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成人済み魔法少女@引退したい ~最強魔法少女は無自覚に人々を惹きつける~  作者: パンドラ
第二章 プリズシスタ編

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十三話目 魔法少女は弟子入りしたい

「そいつで終わりだポム!」

「ほいっと。いやあ、凄い数だったね」

「ルミコーリア、お疲れポム」


 今日の私は早速魔法少女モード。町中に凄い量の魔獣が溢れかえってしまったらしい。

 誰か一人の魔法少女が相手するのでは到底間に合わないから、たくさんの魔法少女が動員されている。

 私もとりあえず目についた魔獣を手当たり次第に叩いていたんだけど、ポムムから終わりの合図が出た。


 毎度の事だけど、妖精たちってどうやって魔人とか魔獣の事察知してるんだろう。魔力の残滓とか?

 私にも真似できないかな。


「あー、疲れた。久しぶりだね、ここまであっちこっち飛び回ったの」

「凄い活躍だポム。やっぱりルミコーリアは凄いポム」

「はいはい、おだてなくてもいいから」


 最近のポムムはやたらとおだててくる。

 弟子を作って辞める目標が現実味を帯びてきているから、辞めさせないために必死なんだろうな。

 絶対に今年中には辞めてやるからな、見てなよ。


「それじゃ、帰ろっか。他に残ってる魔獣の反応はないよね?」

「大丈夫だポム」

「ならよかった。さっさと帰って、大学の課題を――」

「――そこのあなた、お待ちくださいませ!」


 声がした。振り返れば、そこには仁王立ちした一人の魔法少女の姿。

 ……知らない子、だよね? 前に会ったことあったかな? 全然記憶にない。


「えと……なんでしょうか」

「あなた、その姿ルミコーリアで間違いありませんわね!」

「わね」


 なんか、特徴的な語尾な子だね。現代日本ではあまりみないような。


「な、何か文句がおありですの!」

「いやいやいや。ごめんごめんごめん。それで、私はルミコーリアだよ。何か用?」


 衣装を見ると、ゴージャスな子だねぇ。金ぴかで煌びやかな子だ。

 そのイメージでこの口調なのかな?


「わたくしを弟子にしてくださいませ!」

「へ?」

「ポム!?」


 で、弟子入り希望者? なんで唐突に!


