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第51話 開演

 待合室の前、ウノが黒服の男にチケットを渡す。


「“トランプ演芸団”の御三方ですね。まず持ち物検査をさせていただきます」

「ああ、じゃあ……」


 ランマが両手を挙げようとすると、


「いえ、そのままで大丈夫です」


 黒服の足元に魔法陣が浮かぶ。

 円形で、中央に目のようなマークがある魔法陣だ。

 魔法陣はランマの足元まで広がる。


「……鑑定。武器の類はなし。サモンコインは1枚、下級悪魔ミミックのサモンコインと断定。危険度Eマイナス、問題なし」


 魔法陣はウノ、ステラの足元まで広がっていく。


(鑑定陣か。リューさんが天鏡を置いていかせたのはこのためか。もしも天鏡を鑑定されて、どこぞにいる堕天使にバレたら俺たちが堕天使目当てに潜入したってバレるもんな……)


 鑑定陣は陣の上に乗った物体や、陣の上空にある物体を鑑定する。対象の材質や内部構造まで隅々まで術者は知ることができる。極めた者なら対象の年齢や体重、胃の内容物までわかるだろう。


 3人の鑑定が終わる。


「御三方問題なしですね。どうぞ中へ」


 ランマ達は待合室に入る。

 待合室には他にもマジシャンや曲芸師が多く居た。それぞれが芸を磨いている。


「おい、あのウサ耳……もしかして」

「ああ、間違いねぇ。ウノ=トランプだ。レッドラヴィット奇術団の頭領、赤兎(あかうさぎ)のウノ」


 ウノが視線を集める。


「お前、もしかして結構有名人なのか」

「まぁな」


 ウノはどこかばつの悪そうな顔だ。


「ウノ! ウノじゃないか!」


 男が1人、ウノに寄ってくる。

 ウノは男を視界に収めると嬉しそうに笑った。


「……ジェイド! お前、〈ロンドン〉に居たのか!?」

「こっちのセリフだよ頭領。マジシャンは辞めたって聞いてたけど、なんだよ辞めてねぇんじゃん!」


 ウノの知り合いのようだ。


「まぁそうだよな、お前ぐらいのマジックの腕があって辞めるわけないよな! お前がマジシャンを辞めてなくて、()()()()も喜んでるだろうよ」

「……そうかね」

「ウノさん、この人はどちら様ですか?」


 ステラが聞く。


「ジェイド=シリウス。元々俺の奇術団に所属していたマジシャンだ」

「アンタらはウノの奇術団のメンバーか。大変だろコイツ、女癖は悪いしサボり癖はあるしチキンだし」

「確かに」

「そうですね」

「ちょっとは否定してくれよランマちゃ~ん、ステラちゃま~」


 日頃の行いの賜物である。


「今日は久々に同じステージに立てるってことか。楽しみだな。じゃあなウノ! 終わったら酒でも飲もうぜ」

「ああ」


 ジェイドは自分の奇術団の元へ帰っていく。


「……はぁーあ、マジシャンを辞めなくて喜んでるだろう、か。じゃあ今アイツらは悲しんでるのかねぇ」

「ウノ?」

「なんでもねぇ。練習始めようぜ。俺と同じ舞台に立つんだ、中途半端は許さねぇぞ」


 そう語るウノの目はいつになく真剣だった。

 マジシャンとしてのプライド、エンターテイナーとしてのプライドがその両目には宿っている。


「客目を引けば必ず運営は俺たちにアプローチしてくる。専属の曲芸師にするためにな」

「……そうすりゃ仕事がしやすくなるか」

「そういうことさ」


 それぞれが個性を活かした芸の練習をする。

 夕陽が消え、月が空を飾る。

 夜の部の前座、ランマ達のステージが始まろうとしていた。



 --- 



「レディース、アンド、ジェントルメン! お待たせしました! 〈バトル・ホール〉開場一周年記念の大祭りの時間です!」


 ステージの上、マイクを手に司会者が観客を沸かせる。


「まずは我々のオーナー……ケネディ=ディズバーグの登場だぁ!!」


 紹介され、ステージに上がったのはすべての歯が金歯の男。

 身長2メートルはある。筋肉隆々で、着ている白スーツははち切れそうだ。


「今宵は我が〈バトル・ホール〉の一周年パーティーにお集まりいただき誠に感謝――なーんて、かたっ苦しい挨拶は抜きにしよう! 漢の熱き戦いを! 情欲駆り立てるポールダンスを! 奇想天外なサーカスショーを早く見たいだろう!!」


 ケネディ! ケネディ! と歓声が溢れる。


「始めよう諸君! 足の裏から脳髄まで痙攣するようなぶっ飛んだパーティーをなぁ! ここが我々の――天国だ!!!」


 オーナーの檄で、さらに観客は盛り上がる。

 その様子を袖で見てたランマはあまりの会場の熱気に、暑くもないのに汗をかいた。


「あのオーナー、盛り上げるのうまいな」

「これだけ会場を温めてくれると演者としては嬉しい限りだぜ。つーか、ステラちゃまはまだ来ねぇのか?」

「衣装着るのに手間取ってるんだろ」

「いや、確実に俺たちのより着るの楽な部類だろアレ」


 ランマはタキシードに着替え、ウノはピエロの格好になっている。

 そしてステラは――


「お、お待たせしました」


 長く伸びたウサ耳、黒く露出度の高い服。

 バニーガールの姿で、ステラは現れる。その顔はリンゴ並みに赤くなっている。胸元が不安なのか、両腕で胸を隠している。


「ひゅー! いいねステラちゃま! その剝がれそうな胸元が特にいい!!」

「……これ、完全にギネスさんの趣味だよなぁ」


 うむ。しかし悪くない。とランマは心の内で呟く。


「あ、あまり見ないでください……! や、やっぱりこの格好で出るのは無理ですっ……!」

「どうせ転生術使ったらメイド服になるじゃねぇか。最初から転生術使った状態で出るんだろ?」

「……確かにそうですね。じゃあこの衣装意味がないのでは!?」

「なっはっは! 残念だがもう着替えてる時間はないぜ。演目が始まった」


 サーカス団、奇術団、ポールダンスに演奏、様々な芸が次々と披露される。

 そして――出番がやってくる。


「次だな。よし、頼むぜ! ウチの切り込み隊長!」


 ウノがランマの背中を叩く。


「観客の度肝抜いてやれ!」

「おうっ!」

読んで頂きありがとうございました。

この小説を読んで、わずかでも面白いと思っていただけたら評価とブクマといいねを入れてくれると嬉しいです。とてもパワーになります。

よろしくお願いします。

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