G-3 その男に近づくな
土煙から現れた男達、神成逢魔と火の玉のゼルはゆっくりと奴隷の雇い主に近づく。
雇い主「な、なにをしている!侵入者だ!奴隷共、早くコイツを殺せ!でないと給料はないぞ!!」
奴隷たちの唯一のライフライン、雀の涙ほどの給料をチラつかされ奴隷たちはつるはしを持ち逢魔に走っていく。
逢魔「はぁ・・・。」
奴隷は涙を浮かべながら逢魔につるはしを振りかぶる。
この奴隷には地下に養うべき家族がいるのだ。
いま給料を断たれれば、その家族たちは飢え死にしてしまう。
逢魔はその奴隷たちの頭を容赦なく拳で打ち抜いた。
容赦なく、一撃で。
雇い主「・・・・・・は?」
攻撃を命令した雇い主でさえも困惑する。
逢魔「何困惑してんだ?こいつは俺の命を狙ってきたんだぜ?だったら殺すのは当然だ、命を狙うならそれ相応のモノを賭けてねぇとな。」
逢魔は次々と奴隷たちを殺していく。
立ち向かってくるもの、たまたま近くにいただけのものも関係なくだ。
逢魔「まぁ、どちみち巻き込まれて死ぬけどな。」
血肉が散らばり、女奴隷の足元へほかの奴隷の頭が転がる。
雇い主「い、イかれてる・・・・・・。」
そこへノワール帝国騎士団が侵入者をかぎつけ地下へやってきた。
雇い主「や、やっときたか!早く侵入者を殺せ!作業が数分遅れるだけでどれだけの金が動くか知っているのか!!」
騎士団たちはいっせいに剣を構える。
騎士団の剣先から魔力の渦がこぼれ、大気を震わせる。
騎士団「・・・・・・撃てぇぇぇぇぇ!!」
剣から放たれた聖属性の魔術弾が逢魔を襲う。
騎士団に与えられた剣はノワール鉱石で作られており、魔術を剣に伝導させ放つことができる。
それだけではない、大気中の微量な魔力を吸い上げ魔術の威力を増大させるのだ。
逢魔「おいおい勘弁しろよ、俺は聖属性がアレルギーなんだよ。」
魔力弾はただならぬ威力で逢魔へ着弾し、爆発を起こす。
周囲をいやす聖属性が負傷した奴隷たちを回復する。
騎士団たちも貴重な財源である奴隷という資産を手放したくはないのだ。
一方、魔力弾を受け止めた逢魔の腕は大きな傷を残した。
逢魔の家系、神成一族は聖属性を受け付けない体質なのだ。
逢魔「おい、死にたくないやつは隅っこで震えてな。」
傷だらけの腕が突如変貌を開始する。
ドス黒い暗黒の鱗が現れ、周囲の空気を凍り付かせる。
その異様な雰囲気に女奴隷も、騎士団も呼吸することすら忘れて立ち尽くした。
逢魔「安心しろよ、俺は無意味な虐殺はしねぇ。巻き込まれなけりゃいいだけだ。」
その言葉を聞いて女奴隷は全速力で走りだした。
生命の本能が騒ぎ立てている、『ここにいたら死ぬ』と。
逢魔「さぁ、【逢魔之刻】だ。」