1.
創世記以前の話だ、宇宙は全てが秩序に包まれ灼熱だった。
エントロピーの支配は最小限になっていて、王が概念を財宝として一点に、ゼロポイントとして仕舞っていた
あらゆる勾配は0に、知性や星の瞬き、因果や重力までもが財貨として仕舞われていた
「それが…今はなんだ?」
「と、言いますと?」
運の至宝が暴走し、全てが爆発して散漫した、あらゆる概念は数億年の間に星や名前が付き堕落した
「…この星が誕生してどのくらいだ?」
「45億と6600万年でごさいます、多少の誤差はありますが…」
45億…その一瞬、その刹那の間に主と呼ばれる者が誕生しその教えを世界に広め、2000年が経った、経ってしまった。
「我が側近であるマルクト、貴様はこの状況をどう見る?」
「差し支えながら、大変遺憾、と。」
地球、蒼天の汚らわしい大地には我が天上の宝物である知性を我が物顔で使う愚か者、人類がまばらに生息している。
「申せ。」
「我が王の所有物である財宝、それに準ずる世界に礼儀無く侵入している者がちらほらと、散見されますが故でございます。」
原罪、と言ったか、人とやらは生まれながらに死の罪を持っているらしい
「見てみろマルクト、そこな大陸にて血を流す芸術家と叫ぶ赤子が万人と居る。」
「はい、あれは…"戦争"と呼ばれ…失礼、既知でしたね。」
笑わせる、知性を上手く使いこなせないから争うのだ、その口は、その喉は何故付いている?獣ではないだろう、唸るな。
「現世に行く、回収だ。」
「…承知しました」
「貴様には苦労を掛ける、この玉座にて帰還を待て」
「はい、我が王…いつでもお待ちしておりますが故。」
人間の好む話題だ、責任と権利、他者の所有物を使った事がどれほど大罪か、他者の所有物を上手く使わない事がどれほど愚かか…
____________
「…カトリックのアンチ系か、最近多いな」
「んね、やっぱ何か起こるんですかな…」
2000年代、世界。
"主"が死してから約2000年経ったある日、世界中で奇々怪々の怪異が出現、人類へ牙を剥く
「模倣だとありがたい、現実スペクトラムが違ったら…時間が掛かる。」
「いんや私はスペクトラム相違型のが好きよ、安全だし?」
が、人類もまたその数万年の歴史で積み重ねた1500gの脳を使い対抗を練った。
「…ここだな、ページは?」
「これよ、まーた資源不足とかで3枚だけさ〜」
研究は重ねられ、怪異存在は宗教的手順により撃退可能と判明、国際機関の設立は数週間で異例の速さにて成立した
「…まぁ、無いよりはマシだ、俺が入った頃派拳でやってたからな。」
「んぇ、それは佐都さんの時代がおかしかっただけやないん?」
人間の姿を模倣するタイプ、現実スペクトラムの相違により物理が効かないタイプ、見ている間は動かないタイプ、視覚が無くて聴覚に頼るタイプ…
「まぁな、ほら行くぞ、"コミちゃん。"」
「ゃ、その呼び方初めてされたよ…」
多種多様なタイプは存在するが、仏教と神道の国日本にはカトリックの敵と呼ばれるタイプが多い。
「えー…佐都健丸、猫塚古見、任務を遂行する為、進行上に存在する古民家へ侵入します、と。」
「全くいちいち報告しなきゃいけないの面倒だね」
日本、とある山間部にて、その怪異撃退を是とした国際機関"テット"日本支部所属の男女2名が放棄された古民家へ進む。
「ひゃうえあぉう…」
「うわっ変な声、驚き過ぎだぞ…」
老朽化が進み、歩む度軋む家屋は現代人にとって恐怖の一部である
「そんなん言うても…何が出てくるが分かんないんだもんさ〜…!」
「原始的に未知を怖がるのは分かるが…俺らはそれのスペシャリストだぞ?」
"ほう、であればして対峙してみろ。"
廊下の奥より来たる宵闇から発せられる威圧の声は二人を畏怖へ陥れるには充分過ぎた。
「っ…!」
「…さ、佐都さん…」
制止するようにとハンドサインを送るも遅く、猫塚古見は網戸の向こうへ放り出される
「………」
"良い、並大抵の者ならば今ので気絶していた"
「…あんた…誰、だよ…」
恐怖に歪む顔の佐都健丸は喉を震わせて異常事態に質疑を投げ掛ける
"王。"




