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序章
人は誰しもヒーローになりたがる。
誰かを救うヒーロー。悲しい境遇の悲劇のヒーロー。優越感を感じたいヒーロー。
誰だって自分は特別だと思ってる。
思いたい。
思わせてほしい。
思わせろよ。
ゲームの中くらい。
俺は、妙にむしゃくしゃして、つけていたPS3の電源を消した。
さっきまでしていたゲームはこれ。
「グランドセフト音頭」
祭り好きの主人公が街中を自由自在に暴れまわるアクションゲームだ。自由度はかなり高くて、街中に歩いている人を殺すこともできるし、車やお金盗むこともできる。
現実もこれくらい自由に生きることができればなあ。
ため息が出る。
この世界は、どこか不自由だ。その気になれば、歌手やスポーツ選手にだってなれるはずなのに、そうはいかない。周りの目や世間体、自らの勝手な限界の決め付けなどによってそれは妨害される。夢を追いかけることは馬鹿とされ、現実を追求することが正しいとされる。俺はそんな世界が大嫌いだった。俺が今無職なのは、そんな世界への当てつけかもしれない。
……いや、違うか。