10.
「Siamo arrivati, il chiamante è lì.」
「Ah, che umidità! Ma non c’è un posto per l’estate?」
少し小振りな航空機を背に、サングラスを掛ける筋肉美を主張した美女と毛量の多い控え目な印象を抱かせる女子が2人を待ち受ける。
「紹介するよ、こっちの光圧体ブレードを持っているのがリーヴィア•オルシーニさんと…」
「どーも、建部です、よろしく。」
「…通訳の建部綾さんだよ、運転手も兼ねてるよ、じゃ僕忙しいから後よろしくねー」
最低限の紹介、そそくさと去る足早な鳥羽を王達は見送るそれ以外に可能な手段を持ち合わせていない。
「つーやくって言っても、リーヴィアはちゃんとにほんご話せるよー」
「ああ、よろしく日本の小さい王様、話は聞いているぞ。」
「………」
明らかな嫌悪の表情がサングラスの黒いレンズに反射する。
「ははっ!手厚い歓迎をどうも、さて早速だが…」
「…余はもう何も―――」
「―――実力を確かめさせてもらうッ!」
その重く金の装飾が付いた大剣…その柄から白い光の刃が燦然と輝く。
「…ベート。」
「わお、けっきさかんー…」
振り下ろされる光の濃縮体は、固体となった酸素に止められる
「貴様、如何ような理由を持って訳を述べる?」
「トバから話は聞いている、が!やはり剣を交えねばな!」
「そうか、愚者は嫌いではない、せいぜい余を楽しませる道化となれ。」
建部はその場にちょこんと座り、ブラシを髪の中から取り出す
「あんまり建物こわしちゃだめだよー」
「分かっている、戯れで済ます!」
梳かれる髪、その奥には剣戟。
その顔は不機嫌か、はたまた面倒か…
「貴様、強いな。」
「はっ、指先一つで交わすくせによく言う!」
事実、王は空を切るように指を動かし、それに連動するかの如く空力剣が天で舞を披露していた。
「ほう…不可壊の刀身か、どこで手に入れた?」
「私の故郷ローマさ!職人が600年費やしたイタリアの剣だ!」
光圧体、その名の通り光子を圧力によって物質化した一品…
「ローマか、であればその肉体も納得出来る。」
その光圧体を、刃の形に整え柄に取り付けるのは至難の業である。
「そうともっ…!毎日!チーズと化け物殺しでこの体だっ…!」
それを可能としたのはやはり職人。
そして、振り回すは超人。
「何が600年か、何が職人か、余の雑多な技で完封されているではないか。」
「はっ…!どうか………なッ!」
空を舞う空力剣に相殺されている力が、一気に増幅する
投げ出された光圧体の剣は空力剣と共に相互作用で吹っ飛ぶ
「ほう…?しかし余の情報を聞いているのならば、残りの剣があることも知っているだろう、貴様には剣一本、さてどうする?獣のように拳で向かうか?」
「………っ!」
煽る王は広角を上げる
しかし同時に、リーヴィアもまた笑みを溢す…
「でぇいっっ!!」
横に走り出したリーヴィアは段々と速度を上げ、ブーツからスラスターが顔を見せる
「跳躍…?いや、まさか…!」
「そのまさかだ王様!己の剣に切られる経験はあるか…!?」
半ば飛行、最早跳躍。
光圧体の剣に飛び、絡まった空力剣と共にそれらを手中へ収める。
「………成程。」
「Questo è il colpo di grazia!」
慣性を利用し超高速で迫りくる危機に、両者は笑っていた
「そこーまーでー…」
剣に乗っかるリーヴィア、そして新たな剣を顕現させようとする王含め灰桜の何かに制止される…
「喧嘩は…そこまでにしてー…」
緩やかな、温和でゆったりとした声と共に。
「…これは…髪?」
「ふむ、懇親にしてはやり過ぎたか…」
ふんわりとした陽光の匂い漂う巻き付くそれは、髪だった。
「あれだけの速度、力、重量を一瞬で止めるとは…中々面白い」
「だろう?アヤの神秘は髪を操るものでな、どうだ王様、気に入ったか?」
一切の動揺なく、眼前でぶら下がりながら腕を組むリーヴィア
「ああ、凄まじくな…そして、お前もまた道化として認める。」
「それは僥倖、私もお前を仲間として充分に値すると見た…!よろしくな、王様!」
逆さ吊りの握手、二人の間にはどこか、柔らかくも次の瞬間には剣が交えそうな仲が形成されていた。




