17.
「…てか、あんた日本人なん?」
「…だから言っているだろう、余は王なり。」
路地裏、湿った熱が街を取り囲み同行者が動乱に巻き込まれている中王はひまりと会話を交わす。
「…ぷはっ!あんた面白いな!で、なんだよ?家来の一人が迷子ちゃんって感じか?」
「…いいや、余が迷い人である、此認めずは愚ぞ。」
呆れた表情は変わらず、しかし興味深い眼前の小さき者、王の話にひまりは耳を傾ける。
「愚ぞ…って、あんた何歳だよ…んで?どんな人なん?お姉さんに教えてみ〜」
「黒眼鏡、筋肉質、女、柄だけの剣、蒼きひとみ…何だ。」
「…いや、あんたも随分だけど、そん人も個性派だな〜…って。」
王はひまりを凝視する、そして…
「…ふっ、それは貴様も同じ事よ道化。」
ここイタリアの地にて、柄付きシャツの帯刀女、そして王冠被りし幼童が日本語で会話している現状が再確認される。
「ぁ〜…まそうかも、うん!あたしはそん人良く知らんけど、暇してたし探すぐらいは手伝うわ。」
「…良い、行くぞ。」
こうして、同行者を得た王は路地裏から現在の状況も知らず歩みを進める。
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「………?」
家と家、建物と建物の屋根を疾走し飛び続けるリーヴィアは、拠点であるサン・ザッカリーア教会へ向かっていた。
「…そこの貴様、何者だ。」
ある民家の屋上、黒色のトレンチコートを着た人影がリーヴィアの目に止まる。
「…答えろ。」
そのただならぬ気配に、リーヴィアは光圧体ブレードを起動させ構えを取る
「…んんっ、こんにちは!リーヴィアちゃん!」
咳払いの後、手を振るその者は、朗らかで包容力のある印象を抱かせる。
「ドイツから来ました!イナ•フォン•ホルマンだよ!イナって呼んで…あれ、聞こえてる?」
張り付いたような笑み、軍人のような服装に体格…その白い手袋は、異様な存在感を出していた
「…何用だ、貴様に構う時間は私には無い。」
「えー…まぁいいや、挨拶はこれくらいにして…」
その者、イナと名乗る女は古い木製の何かを取り出す
リーヴィアはこの瞬間に本能で理解した。
"ヤツは敵である"
と。
「ばん!」
「ッぐう゛!」
構えは両者共に高速だった、異なっていたのは、イナが持っていた木製の何か、それがライフルであったこと。
「あれ、致命傷じゃない、か…お話通りだね、リーヴィアちゃん。」
「戯言を…っぐ…!」
射撃後、付近にいたヴェネツィア市民の驚きの悲鳴と共に、リーヴィアの右足が撃ち抜かれていた
「えへへ、じゃあもっとお話しちゃうね。」
吹き出る血を筋力で持ち堪えるも、痛みで冷や汗がリーヴィアの顔を伝う。
「マウザー・ゲヴェーア・アハト・ウント・ノインツィヒ…知ってる?1890年代の小銃でね?ボルトアクション式なんだけど…」
イナが口径から銃身長、発射速度から銃口初速に至るまでを恍惚としながら語る…
これは好機か、はたまた濃厚な敗色か。
「でね?私この銃が大好きなの!一発一発丁寧に弾を込めて…」
「御託をぺらぺらと…!ッぜぇい!」
「こんな感じ、ばーん。」
それは、敗色であった、眼前の者は興奮気味になった狂人を演じていたのだ。
リーヴィアが足に集中を向ける度、イナはそれを見計らって再装填を行っていた。
「…あれ?」
しかし同時に、それは大きな油断でもあった。
「見失っちゃ…ッうしろ―――!」
「―――Questo è il colpo di grazia!」
いつかの日、王へ向けた勝利の宣言は建物の居ないこの場では止まらない…
「っふん…!」
…この場に居る、イナを除けば。




