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episode.III 思惑

「開かない、、、」

先輩は絶句している。

見れば空はもうピンク色じゃなくなっていた。

「うう、こうなったら、もう!!」

先輩が力尽くでドアノブを壊そうとしたその時!

ブワーーンとドアノブが紫に光り輝いた。

「チッ、この!!」

先輩がドアノブから離れた。

「ちょっ、先輩!これが!?」


「正解。これが魔術。

私たちは知らぬ間に奴に囚われていたみたいね。」


「それが、魔術。。。」


「ふんっ、この私を閉じ込めようなんていい度胸してるじゃないの。」

正直頭に入ってこない。

そんな非日常な話、ペラペラ言われても困る。

「あの、俺たちここから出られるんですか?」


「問題ないわよ。家ぐらいまでは必ず私が送り届ける。」

それはありがたい。こっちは一体全体何が起きてるのかわからん状態だ。

でも、

「なんでだ?俺は別に先輩に守ってもらうような身分じゃないぞ?」


「まあ、別に私も本来はあなたを殺さなくちゃいけないんですが。

でも、あなたが本当に何も知らない一般人なら話は別です。

もしそうなら、それは間違いなく私の責任です。多分私が敷いた次元<魔術>が不出来だったということ。それで死人なんかでたらたまったもんじゃありません。」


「はぁ。」


「ですからこれはあくまで自分のためです。気にしないでください。

あなたのことも家に帰ればもう気にしません。赤の他人です。わかりましたか?」

…それはちょっと悲しいけど。

まあ先輩がそういうならそうしよう。俺だって早く我が家に帰りたいだけだ。

「さて、ここからどう出るかですが、、」


「そのドアノブはほんとに開かないんですか?」


「いや、無理やり壊してもいいんですけど、それだとなんの報復があるかわかったもんじゃないですし。ここは堅実に、」


屋上の柵に手をかけて。


「ー飛び降りてみましょう。」

ぴょんと。うさぎみたいに飛んでった!!

え、全然堅実じゃなーい!どうしよ、追いかけたほうがいいのかなあれ?

わけもわからず待つこと5分。その声は突然聞こえて来た。

「わわわーー!!」

ドダダダダーーー!!!

「え!え!え!」

音は下からする。しかし下を見ても何もない。ただ校庭が広がるばかり。

ドダダダダ!

音はまだする。何かと何かが走っている音。

いや?なんかこっちに向かって来てる気がするが気のせいだろうか?

ドダダダダ、、

いや、そんなことはないと思いたいけど。

ドダダダダ、、

でもなんか音は近づいてきて。

ドダダダダーー!!

ドアを割って先輩が怪物と共にやってきた!!

      ◇

遡ること5分前。

彼女は屋上から飛び降りた。

「よっと、」

綺麗に着地する。

「あれ?」

校庭はやけに静かだった。人っこ一人いない。

ーおかしい。そんなはずはない。今は夕方。なのに、誰もいない。部活中の学生で賑わうはずだ。新入生の彼が部活をしていないのはわかる。だが、4月だからといっても誰もいないのはおかしい。職員室の方を見る。やはり誰もいない。

静かすぎる。ここは何かが狂ってる。

「まさか、、」

彼女はそこで気づいた。おかしかったのはドアノブだけでなく世界だということに。

「・・やられた。いつから入ってたの、私たちは。」

独り言であるはずの声。

それに、

"ンンンー!!まああなたが学校にはいったくらいからですかねー!!

まあ私の結界を以てすればあなたに気付かれずに入れることくらい楽勝ってもんですねー!!あれで逃げ切れたつもりなのでしょう?私はずっと捕捉できてましたけどねー!"

「ペラペラと、、、」

チッ。。

心の中で舌打ちする。

結界。

初歩的な魔術の一つであり、厄介な類のものだ。

種類も用途も多岐にわたるが、最も使われる方法こそがー

「遮断。」

"戦闘員の割には察しがいいじゃない。でもね、半分ハズレ。ここは私の知っているものならなんでも放り込める!ここでなら私は誰にも負けない。それはあなたでもそう。

何故なら私はそこにはいない。こここそ我が胎内なのだから!!"

