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第46話 ストレス発散

「しんっじられませんわ! 登校初日から停学処分をくらうなんて!!」


 生徒指導室にて、ランマはフランベルに正座を強制させられていた。


「まぁまぁフランベル、その辺に……」

「先生、申し訳ございませんが、今は口出し無用です!」


 ランマの担任はフランベルの圧に負け、口を紡ぐ。


「……あなたは射堕天サークルに所属しているから、テストもなしにこの学校へ入れたのです。それも無料で! この意味がわかります!? あなたの失態1つ1つが射堕天サークルの看板に泥を塗るのですわよ!」

「わかってる……」


 ランマがあまりに素直なもので、フランベルは次に出そうとしていた叱責の言葉を喉で止めた。


「……ランマ、エマのやつは全部自分のせいだと言っていた。自分が喧嘩を吹っ掛けて、ランマはそれに乗っただけだと。お前が一言、『自分は被害者だ』と言えば無罪放免なんだ。本当に、お前に責はあるのか?」


 先生が最後のチャンスをランマに与える。だが、


「――はい。俺にも……責任があります」


 フランベルは呆れたようにため息をついた。

 


 --- 



 カバンを持って、ランマは門をくぐる。

 すると、


「ばっかみたい」


 門の前で屈んでいる少女がそう吐いた。


「……なんでアンタまで停学になるわけ」


 少女、エマは地面の蟻から目を離さず言う。

 ランマは天気のいい空を見上げ、


「ちょっと話そうぜ」


 ランマはエマと一緒に〈ロンドン〉の街道を歩く。


「俺を狙ったのは恨みからか?」

「なわけないでしょ。アンタは父さんを眷属の呪縛から解放してくれた恩人だから」

「じゃあなんで」

「八つ当たり」


 キッパリとエマは言う。


「なんだそりゃ」

「最近ね、ストレス溜まってたの。父さんが死んで母さんはずっと泣き続けるし、使い物にならない母さんの代わりに親族とかに私が連絡して、息つく間もなかった。今は母さんもちょっと回復して、余裕はできたけど……」


 エマは「なに話してんだろ」と呆れる。


「――アンタは父さんに勝った男。アンタが相手なら、思いっ切り召喚獣を使えるって思った。だからアンタを狙っただけ。それ以上の理由はないわ」

「本当に復讐じゃねぇのか」

「ないわよ。アンタを恨むのはお門違いでしょ。むしろ――ありがとう」


 エマは頭を下げる。


「父さんを解放してもらっただけじゃなくて、私のストレス発散にも付き合ってもらって」


 ランマは頭を掻き、


「……まぁなんだ、俺で良けりゃいつでもストレス発散に付き合うよ」

「ホントに?」

「ああ」

「じゃあまた決闘挑んでもいいの?」

「誰にも迷惑がかからなきゃな。お前とのバトルは俺の特訓にもなるし」

「買い物とかも付き合ってくれる?」

「……ま、いいだろ」

「じゃあ、セックスにも付き合ってくれる?」

「おう、いい――はあ!?」


 ランマは頬を赤く染める。


「い、いきなり何言ってんだお前!?」

「なにをそんなに驚いてるの? 若者のストレス発散方法の代表はセックスでしょ」

「待った! それはちょっと無理だ。俺には心に決めた人が居て……」

「なーんて、最後のは冗談よ。アンタ童貞でしょ。反応わかりやす過ぎ」


 小悪魔の表情で笑うエマ。

 ランマは言い返せず、ただ「ぐぬぬ……!」と歯軋りするしかなかった。


「二つ目は本気よ。明日、買い物付き合ってよ」

「――はぁ。いいよ。なに買うんだ?」

「適当。ノープラン。〈ブリック・レーン・マーケット〉でぶらぶらしたい」

「お好きにどうぞ。荷物持ちが欲しいってだけだろ」

「そういうこと。じゃあ明日、ここに集合ね」


 エマは公園を指さす。


「わかった」

「明日の10時ね。遅れたら……罰として強制セックスだから」

「だからやらねぇって!」

「じゃあ死ぬ気で来なさい」


 エマはまた小悪魔のように笑うとランマに背を向け、歩き出した。


「……まったく今どきの若者は……」


 なんてジジ臭いことを言いながらランマはエマとは別の道に行く。


「ただいま~」


 〈ハウスツリー〉の一階に入ると、


「ばっかやろうがぁ!」


 拳が飛んできた。


「ごはっ!?」


 ランマは不意打ちに対応できず、殴り飛ばされる。

 ランマを殴り飛ばしたのは紫髪で、上裸にコートを直接羽織った男だ。


「ぎ、ギネスさん! いきなり何しやがる!」

「ギネスじゃねぇ、今はパパと呼べパパと! パパ驚きました。まさかアンタが初日から問題起こすバカ息子だとはね! 悲しいよアタシは!」

「その喋り方はパパじゃなくてママだろ!」

「だまらっしゃい! 罰として〈ロンドン〉一周。終わるまで家に入れないから!」


 扉が閉められる。


「……なんか、散々じゃねぇ? 俺」

読んで頂きありがとうございました。

この小説を読んで、わずかでも面白いと思っていただけたら評価とブクマといいねを入れてくれると嬉しいです。とてもパワーになります。

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