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第28話 ワンハンドレッド

 月明かりが降り注ぐ船首にステラは立っていた。

 (まぶた)を10倍スコープに変え、海の先を見る。


「……見つけた。北東約800メートル先に蒸気船一隻」


 ミカヅキは海の上に結界を出し、結界の上に降り立つ。

 ランマも同じ結界に降りる。


「……これだけ近づけば十分。

――行くぜランマ! 覚悟はいいな!?」

「うす!」


 ステラも結界の上に降りる。

 ミカヅキは結界を第一師団の船の方へ伸ばす。


「走れ!」


 ミカヅキの号令で、3人は結界の上を走り出す。

 ミカヅキを先頭にランマ、ステラの順だ。

 伸びた結界は第七師団の船の方から消滅していく。


「長時間大きな結界を維持するのはさすがにキツいからな、端から消してくぞ。遅れたら海に落ちるからな!」


 ひたすら結界の上を走っていく一行。

 船まであと50メートルというところで、ミカヅキは足を止めた。

 立方体の結界を等間隔で二方向に設置していく。一方は船の甲板に向けて、もう一方は船の中腹にある扉に向けて設置される。


 ランマとミカヅキは甲板の方へ、ステラは扉の方へ向かって飛び跳ねていく。



『船の捜索は二手(ふたて)に別れてやる』


 ランマは先ほど甲板でミカヅキが言っていた言葉を思い出す。


『ステラは非常扉から内部に入り、船底から数えて一階から三階の客室フロアを探ってくれ。もし配電盤がやられてたら船内は真っ暗だからな。お前じゃないと捜索ができない。生存者が居た場合は保護しろ。重傷者、すぐさま処置しないとやばい奴が居たら外に向けて発砲しろ』


 第一師団の船は四階構造。

 四階が操舵室、一階から三階が客室やレストラン、娯楽室となっている。


『俺とランマは堕天使が居た甲板から操舵室にかけてを捜索する。初タッグだが、俺がお前に合わせる。テメェは自由に動け』



 ランマとミカヅキは甲板に到着する。

 月の光に照らされており、甲板の視界は明るい。甲板には二人、立っていた。

 片方は隻腕の男。ガタイが大きく、体毛が濃い。厳格な顔つきだ。


「ゴネリスさん……」


 ミカヅキの言葉で、その男がゴネリスだとわかる。


「ようミカヅキ。相変わらず生意気な面だな」

「アンタも相変わらずのゴリラ顔だな」


 そしてもう一人は――女性だ。


(あの人って、確か……)


 リーニャ。

 〈ブルー・ラグーン〉の港で、ミカヅキに絡んでいた女性だ。


「やっほー! ミカヅキ君。もしかしてもしかして! 助けに来てくれたのかな?」

「……あぁ、そうだよ」

「でも大丈夫だよ。私たちはほら、この通り無事だからさっ!」


 ミカヅキは天鏡を出し、二人を映す。


「……」


 ランマも天鏡を出し、二人を映した。


――二人の頭上に、輪っかが浮かんでいた。


「ミカヅキさん……」


 ミカヅキは間違いがないか、ジッと目を凝らして天鏡を見る。だがなんど見ても、二人の頭上には輪が浮かんでいた。

 そして、諦めたように一瞬手鏡を閉じ、ゴネリスとリーニャを睨みつけた。


()るぞ」


 平静を装ってはいるが、あらゆる感情を噛み殺しているのは付き合いの浅いランマでもわかった。

 ただ、いま、自分の心配を口にするのはミカヅキに対する失礼に当たる。


「――はい」


 今はただ、目の前の敵に集中するのみ。


「へぇ、私と戦うんだ……今日で同盟は解散、かな」

「……不本意ながらな」



 ---


 

 ランマ、ミカヅキと別れたステラは真っ暗な船内の捜索を始める。

 一つ一つの部屋をしらみつぶしに探すも、誰一人見つからない。


「どういうことだ……?」


 ステラの脳裏に、疑問が浮かぶ。


(ミカヅキの話だと乗員はエディックを抜いて52名。なのに、誰もいない。死体すらねぇ。血痕や争った跡もない。どこかにまとめて避難しているのか……?)


 手がかりを探し、ステラは捜索を続ける。



 --- 



 第七師団の船。そのすぐ側で水しぶきが上がる。

 甲板に、一体の堕天使が舞い降りる。全身が濡れており、水が滴っている。


 全身金属質の堕天使だ。


「やぁ」


 待ち受けるはグレー髪の少年。

 少年は呑気に座った状態で、堕天使に笑いかける。


「泳いできたのかい? 珍しいね。堕天使なのに空じゃなく海から来るなんてさ」

「飛行は集中砲火を貰う可能性があるのデ」

「へぇ。一応僕たちのことを警戒してくれているんだ」


 グレー髪の少年、スウェンはゆったりと立ち上がり、足元に転生陣を展開する。


「おひとりですカ?」

「うん。そうだよ」

「ランマ=ヒグラシがここに居ると聞きましタ。どこに隠したのですカ?」

「あっはは~。教えてあっげなイ♪」


 スウェンに黒炎の腕が生える。


「転生術“骸炎(がいえん)”」

「天界礼装“遊槍クモユラ”」


 堕天使は槍を召喚し、構える。


――瞬間、


 槍がスウェンの顔面目掛けて飛んでくる。その速度は常軌を逸したものだが、スウェンは黒炎の腕で槍を弾いた。


「防ぎますカ」

「次は僕の番だよ」


 スウェンは堕天使に駆け寄り、骸炎を振るう。堕天使は飛び跳ねて躱す。


(“骸炎・牡丹(ぼたん)”)


 スウェンは10メートル先の宙に居る堕天使に向かって再度黒炎の右腕を振るった。同時に、黒炎の右腕から炎球が飛ぶ。腕からはじき出された黒炎の塊が堕天使の腰に当たった。堕天使は攻撃を受け、空中で僅かに態勢を崩す。


 堕天使のコートの腰部分が焼け落ちる。


「!?」


 コートが灼け、微かに見えた腰には――100の数字が刻んであった。


100番(ワンハンドレッド)……!)

「なるほド。先ほどの相手とは格が違うようダ」


 甲板に着地した堕天使と、スウェンは向かい合う。


(第三階位の頂点か。彼女の魔力が戻るまで、凌ぎ切れるかな……)

「愚かなリ。人ガ、我々に勝てるはずなど無いと言うのニ、なぜ逆らうのカ……」

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