6.
「興味深いね、彼の取り出した宝物と呼ばれる剣には特殊な概念が宿っていると?」
「ぇに、私が見たのは確率値を固定してる奴と、風を纏ってる奴…あんと、まそれだけかな?」
古見が話すは王の三財物が2つ、節制の名を象った収束剣サメフと魔術を顕現させる空力剣ベート。
「それで…私に使った正義の名を受けた正負剣ラメド…いずれもタロットカードの大アルカナと神秘が一致している…」
「やはりただのオブジェクトではないような…普通神秘を2つも3つも持つ者はそうそういませんよ…?」
「ゃ、しかもどの宗教にも属してないっぽいもんね、一応神秘思想は持ってるぽいけど…これどういう事なんの?」
「分からない、としか言い様がないねぇ…」
煮詰まる思考が場を包む、神秘について専門知識を持ち合わせている雨眠でさえ匙を投げる始末
「いっそ、本人に聞いてみるというのも一つの手段、だが…」
「んね、雨眠ちゃん嫌われてるもんね。」
「…イタリア支部…ぃや、バチカンに協力依頼も…」
上がる、イタリアの名。
テットがイタリア支部のザインは、特に秀でた働きもせず静観を貫いている、が…
「イタリア支部…っちゃ事は、ティファレトちゃん?それとも…」
そのワードが王の耳を通じ、ブロードマンの脳地図が41野と42野を刺激し、一次聴覚を目覚めさせる
「ああ、かの"麗人"でも良いが…やはり彼女に意見を聞くのが…おや?」
「に、なにかあった?」
「計器が異常を知らせているねぇ…相原くん?」
「…あ、あっはい!いってきむ、いってきます!」
日付が変わり12分が経つ、想定よりも早い王の復活に人間達が作った機械は警告を知らせる
「ゃ〜…一体何があったんの…?」
「…まぁ、いずれにせよ何も分からない、それがけつろ―――」
それは、この世で最も煌びやかに輝く死滅の蒼。
それは、沈黙を破り真実を伝える死の心拍
安全という幻想を切り取る警告が鳴り響き、その蒼き威光はガラスを突き抜ける。
「っまずい…!」
「んゃ!?な、何が起こって…」
「古見くん、今直ぐ技術安全チームを呼んでくれ」
「へゃ…?な、なん―――」
「―――っ早く!」
腹部から発せられたように聞こえる怒号は古見の正常性バイアスを瞬時に打ち破る
「相原くん!っ聞こえるかい!今直ぐそこを離れろ!」
相原が向かったのは拘束室を御するメンテナンスルーム、一番壁が薄く、最も危険…
「何をやってる!早く技安チームをッ!」
「うえっへは…はい、よっ呼んでくる…!」
メンテナンスルームに設置されたスピーカーから流れる叫びにも近い雨眠の怒号は、その男には伝わらない…
「っ……相原くん、は、いや、ちがう、だいじょうぶ、だ…彼ならM.A.Uが心肺蘇生と放射線へのガード、を…」
「っ雨眠ちゃん、落ち着くんだよ…」
逸る思考を暴走させている雨眠を背に古見は退出、残るは…
「しつ、ちょ…」
自覚の無いまま刻まれる遺伝子終局への下書きを待つ相原剣。
「相原くん…!意識が戻ったかい!?早くM.A.Uを起動、させ…て…」
"止め。"
部屋全体、または星全体を埋め尽くす程の存在感
雨眠の体感は、その圧をあまりにも巨大に感じさせる
「これは…神秘だ、枝分かれした物ではなく…」
「…表裏一体だな、貴様は…」
今降り立つ
今受肉する
今顕現する
今、堕落する。
「現界を今、宣言しよう。」




