ノートパソコンの前に座って
ノートパソコンの前に座って、お話を書こうとあーでもないこーでもないと考えていて煮詰まって、ちょっと飲み物でも取ってこよう、って顔を洗って冷蔵庫からペットボトルのお茶を取って戻ってきたら、ノートパソコンのキーボードを三毛猫がにくきぅでバンバンと叩いていた。
「あーなにやってるのもー!」って声を上げたら「おてつだいですにゃ!」って胸を張るのでしょうがないなーって思って抱き上げて膝の上に乗せておなかをなでてやったらのどをごろごろ鳴らしてた。
ふと画面をみると、さっきまで開いていたテキストエディタとは別のウィンドウが開いていてそこに三毛猫がバンバンと叩いていた文字の羅列が表示されていたので、なんかお話のネタにでもならないかなって「どれどれ……」って覗き込んだら……。
「あたしは猫なのです☆」 只野三毛
あたしは猫なのです。名前はミスラっていいます。
どこで生まれたのかもわかりません。ただどこか薄暗いじめじめしたところで、にゃーにゃー泣いていたことだけは覚えています。あたしはそこで初めて人間という物を見ました。しかも後で聞くとそれはじょしこうせいという人間中で一番獰猛で好奇心旺盛な種族だったみたいです。このじょしこうせいというのはときどきあたしたちを捕まえてもふもふするという話。もふもふっていうのはなんだかよくわからないけれど、その当時は何という考えも無かったから別段怖いとも思いませんでした。ただ、彼女の手のひらに載せられて、すいと持ち上げられたときになんだかフワフワした感じと、何かいい匂いがしたことを覚えています。手のひらの上で少し落ち着いて、じょしこうせいの顔を見たのが人間というものの見始めでした。とても奇妙だと思ったのを覚えています。だって、顔にぜんぜん毛が生えていないんですもの。さらには、あたしをみて「きゃーカワイイ」とか「にゃーにゃー!」とか耳が痛くなるようなかん高い声を出すのです。イッタイこのニンゲンっていうのはナンナノダロウって思いました。
「キミ、今日からうちの子になりなさい! 名前は、えーっとね、みすらにしようかな」
と目の前のじょしこうせいが言ってあたしはミスラになりました。
「……これキミが書いたの?」って膝の上の三毛猫をつついたら「にゃ?」って首を傾げてた。
名作文学のパロディというかパクリというか、三毛猫、意外にブンガク好きなんだなってちょっとびっくりした。