第44話 鬼退治
休み時間。
ランマはアムリッタと窓の外を見ていた。
「あそこが修練場で、あそこが図書館、あの真っ白な施設が研究棟で、アレが二号館で、あそこが三号館。大体こんな感じかな」
「そんでここが一号館か」
「そうだよ。一号館には一~三学年の教室と職員室があるんだ」
ランマとアムリッタは廊下に出る。
「あのトイレの前にある教室が結界士クラス、その隣が転生士クラスで、一番奥が鑑定士のクラスだよ」
(そういや、転生士のクラスにはステラの奴がいるんだよな。ちょっと覗いてみるか)
ランマは転生士クラスの教室を覗き見る。
「げっ」
教室内でステラは孤立していた。
ズーン、とあからさまに肩を落とし落ち込んでいる。周囲の生徒たちはステラを恐れて避けているような感じだ。
(アイツ、昨日あんなに学校に来るの楽しみにしてたのに何があったんだ?)
「!?」
(やべ! 目が合った!)
ランマはそそくさとその場を去ろうとする。
「アムリッタ! 次は四階の説明を――」
ガシ、とランマは裾を掴まれた。
振り返ると、涙目のステラが居た。
「……なんでお前あんな避けられてるんだよ……」
「……一時間目が、転生術の実習の授業で……それで、転生術をつがっだら……!」
「……周りに引かれたわけか」
男を租チン呼ばわりして銃火器を振り回す転校生……クラスメイトからしたら怖いに決まっている。
「あ、えーっと、ランマ君の友達、なのかな?」
「いいや、友達って言うより同僚だな」
「同僚……」
「こいつも今日から来た転校生なんだ」
ステラは泣きそうな顔でアムリッタを見る。
アムリッタはその泣き顔に母性心を撃ち抜かれた。
「よ、よかったら、一緒に学校見て周る?」
ステラは目を輝かせ、「はい!」と頷いた。
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一号館を見終わった3人は最後に屋上を訪れた。
「アムリッタは〈ロンドン〉で生まれ育ったのですね。道理で、どこか私たち外の人間とは違う空気感があります」
「ほんと? 自分じゃ全然わからないけどなぁ……」
すっかり意気投合したステラとアムリッタ。
小動物的雰囲気のアムリッタだが、ステラと話している時はどこかお姉さんな雰囲気だ。
「ところでさ、2人は同僚だって言ってたけど、なにかお仕事してるの?」
「俺たち、どっちも射堕天サークルってのに所属してんだ」
「射堕天サークル!? そ、そうなんだ……」
アムリッタは気まずそうに顔を逸らす。
「どうしました?」
「えっとね、わたしのお姉ちゃんも射堕天サークルに居るんだ」
「あ~、例の怖い姉ちゃん」
「そうですか。なら一度、挨拶しておくべきですかね」
「い、いいの! 放っておいて! ――あ、それとねランマ君」
アムリッタは話題を変える。
「今日、遅れて来たエマちゃんもお父さんが射堕天サークルに居るらしいよ」
「ん? そうなのか」
どこか喉に突っかかるような感覚をランマは抱いた。
「「――!!」」
ある気配を察知し、
ランマとステラは同時に目を細めた。
「……ステラ、アムリッタと一緒に先戻っててくれ」
「え?」
「わかりました」
ステラはアムリッタの背中を押して屋上の扉へ向かう。
「え、えと、ランマ君は?」
「俺はもうちょい景色を楽しんでから行くよ」
「……お気をつけて」
「ああ」
ステラとアムリッタが屋上から出る。
「相手してやっから出て来いよ」
ランマが言うと、棍棒を持った小鬼が四方八方から現れた。
建物の影からうじゃうじゃと湧いてくる。
(鬼? ゴブリンか)
ランマはコイントスし、ミラを召喚する。
『ギギャァ!!!』
襲い掛かってくる小鬼たち。
「鋼槍」
ミラを槍に変化させ、小鬼を斬り裂いていく。
(明らかに陽動だな……)
小鬼を倒し切ったところでズドン! と2メートルサイズの赤鬼と青鬼が飛んできた。
どこからか跳躍してきたようだ。
「なるほどね。コイツらが来るまでの時間稼ぎか」
ランマは槍を手元で遊ばせ、構える。
「さーってと! 鬼退治といくか……!!」
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