「クリムセリアのインタビュー見ましたわ! あなたに師事すれば、劇的に強くなれると」

「劇的に……かどうかはわからないけれど。クリムセリアが強くなれたのは、クリムセリア本人が頑張ったからだよ。私はその手助けをしただけ」

「おお……っ。本当に師匠っぽいことをおっしゃってますわ!」


 ううん。どうしたものか。

 あんまりここで立ち話をするのもなんだから、もしよかったら変身を解いてゆっくりと話し合いたいんだけど……。


「とりあえず、場所移さない? 許してくれるなら、変身も解いてさ」

「変身を解いて! そんな、本来の姿も見せてくださるほど気を許してくださるのですね! 感激です!」


 あっ、まあ迂闊と言えば迂闊か。でも、魔法少女に悪い子は滅多にいないからね。

 最悪魔法少女名を聞いて魔法少女アプリでやり取りしてもいいけど、こういう子には面と向かって対応したいよね。


「改めて、私はルミコーリア。あなたは?」

「プリズシスタですわ。よろしくお願いします、ルミコーリア」


 一度握手を交わして、周囲の様子を一度窺って、人目がないことを確認してから私たちはまた場所を移した。

 途中で、変身を解いて、自己紹介もしておく。

 プリズシスタの本名は穂坂(ほさき)(たまき)って言うらしい。今年で十三歳。魔法少女二年目って感じだね。


 芹香ちゃんの話を聞いた時と同じカフェに場所を移して、じっくりと話を聞くことにした。

 このカフェは政府提携店だから、外部に情報が洩れることはあんまりない、はず。

 念のため、奥に用意してある個室に案内してもらうことにした。その、この子があんまり声を抑えられなさそうなのもあるし。


「それで、私に弟子入りしたいってことだったけれど、なんでそうなったの?」

「わたくしが弱いからですわ!」


 あっ、変身してなくてもですわ口調なんだ。キャラ付けとかじゃないんだね。

 口にするとややこしくなりそうだから言わないけれど。


「弱い? っていうと」

「魔人に勝てた試しがありませんの!」

「ご、ごめん。ちょっと待ってね?」


 すっごい悔しそうに語ってくれる傍らで、私は本当か調べるためにネットでプリズシスタの事を検索する。

 大体の魔法少女はネットに情報が出てる。そうでなくても、魔法少女アプリを見れば何となくその子の事は分かる。


「わぁ……」


 思わず声が出てしまった。なにせ、出てきたのはプリズシスタ敗北日記という記事だったのだから。

 日記? 日記が付けられるぐらい負けてるの? 今も無事で本当に良かった。色々と率直な感想はあるけれど、全てのみ込む。


「な、なんで環ちゃんは魔法少女になろうと思ったの?」

「わたくしがやるべき! だったからですわ!」

「べき論の子かぁ……」


 魔法少女になる動機には幾つか種類があるけれど、べき論の子は結構危ない。

 だって、自分が魔法少女になって人々を守らないといけない、だなんて考え私は普通だとは思わない。

 普通の子は、危ないことに自分から近づくことなんてしないんだから。


 私の経験上、こういうべき論の子は、家庭の事情が多分に含まれてるから、あんまり踏み込み過ぎるのも良くない。

 ここは、弟子入りを受けるかどうかだけ考えよう。


「はっきり言って、私は特別な魔法少女でもなんでもない。みんなよりも少しばかり長く続けてるから知識量は多いけれども、弟子入りしたとして、絶対に強くなれる保証はないよ」

「それでも! わずかでも可能性があるならば、わたくしはやるべきなのですわ!」


 ドンと机に手を突いて、前のめりになりながら力説される。

 思わず少しだけ顔を引いてしまった。


「今のままではダメですの。今のままでは、魔法少女としての役割を果たせていない、役立たずですわ!」

「そこまで言わなくても……。他の子が来るまで魔人を足止めして、被害を抑えるのも立派な仕事だよ」

「それでも!」


 環ちゃんは前のめりになったまま、もう一度強く机を叩く。


「わたくしが夢見た魔法少女は、そんな根性なしではありませんでしたわ」

「環ちゃん……」


 べき論の子だから、で勘違いしていた。この子も、魔法少女に夢見ていた子の一人なんだ。

 あの戦う姿に、みんなを守る姿に。

 なら、私が返すべき答えは一つだよね。


「……わかった。弟子、っていうとくすぐったいけれど、鍛えてあげる」

「本当ですの!」

「うん。強くなれる保証はできないけれど、私ができる限りのことはしてあげる」


 私のこの一言で、環ちゃんの目はまんまると大きく見開かれ、爛々と輝いている。

 本当に嬉しいんだろうなって一目で分かる表情に、自然とこちらも笑顔になっちゃう。

 っと、ここでスマホに連絡が来た。芹香ちゃんかな? 芹香ちゃんだった。

 どこにいるかって連絡だったから、いつものカフェの奥の部屋って答える。


「弟子、弟子ですわ! お師匠様! いつから特訓は始まりますの!」

「学校とかあるから、次の休みの日かな。魔法少女のために用意された特訓場に行こう」


 今週の土曜日も講義あった気がするけれど……。彩花に頼むかな。


「……美羽さーん! 頑張りましたよ、褒めてくだ――」

「あっ、芹香ちゃん」

「おおっ! この方はクリムセリアなんですわね!」


 さっき場所を教えたばかりなのに、もう来るだなんて早いなぁ。

 なんて思ってたら、私たち二人を見て芹香ちゃんは固まってしまった。


「み、美羽さん。そ、そちらの方は一体……?」

「ん? この子は穂坂環ちゃんで、魔法少女プリズシスタ。新しく私の弟子になったの」

「はい、弟子になりましたわ! よろしくお願いしますわ、先輩」

「私以外の弟子がさっそく……」


 あ、あれ? なんかちょっと険悪なムード?

 私としては、仲良くしてほしいなーって思うんですけれども。


「プリズシスタ……。ああ、全戦全敗の」

「その二つ名で呼ばないでくださいませ!」

「芹香ちゃんは知ってるの?」


 私に名前を呼ばれたからか、こちらを見て途端に笑顔になる芹香ちゃん。

 最近ちょっと怖いよ……? 何か凄い圧を感じる時があるの。


「一つ上の先輩に、ずっと負けてる魔法少女がいるって話題になってたことがあるんです。まさかお会いすることになるとは思いませんでしたけれど」

「ふ、ふーんですわ。華々しい活躍ばかりフォーカスされているクリムセリアには、無縁の存在で悪かったですわね!」

「まあまあ、二人とも。これからは二人とも私の弟子って扱いになるんだから、仲良く、ね?」


 二人は顔を見合わせて、険しい顔をした後にそっぽを向き合ってしまった。

 あ、あれぇ? これ、鍛える以前に人間関係で前途多難だったりする?

 今から少し気が重くなりそう。


「……師匠のためですわ。クリムセリア、ここは姉弟子として立てて差し上げます」

「なに、急に」

「察してくださいませ!? 一旦仲直りしましょうって話ですわ」


 おっ、環ちゃんが手を差し出した。芹香ちゃんはそれをじっと見てる。

 こっちの様子を伺うようにちらりと見てきたので、笑顔でうんうんって頷く。


「……わかりました。美羽さんに嫌われたくはないですから」


 こうやって、先行き不安な師弟関係が広がった。

 どうなるかなぁ。師匠って弟子の人間関係も管理しないとなんだね。思っていた以上に大変だぁ。

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