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第62話 王と玉

 ミカヅキはワンハンドレッドを睨みつける。


「……ワンハンドレッド……!」

「勝手に飛び出しちゃダメですよ、ミカヅキさん」


 スウェンが諭す。


「飛び出さねぇよ」

「怒っちゃダメですよ。冷静に」

「怒ってねぇよ!」

「……怒ってますわ」


 ウノはランマの方を振り返り、


「お待たせランマちゃん♪」

「ウノ! お前らいつからここに……」

「最初からさ。お前らが教会に入った時にはもう居たぜ」

「……だったらもっと早く助けてくれても良かったんじゃねぇのか」

「文句はギネ君に言ってくれよ。相手の狙いが絞れるまでは泳がせるっつーんだからよ」


 ギネスはアルヴィスと視線を交錯させる。


「……ふむ。誘われたのはこちらであったか」

「アンタの調査に行ったサポーターからアンタが〈カーディナル〉に居ないと聞いてね。狙いはランマだとわかっていたし、十中八九ランマを狙って〈ロンドン〉に来てると思った。後は簡単さ。アンタの内通者にランマがこの教会に来ると流す。俺たちは教会でアンタらが来るのを待つのみ」

「罠に掛けた割には戦力が少ないように見えるが?」

「さすがに他の師団を動かすには証拠が足りなかった。信用無いんでね、俺たち第七師団はよ」


 ギネスはステラをウノに預け、手を二度叩く。


「さぁどうする? ここでやり合うか?」

「まさか、その戦力で俺たちに勝てるとでも思っているのか?」

「無理だろうな。ここでぶつかったら第七師団は全滅するだろう。だが、他の射堕天が来るまでは時間を稼げるぜ。そうなりゃ……」

「こちらも全滅するか……いいだろう。ムカつくが、お前の思惑通りに動いてやる」


 アルヴィス、ガルード、ワンハンドレッドは竜の背に乗り月へ向かって飛翔する。


「――またなランマ。次は取る」


 ランマはアルヴィスを睨みつける。


「ギネスさん! 追わねぇのかよ!」

「今日のとこはこれでいい。敵の狙いと主戦力を確定させられただけで十分だ」


 ランマはガクンと膝を落とす。


「――くそっ!」

「……無理すんな。ステラほどじゃないにしろ、お前も限界だろうよ」


 ランマとステラは入院。

 他のメンバーたちは対アルヴィスに向かって動き出した。

 


 ---



 後日。

 自在天の名のもと、第一~第六師団長と第七副師団長ギネス(ヒルスの代理)が〈ウェストミンスター宮殿〉の一室に招集された。

 自在天の護衛のため、アラヤシキ=ザイゼンも部屋の隅に居る(眠っている)。


「諸君、緊急事態だ」


 自在天は褐色肌で、銀マスクを付けた男性だ。


「アルヴィス=マクスウェルが正式に宣戦布告してきた」


 自在天は手紙を見せる。差出人はアルヴィスだ。


「時間は不明。狙いは〈射堕天サークル〉と書いてあるが……ギネスの話を聞くに、狙いは第七師団所属のランマ=ヒグラシ。及びその召喚陣にあると見て間違いない。ランマは外に逃がすことはせず、〈ロンドン〉に置き、ここ〈ロンドン〉でアルヴィスを迎え撃つ。アルヴィスは召喚士の最高峰……とは言え、今はもう70を超えたお爺ちゃんだ。我々の総力をもってすれば負ける相手ではない」


 自在天は手紙を握りつぶす。


「自在天様」


 ギネスが口を開く。


「住民の避難はどうなさるつもりで? 〈ロンドン〉が戦場になる以上、一般市民は外に逃がすべきでは?」

「いいや、事が起きるまでは放置でいこう。〈ロンドン〉は周囲が海に囲まれた街、〈ロンドン〉住民全員を外に出すにはかなりの数の船が必要になる。全員を短い時間で避難させるのは不可能。一部を逃がすことはできるだろうけど、選民紛いのことはしたくないしね。下手に動かさない方がいい」

「注意喚起は?」

「しないよ。ありのまま事を伝えれば混乱を起こし、無駄な死者が出るだろう。万が一アルヴィスが来なかった場合、あまりに滑稽な一手になる。もう一度言うよ? 市民は事が起きるまで放置だ」

「……わかりました」


 ギネスは納得しきれていないようだが、自在天に対する反論も思いつかなかったゆえ飲み込んだ。


「さぁ気合入れていこう。久しぶりの戦争だ」



 ---  



 薄暗い地下。

 〈ロンドン〉のとある地下施設にアルヴィス一派は居た。


「第三階位3体、養殖した第四階位787体、傀儡化及び眷属化した魔法士129名、破戒竜82体……以上がこちらの戦力です」


 ガルードが報告する。

 アルヴィスはソファーに座り、上裸で、目の前の大量の料理を口に運んでいた。

 アルヴィスは骨付き肉を豪快に喰い破る。その体はつい先日までのやせ細った老人体型と打って変わり、ゴリラのように筋肉がついていた。身長190センチの巨漢の体になっていた。これこそが本来のアルヴィスの体型だ。これまでのやせ細った姿は周囲の警戒を弱めるための仮初の姿に過ぎない。


「――十分」


 アルヴィスは大きくげっぷする。


「射堕天サークルで警戒すべき人材は7人。自在天、第一師団長、第二師団長、第四師団長、第七師団長、そして第七師団のザイゼンとギネスだ。自在天は国宝級を失い戦力半減、第七師団長は外に任務に出ている。ザイゼンは自在天の護衛で前線には出れない。第四師団長は病院から離れられんだろう。第一師団長と第二師団長は目先に堕天使をチラつかせれば功績を欲しがって飛びつくはずだ」

「となると、自由に動けるのは……」

「ギネス=ウォーカーのみ。コイツの相手はお前に任せるぞ、ガルード」

「承知しました」

「話は終わりましたカ?」


 アルヴィスの背後に居るワンハンドレッドが言う。


「そう焦るなソラビト。唯一、自らの意思で我らについてきた堕天使よ」


 アルヴィスはワンハンドレッドに目を向ける。


「……貴様の願いを聞いた時は驚いたよ。まさか人に憧れる堕天使が居るとはな。堕天使はすべて人間を見下していると思っていた」

「見下していますヨ。人は醜ク、下劣デ、すぐ感情や理想に囚われル。だからこソ……憧れるのでス」

「理解できんな」


 アルヴィスは立ち上がり、マントを羽織る。


「もう行くのですか? 作戦の開始までまだ時間がありますが……」

「餌を取りに行く。ランマ=ヒグラシをおびき寄せる餌を」


 アルヴィスはにやりと笑う。


「――エマ=ランバードを」

読んで頂きありがとうございました。

この小説を読んで、わずかでも面白いと思っていただけたら評価とブクマといいねを入れてくれると嬉しいです。とてもパワーになります。

よろしくお願いします。

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