95話 激突
遂に両者激突。幸助と華名が此処で鉢合わせた事で戦闘開始です。
悟美の戦闘方法がかなり独特です。柔軟性が非常に高いので、近接戦闘は得意です。対して、夜叉もかなりの実力者ですし、妖術と剣術はかなりなもの。妖術を行使しなくとも、人間相手なら容易く太刀を振える力量は恐ろしい限りです。
実は二次創作の転すらで悟美と夜叉が明確に戦っている描写ってほぼないんですね。ここだけの見どころなので、オリジナルキャラクターとして見てください。
お知らせです。来週の月曜日と火曜日はpixivで小説を投稿します。このすばとオリジナル小説を投稿しますので、こちらの方は今週末で一旦お休みさせていただきます。
6時間でアカ達の拠点に着いた。
幸助は【絶無】を使った影響で生気を失い、休憩がいる。
敵が居ないかを確認しようとするが、その必要がないと知る。
アカの仲間であると思われる死体があちこちに散らばっている。
切り刻まれ、大きな損傷をしていると思われ、誰も生きていない。悟美が彼らの安否を確認し、首を振る。
「…死んでるわ」
悟美の目は哀しげだった。どうして、自分が殺める前に死んでしまったんだ、という哀しさが表情に出ていた。
だが、それもほんの一時に過ぎない。
辺りに何か潜んでいるのを感知した悟美は大いに喜ぶ。
「っ⁉︎…シシシシッ‼︎こいつらを殺した人が隠れてるわ!」
三節棍を振り回し、待ってられないとばかりに感情を昂らせる。
「ねえ、出てきたらどうかしら?二人隠れてるでしょ?私が見つけられないとでも思ったのかしら〜?」
威嚇するばかりと隣に立つ大木を破壊する。
悟美はこいつらを殺された恨みよりも、殺した相手の強さが知りたいのだ。
子供が駄々を捏ねるように口調も荒れる。
「ねえ!私達を影から眺めて美味しそうとしか思わないのかしら?美味しいのなら食べるのが常識でしょ⁉︎食べられる側も良いけど、出来れば、お預けしないで出て来てくれると嬉しいわ。私は気が長くはないから、早くしないとあなた達が食べられる立場になるわよ。それとも…玩具みたいに私が見つけないといけないの?」
堂々と標的を請け負う悟美。
華名達の存在に気付いた悟美の感知能力は凄まじく、見つかるのは時間の問題。
ここで出てくれば悟美の思い通りになると、夜叉は危険を察知していた。
普通なら、こんな言葉を無視してずらかるのが定石。しかし、華名達はそれができない。
「アレは…マツシタコウスケです。背中に背負っているのは妖怪でしょうか?」
「アレが幸助ですか…?パッと見てタイプじゃないです。如何にも悪人ヅラが似合いそうな子供じゃないですか⁉︎」
「言い方が鬼ですよカナ様。あの男は私達が捕まえるべき標的です。あの男を古都に連れて行き、妲己に引き渡す予定です」
そう、幸助は夜叉達の目的である人物なのだ。
此処で見逃すという選択肢はなく、見つけてしまった人物を無視する事ができなかった。
捕まえ、古都に引き渡すのが言い渡された任務。無視するのも良いが、夜叉個人は幸助に珍しく興味を持っていた。
妖怪を手中に収める力がどれほどのものか、拝みたいと思った。
「カナ様、彼を捕まえます」
「え⁉︎今ですか⁉︎」
華名は首をぐるりと回し驚く。
夜叉の声は妙に落ち着いており、既に決心した表情を見せる。
長刀を引き抜き、刀身を見せる。わざと陽の光を反射させ、幸助達に居場所を示す。
「な、何してるんですか⁉︎」
華名は当然驚く。夜叉が自分の居場所を教えているからだ。
夜叉は平然とした態度で笑う。
「フフフ、大丈夫ですよカナ様。この私が、あの者達に負ける姿が想像出来ますか?」
夜叉は一度たりとも敗れた経験がない。
伝承も中国や日本でも知られ、名が感情に由来する妖怪であることからも、その実力は確かなものである。
妖怪と記された後、『夜叉』という妖怪は、さまざまな種族の伝承が存在する。
妖怪・鬼・精霊・悪魔・神と、多種族の属性を持つ妖怪は太古の妖怪しか存在しない。
長年、伝承に刻まれた妖怪であるならば、神と崇められる妖怪が現れても可笑しくない。
神と崇められ、畏れられる存在の妖怪は強さを増す。夜叉は神という側面を持つだけじゃなく、世界に広まる伝承における精霊や悪魔といった存在の要素も取り込まれている。
