になることがあった。それは、彼女の手首にある傷と、耳を引っ掻いた痕。
手首の傷は、時計で少し隠れていた。古い傷から新しい傷まで、沢山の傷があった。僕は、それを見て何とも言えない感情に襲われた。
それからというもの、僕は彼女のことが気になって仕方なかった。
高校生活が始まって、二か月が経った。
クラスでの人間関係がだいたい決まり、男子の名前もほぼ覚えたころ、僕は彼女とよく話している男子と仲良くなった。
彼は、クラスではムードメーカー的存在で、「よっちゃん」というあだ名で呼ばれていた。
よっちゃんは、彼女の事をよく話していた。見かけによらず運動が苦手なこと、家庭科部に所属していること、彼氏はいないということ。どんなことでも、彼女のことを知れることはとても嬉しかった。
特に、彼氏がいないということを知った日は、柄にもなく鼻歌なんて歌いながら下校してしまったほどだ。
僕は、彼女のことをいろいろ知ってる。ずっと、彼女を見てきたから。しかし、彼女は僕のことを何も知らない。僕の名前すら知らないかもしれない。それでも良かった。彼女を見ていられるだけで、良かったのだ。その時の僕は。
よっちゃんは、実は同級生をモデルにしていたり。
性格なんかも、このまんまです。