女はさぞ気持ちよさそうだった。勝ちを確信したのだろう。

周りを見渡す。なるほど確かによくできている。

学校の造形は正確だし、そのほかの家だっていつも見ている景色と寸分違わず違わない。

つまりは。

「視界の風景すら取り込めるっての、あなたは。」


"わかる!?わかっちゃいます!?そうです、そうなんですよ!取り込めちゃうんです私!だから私の結界には誰も気づかないし気付けない!!"

癪に障るが正しい。

奴のには世界と結界の境界がない。知らぬ間に入っていた。

空間に僅かに魔力の匂いがするだけだ。

そんなもの、風の匂いと何が違おう。

異常を異常とも思わせぬその技術。

それは感嘆に値する。

ーだが。

「へえ、なるほど。あんな風体して出来た魔術師じゃないあんた。

でもこれは立派な欠陥品よ。なんで人は取り込めないのこれ?

しかもドアノブはこれフェイクなんでしょ?私たちがそれを開けるのに躍起になるとか思ったのかしら。バカみたいね!」

ーそう、その点で言えば女は未熟だ。結界に誘い込むまではいい。だが学校を選んだ時点で女の失敗だ。人も一緒に反映できないのなら、使う場所は常に人目のない場所でなくてはならない。しかしそんなもの、女だってわかりきっていたことだ。

そのために、それに気づかせないために、ドアノブを開けなくすることで、本来なら人がいるところに立ち入らせなくすると同時に集中をドアに向けさせた気でいた。小さな異常を作ることでそれそのものの異常を忘れさせる。女なりには満足した策なのだ。

しかし、実際はこれだ。彼女は異常を異常と認識した時点で迷うことなく屋上から飛び降りた。それによってもうこの結界がなんであるかを見破られている。

彼女を追い詰めたのは事実だ。

だがここまで彼女が自分に迫ってきているのは想定外だった。

それでもまだ、彼女は勝ちを確信している。

なぜなら彼女にはここを壊す手段がないから。

まだ彼女は知らない。

敵は世界(Look on)

それを知られた時点で彼女の負けだということに。

       ◇

"・・・"

女の心はかすかに揺れたようだった。

"はっ、問題無いわよそんな事。目的は取り込むこと。入れてしまえば後のことは関係ないわ。何も出来ないのだから、あなたたちは輸送が済むまで大人しくしとけばいいのです。"

すると、女の姿が映し出される。

てくてくと歩いている様だった。

そう、これは時間稼ぎ。


"私の目的はあなたを彼の所まで持っていくこと。それ以上のことは関係ありません。"


「はいはい、言いたいことは分かったよ。

ーそれで。私が従うと思ってんの?」


"従わないなら、大人しくしてもらうだけです。

言った筈ですよ。ここは私の胎内だと。"

出てくる。出てくる。まごうことなき怪物の群れ。

先程までの光の球の応用なのか、それは赤い光を帯びていた。人型の怪物だ。

彼女の判断は早かった。すぐさま思考を切り替える。

目指すのは彼の下。女が牙を向いた以上彼がどうなるかわからない。

    ◇

ドアを突き破って先輩が来た。

「わわわー!!」

先輩が駆け寄ってくる。そのままこっちに来て。

そのまま抱き抱えられてるー!!

「えぇー!!先輩すげぇーー!!

何で人持ち上げといてこんな速度が出るんですか!!」


「静かにしといてください!!意外に重いんですから!!舌噛みますよ!!」

そしてある程度離れたところで降ろされる。

「おっと。」

怪物は何故か一定の距離を保っていた。


「さて。いいですよ、さっきみたくかかって来なさい。」


"問題ないわ〜。別にさっきのだってただの冗談だし。どうせあなたには何も出来ない。

あなただって無駄な魔力は使いたくないでしょ?何もしないであげるからそこでおとなしときなさいな。"


小さいため息の後。

「ーそう。じゃあ殺すわ。今ここで先手を取らせた。それがあなたの敗因よ。」

        ◇

さあ起きよ大魔術。優劣を今、ここでつけよう。

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