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成人済み魔法少女@引退したい ~最強魔法少女は無自覚に人々を惹きつける~  作者: パンドラ
第二章 プリズシスタ編

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二十八話目 魔法少女は信じたい

 ◇ ◇ ◇


「えへへ……」

「ご機嫌ですね、お嬢様」


 あの一件、私が実名を公開し、魔法少女であることを明かして以来、わたくしのスマホは通知の嵐でした。

 その多くは、本当にそんなことして大丈夫なのかという心配の声でしたの。見知らぬ魔法少女からも心配されて、これまでわたくしは何に怯えていたのでしょうというほどに、温かい声を頂きましたわ。

 特に、セレネシアとしては頻繁にチャットのやり取りをして、と、とと友達という相互認識を得ることができましたの。これは大きな一歩ですわ!


「ええ。あれもこれも、ルミコーリアのおかげですわね」

「ルミコーリア……きっかけは、確かにそうですね」


 おや? 千恵はあんまりルミコーリアの事を良く思ってませんの?

 まあ、わたくしが危険なことをするきっかけを作ったとでも思ってるのでしょうね。

 本当に、この子ったら。


「千恵。決断したのは全てわたくしですわよ」

「それはおっしゃる通りです。ですが、見てる側は気が気でないことを理解してください」


 カップにお茶を注ぎながら、千恵は苦言を投げかけてきます。

 ……理解はしてますわよ。

 そりゃもう、実名開示の際には散々反対されましたもの。最終的にはお父様の後押しもあって、押し切りましたけれど。


「まあまあ、結果を御覧なさい。わたくしが優れた魔法少女でなくとも、誰もが気にする存在になったのですから。結果だけ見れば、欲しいものは全て手に入りましたわ」

「それは……そうなんですけれども」

「ふふん」


 ルミコーリアの教えに基づけば、わたくしは多くの魔法少女の指揮をすることになるかもしれないというお話でした。

 ですが、冷静に考えてみて、全戦全敗の言うことを誰が聞いてくれるというのでしょう。

 連絡を取り合い、ただ仲良くなれば良い? わたくしは、それだけでは不十分だという結論をくだしました。


 この辺りはクリムセリアに少しばかり相談させてもらいましたが……要は、一目置かれる存在になるべきだと言われましたの。

 この魔法少女は他の魔法少女とは違うという意識が、言葉に影響力を与えるのだと。

 流石はメディア露出が激しい魔法少女、言う事の説得力が違いましたわ。


 特に特徴がないわたくしが一目置かれる存在になるためには、これを必死に考えました。

 考えに考えた結果、実名開示に至ったのですわ。


 魔法少女が基本的に匿名である理由は、好奇の視線にさらされることを防ぐためと、失敗した時のバッシングから魔法少女本人を守るためという名目が非常に大きい割合を占めています。

 その匿名のバリアを脱ぎ捨てるということは、非常にリスクを伴う行為です。

 ですが、わたくしは穂坂家の娘。注目を浴びるという事など慣れておりますもの。

 むしろ、どうしてわたくしが逃げる必要があるというのでしょうか。


 責任から逃げる。やるべきことから逃げる。それこそ、わたくしが忌避すべきことなのではないのでしょうか。

 立場を尊重する。ルミコーリアの教えで最もわたくしのためになる言葉がこれだとするならば、わたくしはわたくし自身の立場も尊重しなければならなかったのです。


「わたくし自身を認める。その一歩として、認めてくださいな」

「……わかりました。もとより、お嬢様の決定に口を挟む権利は私にはございません」

「ふふふ、また付き合わせてしまいますわね」

「地獄の底であろうとお付き合いしますよ」


 ピコリとスマホが鳴りました。

 画面を見てみると、セレネシアからメッセージが。


「さっそく、“お友達”からですか?」

「ええ! セレネシアが魔法少女として活動している様子を拝見させていただけないかと相談させてもらってましたの」

「それはお友達としてですか?」


 あっ。


「……かんっぜんにお仕事モードでしたわ」


 いえ、その、実名開示した以上、今後わたくしの活動は何をとっても魔法少女というフィルターを通して見られてしまうわけでして。

 でしたら、日ごろも魔法少女のための活動をした方が良いはずだと。それで、魔人と戦う以外の道を選んだ魔法少女についてもっと良く知れたらって考えでしたわ。

 どう考えても友達とやるやり取りではありません!


