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第1話 最小の召喚士

 人は生まれた瞬間に天より魔法陣を授かる。

 魔法陣は召喚陣・鑑定陣・転生陣・結界陣の全4種類あり、この4種の内一つを貰える。


 ランマが授かったのは召喚陣。魔界より悪魔を召喚できる魔法陣だ。


 それ自体はまったく不満はない。むしろ最善だ。召喚陣を持つ者、つまり召喚士はあらゆる場所で重宝(ちょうほう)される。悪魔を呼び出せるのだから単純に戦闘力が高い。さらに悪魔は様々な種類があって種類ごとにできることも多岐にわたるため活躍の幅は広い。


 足の速い悪魔を呼び出せば郵便配達や荷物の配送を任せられるし、泳げる悪魔・空を飛べる悪魔が居れば海を渡ることも可能。召喚陣を持って生まれた人間は幸運だ。


――幸運のはずだったのだ。


「ランマ=ヒグラシ。それが全力か?」


 眉間にシワを寄せてガルード先生が聞いてくる。

 教卓の前、少年は手のひらを上に向け必死に魔力を振り絞っていた。


「待ってください。まだいけます……! ぬおおおおおっっ!」


 手の上に浮かぶは召喚陣。しかし、どれだけ力を入れてもその大きさは3センチ程だった。

 背後から他の生徒のクスクスという笑い声が聞こえる。


「おーい! 力入れても召喚陣は広がらねぇぞ!」

「無駄な努力はやめろって! 帰る時間が遅くなるだろうが!」


 笑い交じりの罵声が飛んでくる。


「うっせぇ! もうちょいでコツ掴めそうなんだよ!」

「はぁ。ここまでだな」


 ガルード先生は手に持った定規でランマの召喚陣を測り始めた。


「記録3センチメートル。戻ってよし」


 ランマは魔力の放出を止め、召喚陣を体内に戻す。

 トボトボと席に戻っていると、嫌な声が耳に入ってきた。


「……すげー。3センチの召喚陣とか、逆に出すの難しいわ」

「……最低でもみんな90センチメートルはあるのによ」

「……さすが最小の召喚士(ミニマムサモナー)


 隠す気のない陰口が聞こえる。

 気には障ったが、こんなものは慣れっこである。いちいち叱ることもない。本音を言えば、叱ってもし逆ギレでもされて悪魔を出されたらボコボコにされるため、沈黙するしかなかった。



 ランマ=ヒグラシはこの教室内で間違いなく最弱だった。

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