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第64話 馬鹿と馬鹿

「「……!?」」


 ランマの病室にて。

 ランマとミカヅキは巨大な魔力が多数発生したのを感じた。

 ミカヅキは窓から外を覗く。

 天高く――雲より上から、大量の竜と堕天使が降って湧いてきた。


「始めやがったな……!」

「尋常じゃねぇぞこの数!! ミカヅキさん、こんなところでジッとしてる場合じゃ……」


 ガタン! と病室の扉が勢いよく開かれる。


「ランマ君!」


 汗ダラダラのアムリッタが病室に入ってきた。

 ただならぬ様子だ。ランマはアムリッタの方を向く。


「アムリッタ! どうした!?」


 アムリッタは今にも泣きそうな顔だ。

 アムリッタはランマを囲う結界に手をつき、


「エマちゃんが! アルヴィスって人に攫われて……! ランマ君を連れてこいって!!」

「エマが……!?」


 アルヴィスの狙いをランマは一瞬で察する。


「あの野郎……!! 場所はどこだ!?」

「〈トラファルガー広場〉だって……」

「行かさねぇぞ、ランマ」


 ミカヅキは窓から目を離さずに言う。


「お前をこの病室から出すなっつー命令だからな……」

「――コウリュウ(7番)


 ザン!!!

 ランマは床と結界を斬り裂き、下の階へ行った。その後でミカヅキはベッドの方を振り返る。


「あーあ、行っちまった。任務失敗だ」


 ミカヅキはわざとらしく笑う。


「……監視は終わりだな」



 --- 



 街を走るランマ。

 首を振り、周囲を見渡す。


(クソ! 〈トラファルガー広場〉ってどこだ!?)


 そこらの住民に聞きたいが全員パニックでそれどころじゃない。

 破戒竜が、堕天使が、眷属が、街を荒らしている。


「いでっ!?」


 ランマは透明な壁にぶつかり、足を止めた。


「この結界は――!」

「そこまでだ、ランマちゃん」


 赤毛の結界士が立ちふさがる。


「ウノ……!」

「ギネ君の指示でな。ミカヅキの旦那はなんだかんだ言ってランマちゃんを逃がしそうだから、俺にも見張りを頼みたいってよ。案の錠だったな」


 ウノは真剣な顔で、


「アルヴィスのところへ行く気か?」

「当たり前だ!」

「アルヴィスって男がどれだけやばいか、お前だってわかってんだろ? 勝ち目無いぜ」

「……だからってエマを見捨てるわけにはいかねぇんだ。俺にはアイツを助ける義務がある!」

「――死ぬぜ。間違いなくな。いや、死ねればまだマシだ。アイツらはお前を操って何かやべぇことをさせようとしている。例えば虐殺とかな」

「……」

「利口になれよランマちゃん。怖いもの知らずにもほどがあるぜ」


 ランマは目を泳がせ、震えた唇で、


「――怖いもの知らず? なに言ってんだ。めっちゃこえぇよ? アイツに立ち向かうの」

「え……?」

「元々俺はそんな勇気ある方じゃない。結構なビビりだよ。勇者じゃない」

「だったらなんで……」

「ただなぁ、ここで何もしなかったらきっと、一生後悔すると思う。心のどこかにさ、ずっとモヤモヤが残ると思うんだ。死ぬその時も、自分の人生に誇りを持てないまま死んじまう気がする」


 ウノの心にその言葉は刺さった。

 ウノは過去に仲間を見捨て、そして今も――モヤモヤを残したまま生きている。


「助けに行くのは怖いけど、逃げる方がよっぽど怖い。俺は、自分の人生を恥じたまま死ぬことがこの世で最も恐ろしいんだ」


 ランマは震えを止め、決意の宿った目でウノを見る。


「自分を嫌いなまま100年生きるより、自分を好きでいられるこの一瞬を選びたい。例え今日死んでも、嫌いな自分で明日生きるよりマシだ。俺はそういう馬鹿なんだよ……心配すんな。アイツらの思い通りにはならない。いざとなった自分で命を()つさ」


 ウノは結界を解き、大きくため息をついた。


「オー馬鹿だねぇ! ほんっと、困った男だよチミは!!」


 大げさな手振りでウノは言う。


「そんで俺は……お前に(まさ)る大馬鹿だよ! お前の青臭い言葉にフォーリンラブしちまったんだからなぁ」

「ウノ……」

「〈トラファルガー広場〉、案内してやるよ」

「場所知ってるのか?」

「ちょうど昨日そこでデートしたんだ。彼女がどうしても行きてぇって言うからよ。女遊びもたまには役に立つだろう?」

「……今度、俺にその彼女紹介しろよ。礼を言わなくちゃな」

「あ~……それがなぁ、トイレ行ったっきり帰ってこねぇんだよなぁ。長いトイレだこと。きっと便秘だったんだろうなぁ~」


 ランマとウノは共に笑う。


「そんじゃ、その彼女も助けに行かないとな。きっとまだトイレの中に居るぜ」

「そうだな。待ってろよ、俺のバニーちゃん!」


 2人は走り出す。

 目指すはエマとアルヴィスが待つ〈トラファルガー広場〉だ。

読んで頂きありがとうございました。

この小説を読んで、わずかでも面白いと思っていただけたら評価とブクマといいねを入れてくれると嬉しいです。とてもパワーになります。

よろしくお願いします。

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