妖怪という肩書きがある限り、他の種族の要素をその身に宿す。
人の伝承に記された以外に、感情に起因する妖怪の強さは異質さを備える。特定の条件下で感情を解き放つことで強さは格段に上がり、異常なる才覚を発揮する。
しかも、夜叉は一度たりとも感情に目覚める事がなかった。
否、妖界では、まだ一度も覚醒していない。
自分の力が眠っていると理解しており、それが解放出来るのかも模索してる。
自分をよく知り、その実力も見誤らない確かな慎重さを持つ。
己をよく知る妖怪ほど、脅威となる相手はいない。
空気が乾燥する森の中は悟美の声がよく響く。それに応じるように、夜叉の刀身が木の上から輝きを放つ。
「居たわ。誘ってるわね」
悟美は警戒するものの、刀身の光を見て不敵に笑う。
「悟美、誘いに乗らない。恐らく、この場の人間じゃない。相手にしてくるのは、強者の可能性がある」
雪姫は悟美に注意を促す。悟美が素直に従うわけがなく、雪姫の言葉に耳を貸さない。
「えへへ〜楽しめなかった分、あそこの人が遊んでくれるって誘ってるのよ?誘いに応じなきゃ‼︎」
悟美は遊びたいのだ。アカ達が相手にならな過ぎて退屈している精神を吹き飛ばすには、強者を相手にしたいのだ。雪姫の「強者」という発言は、悟美の遊び心を掻き立てる。
夜叉は人の心を視る。悟美の心を揺さぶることなど造作もない。
二人の妖怪が、悟美という人間の欲を刺激した。
「シシシシッ‼︎さあやり合いましょ!私の退屈を晴らしてよ‼︎」
悟美が暴走する。こうなれば、誰の言葉も耳に傾けない。
死を恐れず、快楽を求め、夜叉に目掛けて木を飛び渡る。
夜叉は長刀を構え、悟美の心意気に応える。
「恐れを知らずに向かってくる精神、感服します。では、私も応えるとしましょう」
三節棍と長刀がぶつかり合う。
金属が擦り合う音、耳が麻痺するぐらいの気色悪い音が両者の耳に響く。不快にしか思えない音は、彼女達には心地よいものだった。
「へぇ〜?やるわね」
「フフッ、貴女こそ。その実力、覚醒者ですか?」
夜叉は交わっただけで悟美を見抜いた。
そんな夜叉には余裕があり、片手で悟美の三節棍を捌く。
悟美の身体能力はずば抜けて優れている。軍服が機動力に優れているのもあるのか、大抵の無理な動きも裕に熟せる。
関節が柔らかく、柔軟に三節棍を振り回していく。
「なるほど、三節棍が主流ですか。その武器は使い熟す人間は少ない……実に興味深い。貴女の異能と相性が良さそうです」
夜叉は派手な動きが出来ないものの、その容姿からは想像できない器用な戦いをする。
悟美が攻めるが、その攻撃を一切動かずに全て受ける。
攻撃に機転し、悟美の先を読んで攻撃するが、悟美は身体を柔軟に使い回避する。紙一重で避けるものだから、興が乗る。
190ある背の丈を超える長刀を片手で扱い、悟美の猛威を相手する。身長差はあまりないが、武器のリーチ具合では夜叉に武がある。
長刀は日本刀を伸ばしたような形状で、リーチのある武器。その武器を扱うにも長年の鍛錬は欠かせない。
鍛錬はものを言うが、夜叉の場合は顕著に出ている。
妖界で鍛錬を積めば、その実力は加算され、技量に上乗せされる。身体能力は変わらなくとも、技の磨きをかけられる。
夜叉が扱いづらい長刀を片手で短剣のように扱えるのは、夜叉なりの鍛錬を積んだからである。
互いに物理攻撃を得意とし、彼女達の気迫は他の者にも伝染する。
俺は悟美が戦う妖怪に見覚えがあった。
『夜叉』だ。中国妖怪の夜叉だ!
此処にいる妖怪は力を発揮できない。なのに、夜叉は疲れた様子を見せない。
「此処、妖怪が力を発揮できねえ筈だろ⁉︎なんで動けるんだよ‼︎」
俺は悟美とやり合えているよりも、まともに動いている夜叉に驚いていた。
「分からない。異能…それとは違う別の能力……ごめんなさい。私にも分からない」
この森は妖怪には毒でしかない。何か理由があるのかと思った。雪姫も動けるんじゃねえかと期待した。
しかし、雪姫は俺の背中で動けないでいた。
なんかの能力で動いているのか?それとも、幻術を俺達は見せられているのか?
俺は敵の情報を知ろうと辺りを見渡す。
俺の疑問を見抜くように、少女が答えた。
「私を探しているのでしょうか?松下幸助」
俺の木の上から声がする。俺は見上げ、少女を強く睨む。




