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第50話 バトル・ホール

 堕天使は“信仰(しんこう)”を糧にする。

 植物が水を吸い成長するように、動物が肉を食らい成長するように、堕天使は信仰を食らい成長する。

 人が神に祈り発生する信仰を浴びることで彼らの能力は大幅に強化される。ゆえに、彼らは信仰の濃い場所に留まる習性がある。


「つまり、賭場は絶好の餌場ってことだな」

「待った。説明と結論が合ってないぞ」


 〈ハウスツリー〉の屋上、木でできた足場の上でランマ達は芸の練習をしていた。


「堕天使が信仰に寄るってんなら、集まる場所は教会とか、あと〈キョート〉にいっぱいあるっつー神社とかだろ?」

「信仰はな、どんな神に祈ろうが発生するんだよ。『神様、お願いします。あの剣闘士を勝たせてください!』っていう祈りでもな」

「あー、なるほど」


 賭け事をする人間ならば、一度くらいは神様に祈ったことはあるだろう。『神様お願いします。勝たせてください』と。そういう祈りすら堕天使は糧にする。

 特に賭け事で発生する信仰は密度が濃いとされている。自分の全財産がかかった勝負になれば心の底から神に祈る。その切実な祈りは、堕天使の格好の餌になってしまうのだ。それだけなく、剣闘士自身も戦う前に祈りを捧げる習慣がある者も多い。


 教会や神社ほどではないにしろ、賭場も信仰が吹き溜まりやすいのだ。


「私はもう準備OKです」


 ステラが言う。

 ランマは木々に括り付けたロープを渡り切り、


「俺もいけそうだ」

「よし、向かうか」


 ランマ達は私服に着替え、一階に降りる。


「皆さん来ましたか」


 白い服を着ためちゃくちゃ強面の男性が近づいてくる。

 ランマ達は咄嗟に戦闘態勢になるが、男はランマ達の前に来ると、膝に手をついて頭を下げた。


「お勤めご苦労様です! あっしはサポーターのリュークです! 今回はお三方の任務のサポートを務めさせていただきます!! 夜・露・死・苦(よろしく)! お願いしやす!!」


 坊主。サングラス。顎鬚。

 賭場にはうってつけの外見はしている。


「……絶対、俺より射堕天に向いてるぜ」


 ウノはビビりながらそう言った。


「すいませんが皆様、天鏡および武器の類はここに置いていってください。潜入の妨げになりますので……!」



 --- 



 地下闘技場〈バトル・ホール〉。

 入口は全部で5つあり、それぞれの入口は家、カフェ、酒場などの中にある。


「ここに地下闘技場〈バトルホール〉の入口があります!」


 来たのはなんてことのない民家だ。


「あっしについてきてください」


 リュークは家のチャイムを鳴らす。


「はい。どなたですか?」


 戸を開け、現れたのは白髪のおばあさん。


「どうも。東ロンドン新聞社より参りましたリュークです!」

「あ~、新聞の人ね」


 おばあさんは一瞬、ギラリと目を尖らせた。そしてすぐに穏やかな表情になる。


「どうぞ。上がって」


 リュークについてランマ達は家の中に入る。ランマ達が玄関に入り、リュークが戸を閉めると、


「行ってらっしゃい」


 おばあさんのその声を合図に、玄関の石床が()()()


「うお!?」

「なんだこりゃ!?」

「……玄関が、落ちていきます!」

「ジッとしていてください。落ちますよ」


 ゆったりと、真四角の石板は落ちていく。

 石板は石の部屋に着いた。部屋には扉が1つ。室内には闘技場の観客と思しき若者がたむろしている。


「降りてください」


 ランマ達が石板から降りると、石板はまた玄関へ戻っていった。

 よく見ると石板の下に目のようなものがあった。あの玄関の石床は悪魔だったのだとランマは気づく。


 ランマ達は部屋にある扉を開ける。すると、



「「「わあああああああああああああああああっっっっ!!!!!」」」



 歓声が飛び込んできた。

 凄まじい量の観客席。観客席に囲まれる形で円形のフィールドがある。


「昼の部の最終演目ですね」


 いま、フィールドの上では拳闘試合が繰り広げられている。

 観客たちは闘券(賭けた金額や賭けた剣闘士の名が刻まれた券、競馬で言う馬券のような物)を握りしめ、応援している。


「気張れアトレッツ! 負けたら俺がテメェを殺すぞ!!」

「パイソン!! もっと左使え左!!」


 熱気が半端じゃない。

 暑くもないのに汗をかく。


「おいおいおい、思ったよりも盛況だな」


 ウノは嬉しそうに言う。

 ステラはあまりの客の数に顔を青ざめさせた。


「こ、こんな大人数の前で芸をするのですか……というか、あんな格好を晒すなんて……!」

「緊張するな。元々マジシャンだったウノは慣れっこだろうけど」

「さすがの俺もここまでの観客は初めてだ」

「皆さんは夜の部の前座です。すでに支配人に話は通してあります。待合室はそこの階段を下った先です。このチケットを持っていけば入れますので、あとはお任せします」


 リュークはウノにチケットを渡す。


「リューさんはここでお別れなのか」

「待合室はキャストしか入れません。あっしは万一の時に備えてそこの最後列の観客席にいます」


 リュークは両ひざに手をつき、頭を下げる。


「お気をつけて!」

読んで頂きありがとうございました。

この小説を読んで、わずかでも面白いと思っていただけたら評価とブクマといいねを入れてくれると嬉しいです。とてもパワーになります。

よろしくお願いします。

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