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早朝の演習場

騎士の朝は早い。


つい先日二十を迎えたばかりのディベア・ノックマンは日の昇る前には城下の家を出た。騎士団ではかなり若い方で、今が頑張り時である。

一般的には十六で騎士になり、十八から実力者は王居内の騎士団に配属される。つまりは近衛騎士だ。ディベア同期たちは多くが地方の詰所に送られたり、貴族の領地へと配属された。


一般的に、領主は自領を守るために兵を持つことが許されている。しかし、それらは国に申請し、王によって配属された騎士数名を加えることが絶対である。そのため、傲らない真面目で友好的な若者が多く送られていた。平民の若者の方が住居を変えることが容易いのも一つの理由ではあるが、まぁ名誉なものである。


だが、ディベアはずっと近衛騎士になりたかった。

騎士団に必要な戦力として実力を示し続ければ、王家も手放せなくなる。実際、崩御した後が面倒なのも皆承知だ。だからディベアは誰よりも早く騎士棟(ここ)へ来て鍛錬する。


騎士棟と魔術師棟は隣接しており、入口こそ共用であるが、互いの演習場などの土地は反対側に広がっている。


日が昇り始め、事務官が出勤してくる頃には騎士も半分以上揃っている。この時間に夜勤騎士との交代だ。


そして、ディベアはこの時間に楽しみにしていることがある。


「リアっ!」


日に照らされた髪はまるで金色に見える。眩しそうに手で影を作って、こちらを見つけるときらきらと瞳を輝かせる。


「テディさん!!」


「こら。テディじゃねぇよ、ディベアだって」


嬉しそうに駆け寄ってそうあだ名を叫ぶ二つ下の少女は、ディベアが妹のように大切にしている従姉妹である。自身の鞄に付いているテディベアの小さなキーホルダーも、彼女に贈られたものである。


「今日も早いんだな。…ノアはもうずっと前に来てたけど」


「挨拶はしたの?」


「こっちなんか見向きもしなかったわ、ばーか」


彼女の先輩である王家直属魔術師には、恩がある。再度、この話が掘り起こされることは無いのだろうが、ディベアも彼も、一生忘れることはない。


「それじゃ、今日も頑張ってね!テディ!」


大きく腕を振って去っていくその姿は、年相応の女の子に見える。


「…よくここまで元に戻したよなぁ、あの人」


思わず口から発せられたその言葉は、誰の耳に届くことなく空気に馴染んでいった。

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