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第33話 到着! 異界都市ロンドン!

 夜が明けて、早朝。

 第一師団の船は第一師団に預け航海中。第七師団は全員、第七師団の船に乗っていた。また堕天使が襲ってこないとも言い切れないので2つの船は並走し、いつでも外敵に対応できるようにしている。


 スウェンとミカヅキは見張り台で2人、話していた。


「ランマ君曰く、ランマ君が限界突破の(リミットブレイク)円環(リング)を持っていると試験前の時点で知っていたのは3人。僕と、ランマ君の担任と、そして――」

「アルヴィス=マクスウェルか」


 ミカヅキは苦い顔をする。


「カラス頭の堕天使とワンハンドレッドは恐らく同じ目的で動いていた。その目的がもしも、ランマ君の召喚陣ならば……黒幕候補は僕を抜いて2人です」


 現時点で召喚陣以外にランマの中で希少価値がある部分はない。ゆえに、敵の狙いは召喚陣である可能性が高い。

 スウェンが万が一ランマを狙っていたのなら、これまでいくらでもチャンスはあった。そこで動かなかった時点でスウェンは容疑者から排除される。


「勘弁してくれ。アルヴィスを相手にするとなると、射堕天サークル総動員で動かなきゃなんねぇぞ」

「とりあえず本部に相談ですね。僕らの独断で探りを入れるには大物過ぎる。慎重に行きましょう」

「ああ。ランマはこの件についてどう推理していた?」

「バーテンダーの堕天使とカラス頭の堕天使の仇討ちにワンハンドレッドが襲来した、と思い込んでいるようです。カラス頭の堕天使、アレの鑑定結果をランマ君は知りません。だから僕らと同じ考えには至ってません。人間が関与しているなんてまったく考えてないですね」

「よし、それでいい。ランマに情報共有はするな。今のアイツが容疑者を知ったら無防備に飛び込みかねない」

「ミカヅキさんは大丈夫ですか? リーニャさんの仇でしょ。一人で突っ走ったりしません?」

「安心しろ、ガキじゃねぇんだ。確実に奴らを殺せる手札が揃うまで動かねぇよ」


 悪い顔でミカヅキは言う。


「俺は港に着いたら本部に行く。お前はアイツらに〈ロンドン〉の案内をしてやれ」

「どこを案内すればいいですかね?」

「市長が住む〈バッキンガム宮殿〉と射堕天サークルの本部である〈ウェストミンスター宮殿〉はマストだ。あとは〈バラ・マーケット〉に連れていってやれ。かなりハードな船旅になっちまったからな、腹いっぱい食わせてやれよ。金は俺持ちでいい」

「やった! なーに食べよっかなぁ♪」

「師団長は明日帰ってくる。だから〈ロンドン東部(イースト・エンド)〉に行くのは明日でいい。今日は〈ロンドン西部(ウェスト・エンド)〉のこのホテルに泊まれ。アイツら仮眠しかとってねぇからな、あっちまで行くのはしんどいだろ」


 ミカヅキはスウェンにホテルの住所が書かれた紙を渡す。


「意外に良い上司ですよね、ミカヅキさんって」

「意外じゃねぇよ。どっからどう見てもいい上司だろうが」

「いてっ」


 ミカヅキはスウェンの後頭部を叩いた。



 ---



 船の甲板から身を乗り出し、

 ランマ、ステラ、ウノは遥か先に見える都市を見ていた。


「「うお~~!!!」」


 高くそびえ立つ時計台。精緻(せいち)かつ荘厳な建築物の数々。

 街の間を流れる美しい川。川に架かる跳開橋。

 道はバイクや車、それに召喚獣が引く荷車や召喚獣に跨る召喚士の姿が混在する。

 空は飛行能力を持つ転生士や召喚獣、結界を足場に移動する結界士、さらには気球が飛んでいる。

 30年前に突如として海上に現れた街、未知と夢と欲望が渦巻く海上都市。


 現界と異世界の特異点、“異界都市ロンドン”――


「すっげぇ! すっげぇぞランマちゃん! すっげぇ!」

「あぁ! すげぇな! マジすげぇよ! すっげぇ!!」

「……2人とも、語彙が消滅していますよ」


 苦労の果てに辿り着いたからこそ感動も跳ね上がる。


「やれやれ、まったく庶民らしい下品なリアクションですわね」


 と水を差すはフランベル。

 ランマたちはフランベルの姿を見て、唖然とした。

 フランベルは帽子、サングラス、マスクを着け、首から上をほとんど認識できないようにしていた。傍から見たら不審者である。


「なにしてんだフラン姫。せっかくの可愛い顔がまるで見えねぇぜ」

「借金取りにバレないようにしてるんだよ」


 スウェンがフランベルの後ろから言う。


「そういや、借金取りから逃げてきたって言ってたっけな」

「そう。フランは色んな場所からお金を借りてるからねー。金ない癖に高いドレスを買うからだよ」

「服にお金を費やせぬなら死んだ方がマシですわ」

「重症でしょ? 召喚術の才能がなかったら、今頃どうなっていたことか……」


 はぁ、とため息をつき、スウェンは話題を変える。


「そうだ、みんなに朗報があるよ。ミカヅキさんから今日は一日観光に費やしていいってさ」

「うおっ! さいっこうだぜミカヅキの旦那!」

「師団長は明日来るから、それまでの暇つぶしだね」


 ランマはキョトンとする。


(そっか。あの人に明日、ついに会えるのか……)


 ウノはランマと肩を組む。


「どこ行くよランマちゃん! やっぱりビッグ・ベンは外せねぇよな?」

「びっぐべん? なんだそりゃ」

「悪いけど、行く場所は決めてあるんだ。でも、そうだね、うん」


 スウェンはニコッと笑い、


「最初はビッグ・ベンがある〈ウェストミンスター宮殿〉に行こうか。射堕天サークルの本部になっている場所だよ」

【読者の皆様へ】

この度、皆様の応援のおかげで本作の書籍化&電子コミカライズ化企画が始まりました。

是非、続報を楽しみにしていてください。

皆様に心より感謝申し上げます。

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