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第54話 過去と現在

 ウノはリュークを連れて、人気のない通路まで戻った。


「……ここまでくりゃ安心だろ」

「すいません……とんだ足手まといでさぁ」


 リュークはかなり疲弊している。すぐに治療を受けた方がいい状態だ。


(リューさんが心配だ。ここはもう、離脱していいよな? 戻って他のメンバーに頼った方がいいよな?)


 頭の中で言い訳を絞り、離脱を選択をしようとした時、


『――また逃げるの?』


 少女の声が背後から聞こえた。


『おにいちゃん』


 ウノは振り返って、彼女を見る。

 赤毛の少女だ。リュークの目には少女は映っていない。ウノの瞳にしか彼女の姿は映ってない。


「……ラミー……」


 ウノの脳裏に浮かぶは、ある日の記憶。

 全身に釘を刺した男の姿をした堕天使が、団員を蹂躙する記憶。

 それを、透明な箱の中で見ていた自分。

 最愛の妹が矢に射抜かれ、眷属にされる映像。


「――くそったれ……!」

「自分は大丈夫です」


 リュークはウノを安心させるために笑う。


「リューさん……」

「お二人のところへ、行ってあげてください」


 ウノはリュークの言葉を受けて、ランマ達の居る方へ走り出した。



 ---



 ウノはリュークと離脱。

 ステラは生死不明、リタイアの可能性濃厚。

 ランマは1人でケネディに向かう。


「質問には答えてくれないのか!?」

(んな余裕があるか馬鹿野郎!!)


 警戒するは当然けん玉。

 ランマは独特の軌道で迫るけん玉をすんでのところで躱す。


(これだ! とにかくこれがやばい!)


 ランマが距離を取ろうとすると、すかさずケネディは追いかける。

 背中を向けて逃げようとすれば反転の間にやられる。バックステップなら逃げきれない。

 距離を空けてコウリュウのリーチを活かすことができない。


「……お前! ホントに800番台かよ!」

「この数字は人間界に降り立った時の順位に過ぎない。その後の成長は含まれんのだよ!」


 信仰が吹き溜まりやすい闘技場、そこで1年間力を蓄えたことでケネディは階位以上の能力を有していた。


「……気を取られ過ぎだな」


 ケネディはけん玉を囮に蹴りをランマの腹にたたき込む。


「がっ……!」


 ただの蹴りが芯まで響く。追撃に来ようとするケネディを、ランマは薙ぎ払いでけん制する。


「君1人では私には敵わんよ」

「1人? 俺はずっと3対1で戦ってるつもりだぜ」

「わかっているだろう。女はもう立ち上がれん、アレを受けきれるだけの体力はない。赤毛の男は戻ってはこない。アレは……負け犬だ」

「……」

「奴のことは知っているよ。堕天使に奇術団を襲われ、自分1人だけ隠れて生き延びた腰抜けだ。奴は他より己を優先する。そんな男がこのような死地に戻ってくるはずがない」


――『ウノを信頼し過ぎるなよ』


 ジェイドの言葉をランマは思い出し、笑い飛ばす。


「どいつもこいつも、アイツの()()ばかり語りやがる……」


 ランマが思い出したのはカラス頭の堕天使との戦い。

 カラス頭の堕天使が技を繰り出した時、ウノはランマとステラを優先して結界で囲い、自分は攻撃を受けた。


(アレは腰抜けの、負け犬ができる選択じゃない)


 これが、()()ウノを見てきたランマの答え。


「確かにアイツは女癖は悪いしサボり癖はあるしいけ好かない野郎だが……」

「!?」

「――信頼はできる男だ」


 ランマの姿が突如として消えた。


「奴の結界か!」

「おにさんこちら♪」


 背後より聞こえたウノの声に反応し、ケネディは振り向く。それが罠だと気付くにはコンマ1秒遅かった。

 ウノの結界の中から剣を振り、ランマはケネディの左腕を斬り落とした。ウノの方へ視線誘導されたことで、ケネディは攻撃に反応できなかった。


「ぬぅ!?」

「ナイスランマちゃん♪」

「……そっちこそナイスだよ、ウノちゃん」

読んで頂きありがとうございました。

この小説を読んで、わずかでも面白いと思っていただけたら評価とブクマといいねを入れてくれると嬉しいです。とてもパワーになります。

よろしくお願いします。

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