表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/74

第74話 吾輩は

 吾輩は蝿である。名前はアルヴィス。

 遥か昔に生まれたような、ついさっき生まれたような、よくわからぬ。

 吾輩は羽を動かし、空を飛ぶ。

 吾輩は蝿でありながら自分の羽で飛ぶのは初めての経験だ。とても優雅な気分だ。


 ワガハイハ、ハエデアル。ナマエハアッタハズダガワスレタ。

 ワガハイハ、タイソウナユメヲイダイテイタ。ソレガナニヤラ、オモイダセヌ。

 ナニカニサソワレルママ、ワガハイハソラヲトブ。

 ソウダ、ワガハイニハゴシュジンサマガイタ。ワガハイハゴシュジンサマノモトへイカネバナラヌ。


 わがはいははえである。なまえはまだない。

 くそだめでぶーんぶーんとさわいでいたこといがいおぼえていない。

 なにかにさそわれるまま、わがはいはだれかのゆびのうえでとまった。

 ぷち、とおとがきこえた。



 わがはいがつぶれたおとだった。



 --- 



 “死の宣告(アスタロス)”の矢で()られた者はベルゼブブの眷属、蝿へと()()()()

 “死の宣告(アスタロス)”を受けたアルヴィスは蝿の姿となり、ランマの命令に従うままランマの人差し指に止まり、親指を押し付けられて潰された。


 こうして、戦いは終わった。


「不思議だな」

『なにがだい?』

「お前とはずっと前から一緒だった気がする」

『うん。だってボクぁキミの側にいたから。あの〈ブリック・レーン〉に居た行商人、彼からボクのサモンコインを受け取った時、ボクぁキミの体内に因子を残したんだ』


 転生術が解け、蝿が集まり、1人の美女の姿を取る。真っ暗な瞳の女性だ。


『改めて自己紹介するね。ボクぁ蝿の王ベルゼブブ、暴食を司る悪魔だ』

「……なんで俺に力を貸してくれたんだ?」

『キミにボクのある願いを果たしてもらうためさ。きっと、ボクのサモンコインは返却されちゃうけど、ボクの因子はキミの中に残せる。詳しい話はまた後にしよう』


 ランマはグラ、とよろめき、その場に膝をつく。


「……つっ!?」

『体力も魔力も万全だけど、意識の疲労まではボクぁ癒せない。初めてボクと完全同調したんだ。キミの意識はもう限界だろう』

「ウノは、ウノはどうなった?」

『さぁね。ボクぁ全力を尽くした。後は彼の意思の力に()るかな』


 ランマの調子に比例して、ベルゼブブの体が透けていく。


『そろそろボクを顕現するのも限界かな』

「……ベルゼ。腹はいっぱいになったか?」


 ベルゼブブは顔を赤くして笑う。


『前菜を食べただけで満足はできないよ。ボクが喰いたいのはもっと別にある。ボクにとってのデザート、()を食べるまで――ボクの腹が満たされることはない』


 ベルゼはそう言い残して消失し、真っ白なサモンコインとなった。

 ランマは急激な眠気に襲われ、その場で倒れるように眠った。


 破戒竜、眷属、魔法士、堕天使。約1000体を全て討伐・無力化し、後に千魔決戦と呼ばれる戦いは終結した。

【読者の皆様へ】


この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」

と思われましたらページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださると自信になります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『リミットリング』第一巻発売中! 素晴らしいイラストの数々、必見ですよ!( ´艸`)

https://img1.mitemin.net/2s/cm/1y4577nyd7rs9fwfgxni28kdcsfz_hk3_1d0_1zz_1rlkb.jpg

※クリックするとAmazon販売ページに飛びます。 渾身の一作『スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~ 』もよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[一言] ドヤ顔で「流石の年の功」とかほざいている読者がいたんですね。 とんだ勘違い野郎で恥ずかしいですね! ………悲しいなぁorz
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