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第45話 因縁

 赤鬼がランマの前に出ると、青鬼はランマの背後を取ろうと回り込んでくる。

 赤鬼が棍棒を振り下ろし、ランマが飛んで躱すと、間髪入れず青鬼が棍棒の横なぎを繰り出す。ランマはそれを槍で受けるが、屋上の飛び降り防止の柵まで叩き飛ばされた。


 赤鬼と青鬼は抜群のコンビネーションでランマを追い詰めていく。


(これだけの連携、確実に召喚士が指示を出している。声が聞こえないから、どこからかハンドサインでも出しているのか……?)


 しかし、もしもハンドサインを出していて、それを鬼が見ていたなら召喚士の場所にすぐに気づくだろう。


「……?」


 ランマはキーン……という、微弱な音を拾った。

 戦闘音でかき消される、本当に小さな音だ。


「金属の音……?」


 ランマは音の方、2号館の屋上を見る。

 そこに白装束の人間が立っていた。制服のスカートを履いているから女子だろう。だが深く被ったフードのせいで顔は見えない。

 白装束の女はトライアングルという三角形の楽器を手に持ち、鳴らしていた。ランマにはたまにしか拾えないほど小さな音、しかし鬼の聴覚は人間の約3倍、あれだけ小さな音でも拾える。


「アレで指示出しているのか」


 一号館から二号館の屋上までの距離はかなりある。ランマが全力で跳躍しても届く距離じゃない。二号館の屋上は安全圏、ゆえに姿を晒しても問題はない。少なくとも相手はそう考えている。


「こういう時、ステラかウノが居りゃな……」


 ステラなら狙撃で容易く召喚士を葬れる。ウノがいれば結界を足場に二号館まで行ける。

 ないものねだりをしても仕方がない。ランマは鬼の猛攻を避け、柵の上に立ち、ミラをコインに変えて指の上で回し始める。


(少し強引な手だが、これしかないな)


 思考が終わる。

 襲い掛かってくる鬼2匹。

 ランマはコインを振りかぶり、


「リーチ・トリック」


 コインを蛇腹剣に変化、鬼2匹を一挙に両断する。

 白装束の女はあまりにあっさり鬼がやられたことで身じろぐ。ランマは柵から距離を取り、助走をつけて――


「うおおおおおお――らぁ!!」


 ランマは二号館に向けて屋上から飛び出した。


「!?」


「頼むぜミラァ!」


 飛距離は明らかに足りない。

 ランマはコインと化したミラを二号館の屋上にある柵に向けて投げる。


ロープ(6番)!」


 ミラがロープに変化。

 柵に絡まり、ランマの手元まで伸びる。


「ぎり、ぎり!」


 ランマはロープの端を掴み、そのまま弧を描いて二号館二階の外壁に足をつける。ロープを手繰り、直角に外壁を登るランマ。ランマを屋上へ来させないため、白装束の女は手の上に炎を出してロープに近づいた。


(まっず!)


 ランマは咄嗟に、


コウリュウ(7番)!」


 ミラを蛇腹剣に変化、同時に落下を始めるランマ。

 ランマは蛇腹剣を伸ばす。


「この距離なら届くはず!」


 蛇腹剣のワイヤーが柵に届き、絡まる。


(縮め!)


 蛇腹剣が縮み、ランマは屋上まで引き上げられた。

 ランマが屋上に着く頃には白装束の女は屋上の扉近くまで走っていた。

 ランマは追いかけるが、ギリギリの所で扉を閉められ、鍵も内側から掛けられてしまう。


――が、


 ランマは構わず扉に手を突っ込み、扉を突き破って女の腕を掴んだ。


「はぁ!?」


 思わず声を漏らす女。

 ランマは扉ごと女を引っこ抜き、女を天高く放り投げる。そして腕についた扉から腕を引っこ抜き、落下してきた女の胸倉を掴んで地面にたたき伏せた。


「……くっ!?」

「――つっかまえた。どちら様だ、テメェ……」


 フードを掴み、脱がせる。

 ランマは彼女の顔を見て、目を丸くした。


「!? お前……」


 黒い髪の少女。

 彼女の名をランマは知っている。


「エマ……だったか」

「さすがね、ランマ=ヒグラシ

――お父さんを殺しただけあるわ」


――ドクン。


 ランマは思い出す、エマに感じていた既視感の正体に。

 彼女を最初に見たのは、あの船の上。

 ゴネリスが持っていたロケットペンダントには写真が入っていた。その写真に写っていた幼き少女。それこそが、


「ゴネリスさんの……娘か……!」

「……」

「お前たち! なにをやっている!!」


 ランマが空を駆ける姿を見ていた教師たちが屋上へやってくる。

 結局、ランマは彼女の真意を聞けぬまま、教師によって引き剥がされた。

読んで頂きありがとうございました。

この小説を読んで、わずかでも面白いと思っていただけたら評価とブクマといいねを入れてくれると嬉しいです。とてもパワーになります。

よろしくお願いします。

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