快感
好き。
ただ、それだけだった。
本当に、ただそれだけ。
僕は、昔から蝶が好きだった。
小学四年生の夏、僕は青空の中飛んでいるアゲハ蝶を、虫取り網で捕まえた。とてもきれいなその蝶を、虫かごにしまい家へ持ち帰った。
僕は、それから毎日その蝶を眺めた。毎日、毎日、飽きることなく。
何日か経ち、僕は気付いた。きれいだった羽は、ところどころ破れ、蝶の元気はなくなっている。蝶は、明るい方へ明るい方へと飛んでくる。
何度も虫かごにぶつかり、よろけてはまたぶつかり。
僕は、きれいなものが自分を傷つける姿を、見ていられなくなった。このまま、傷ついて死んでしまうのなら、僕が殺してあげよう。そう思った。
幼い僕は、その蝶を殺した。初めに、羽をもぎ取り飛べなくした。次に、蝶の頭の部分を、手で千切った。すると、蝶は少しして動かなくなった。
僕は、それを元の蝶の形に戻し、クッキーが入っていた缶にしまった。
小学四年生の僕は、その時なんともいえない快感を得たのだった。
それからも僕は蝶を捕まえては殺す、ということを繰り返した。蝶を殺すたび、僕の胸の内はざわめき、あの快感に身を震わせた。きれいな蝶であればあるほど、快感は大きくなる。
僕は、いつしか蝶にとどまらず、魚や猫にまで手をだしていた。
生き物が一番美しく輝く瞬間、それが死だった。
きれいであればあるほど、それは美しく輝き、僕に快感を与える。
きれいなものを殺す、という行為は僕の中で何よりも楽しく、自分がこの世に存在してることを実感させてくれた。
僕のその異常な行為は、いつの間にか六年も続いていた。
完結している話ですが、ちょっとずつ投稿していこうかと……。
どうぞよろしくお願いします。