「私が言うのもなんですけれど、いいんですかそれで」

「よくありませんわ!」

「それはまあ、初めての友達ですものね」


 うっ。そういわれるととても弱ってしまいます。

 今のわたくしは、下手なことはできない身の上。果たして、友達と一緒に遊ぶだなんてこと許されるのでしょうか。

 め、迷惑になったりしないでしょうか。

 あっ! 今ため息吐きましたわね! 見逃しませんわよ!


「お嬢様。それこそ、相手を軽視する行為ですよ」

「……どういうことですの?」

「セレネシアは、お嬢様が実名開示したことをご存じのはずです。そのうえで、お友達としてお付き合いしましょうといってくださったんですよ?」


 それはそうですわね。でも、それがどうして相手を軽視することに繋がるのでしょう。

 察しが悪いわたくしに向けて、千恵はもう一度ため息を吐いて見せました。

 わざとやってますわねあなた! この間からやたらと反抗的でしてよ!


「要するに、厄介事を背負っていると知ってもなお友達になると覚悟をなさったのですよ。その覚悟を、尊重なさらないのですか?」

「!?」


 目からうろこが落ちた気分です。

 確かにそうですわ。


「この際だから言いますけれど、お嬢様はもっと負担を周りに押し付けた方がいいですよ」

「そんな恥ずべき真似! 穂坂家の娘としてできません!」

「だから、相手の立場を認めて尊重しろって話になってるんですよ」


 返す言葉がありませんわ。

 ルミコーリアも友達とは持ちつ持たれつとおっしゃっておりましたもの。


「わざと押し付けるって話じゃないですよ。相手が負担を負ってもいいという覚悟を、認めてあげるんです」

「……難しいですわね」

「じゃあ、ほら、遊びに誘いましょう、セレネシアを」

「えっ!?」


 い、いきなりですの。

 そんな不躾な真似許されるのでしょうか。流石に失礼ではなくて?


「先ほどの用事の後は流石にまずいので、別日にしましょう」

「で、で、ですが!」

「ほらほら、友達として相手に負担を押し付ける練習ですよ」

「言い方!」


 挙句の果てに、やらないなら千恵の方から話をつけるですって!?

 それは駄目です、いけません! 友達との遊びの約束すら付き人にやってもらうのは、その、なんか違いますわ!


 かといって、いざ送ろうとすると文面が思い浮かびません。

 友達を遊びに誘うってどうすればいいんですの?

 ……ふと、思うのは過去のあれこれ。

 思えば、色んな方々を怒らせてきました。


『環ちゃんっていっつもそうだよね! 何もわかってない!』

『環ちゃん。本当にそれ言ってるの?』

『友達って、何なのか考えたことある?』


 彼女たちは、ひょっとすると、わたくしが彼女たちを傷つける覚悟がないことに腹を立てたのでしょうか。

 ああ、そうかもしれませんね。対等であろうとして、それぞれの身分や立場を考えてなかったかもしれません。

 今なら、お父様が一般家庭の人と友達になることがどういう意味を持つのかも理解できる気がします。


 財閥の娘と付き合いがあるとなれば、いらない気を使わせてしまったり、周囲の方々にあらぬことを言われてしまうこともあるでしょう。

 そういった負担を相手にかける覚悟があるのか、という事だったのでしょうね。

 あるいはわたくしの方を……いえ、こちらはどうでしょうか。お父様の事ですから、よくわかりません。


 わたくしは、認めなければなりません。

 誰一人として対等な立場の人などいないのだと。それぞれの生まれ、育ち、様々な要因で格差があります。

 大事なのは、それらを認識し、認めること。

 近いところからならば、千恵の立場を。ルミコーリアの立場を、クリムセリアの立場を、セレネシアの立場を。


「おや、思ったよりも早く書けたんですね」

「もう、千恵はわたくしのことを何だと思ってるんですか」

「それはもう、いつまで経っても手のかかる、愛しいお嬢様ですよ」


 今は、隣で微笑みかけてくれるこの子から。わたくしは少しずつ知っていきましょう。

 最終的には、きちんとできていると、わたくし自身を褒めてあげるために。


 スマホの画面をタッチして、セレネシアへチャットを送ります。

 もうチャットを送ることに恐怖は覚えません。

 傷つくことも、傷つける覚悟もできましたので。


『今度、じっくりとセレネシア自身のお話を聞かせてくださいませんか? ちょうど、良いカフェを知ったところなんです。ルミコーリアから教えてもらった、良いお店を』

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