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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
古都・妖狐救済編
92/273

91話 変動する感情

幸助が雪姫を助ける役になるとは、幸助の願いが少し叶ったのでなりよりです。しかし、200人とはやりすぎに思える数です。一体、2人はこの穴をどう埋めるのか?加護を持つ人間と持たない人間の実力の差はあるのか?


お知らせです。

8月23日から9月12日までの期間、個人的な都合によりなろう系及びpixivの投稿を休ませていただきたいと思います。博物館実習1週間以上と、最後の夏の満喫、卒論への取り組み期間としてこの間は一切の投稿を休ませていただきます。投稿出来る量は書き終えていますが、この間は一切のストックも書けないため、やむなく休ませて貰うことにしました。来年から社会人ですので、最後の夏休みを味わって夏休みを終わりたいです。

少し小説から離れ、長期の休暇を頂きたいと思います。


pixivの方で1週間投稿した後、こちらに戻ってきますのでご安心ください。この作品及び他の作品を愛読してくれている方々のご期待に応えられるように、これからも小説は書き続けていきますので、よろしくお願いします。

人間に襲われる恐怖が1日も経たない内に訪れる。そんなことも知らず、幸助達は木上を駆け抜ける。


前進しか進む手段はなく、雪姫を背負う幸助はとんでもない標的となってしまった。捕まれば最期、幸助の生存は保証されない。


幸助の予感が、最悪な形で的中した瞬間だった。




俺は雪姫を背負いながら走る。悟美は悠長な奴で、木々を無駄に破壊しながら猿のように走っている。

「アッハハハ‼︎楽しいわ!幸助君も遊ばないの〜?」

「遊ばねえよ。木を派手に壊す暇あったら急ぐぞ」

「シシシッ。さ〜て、どの木を破壊しようかしら〜」

危機感を抱いてない様子で怖え。狂人ってこんな奴ばっかなのか?

悟美が如何に恐ろしくても、これを超える奴はいるだろうな。現に妲己はこれ以上の残虐を好む妖怪だからな。


「雪姫、大丈夫か?」

俺は定期的に様子を聞く。雪姫が森に入って暫くは寝ていたが、時々目を覚ましては俺の質問に答えてくれる。

「大丈夫……でも、体は駄目ね」

体を動かそうにも力は入らないみたいだ。意識はあるが、体が言うことを聞かない、そんな状態だな。

「無理すんなよ?この森を抜けるなら3日も要らねえんだ。一回休むぐらいは問題ねえよ」

「うん…ごめんなさい」

雪姫が森に入るって頑なに言うものだから聞いてやったが、なんでわざわざこんな目に遭ったのに入ろうと言い出したんだろう?

俺は雪姫に理由を聞いてみることにした。

「なあ、なんでこの森を突っ切るだなんて言い出したんだ?その体じゃ移動出来ないだろうし」

雪姫の表情が見えず、俺は前を見ながら聞く。

雪姫が俺の背中と首に冷たい冷気を吐く。

「…時間を掛けたくなかった。幸助が早く楽になれるように。ただ、それだけ」

「それって、俺が“放浪者”となったことを悔やんでいるのか?」

俺を抱きしめる力が僅か強くなった。雪姫の身体は震え、俺を気遣っているのが分かる。

いつもは冷たく強気な雪姫が、こんな弱々しく抱きしめてくると調子が狂う。

というか、守りたくなるような気持ちが湧いてくる。

「幸助は、ゆっくり過ごすのと旅をするの、どっちがいい?」

らしくない質問がきたもんだ。

雪姫の質問にしては二択というのが不思議に思ったが、正直何も考えなかった。

旅をしたい理由はあるが、あのまま過ごすという場合、何かあったのだろうか?

意外と難しい質問だなと思い、暫く走りながら考えた。

「俺は……そうだな、どっちが良いんだろうな?」

俺は考えてみた。

旅の経験が今回が初だし、あんま旅行そのものを真剣に考えたことがなかった。

普通の旅行程度は楽しいが、長旅となると退屈と感じる。

刺激ある旅なら歓迎だけど、今のところは命を狙われるばかり。これを楽しいとは思えない自分がいる。

ゆっくり余生を過ごすのも悪くはない。悪くはないんだが、退屈凌ぎが思い付かない。

持て余す生活は嫌だな。

「逆に雪姫はなんだ?」

「私はゆっくり過ごすのがいい」

「ふっ、雪姫らしい答えだな」

俺は雪姫の答えが雪姫らしいと思い、思わず吹き笑いした。

雪姫は怒らず、なんか嬉しそうな声を漏らす。

「ん?なんか新鮮だな。ここ最近、笑うこと多くなったんじゃねえか?」

雪姫が笑うなんて滅多にないのかなと思ったぐらいだった。なのに、今は俺の目の前でも背中でも溢れた笑みを見ることが増えた気がする。

雪姫が笑う仕草でも見せると、俺がその笑みに触れたいと思うようになっていた。

雪女ユキオンナ』は冷たいイメージが強い。だが、雪姫は冷たさはあるものの、優しさを持ち、伝承とは違う一面を見せる。

俺は伝承通りの妖怪は存在しないと思っている。それを、雪姫が証明している気がする。

雪姫がいると、何かと心地良さを感じられるのはそのせいだと思う。いい意味でな。

「そう?幸助は私が笑うのは、嫌?」

「なんでそうなるんだよ⁉︎あんたが笑うところを見ていたいんだよ。俺に見せてくれた笑顔が俺の安心感に……あっ、いやいや、そうじゃなくて‼︎」

ヤバい。つい本音が漏れちまった!

俺、絶対に馬鹿だと思うだろうぜ。

雪姫が俺を嘲笑う姿、想像したくないが、それはそれで見てみたいものだ。まあ、下品な笑いや人を馬鹿にする嗤いをしないのが雪姫の良いところだし。


「幸助…」


抱きしめる力が強くなり、安心したような温もりを感じた。

「えっ…?」

以前感じた温もりが背中を暖める。

ひんやりしていた背中がぬるくなり、程よい温もりが俺の背中に染みる。


俺は雪姫の顔を覗いた。

意外な反応をする雪姫に、思わず心が乱れた。

白い肌に少し火照った頬、俺の背中で愛くるしいさを見せる様が可愛く見えた。冷たさではなく、自然な魅力を見せる。更には、仄かに俺をみる目が妙な美しさがあった。

シリウスの目って、こんなにも綺麗なのか?

ヤバい……可愛いじゃねえか‼︎

内心で叫んだ。

俺の心で、何かがぐらついた。


そう思ったのも束の間。雪姫の一声で現実へ引き戻される。


「危ない‼︎」


雪姫が俺の髪を引っ張り、首を捻った。俺は痛みで足を止めた。そのまま木から落下するも、運良く腰を強打せずに済んだ。

その直後、頬に擦り傷があるのに気付いた。俺に向かって放ったであろう矢が木に刺さっている。

足を止めなければ、俺は射止められたかも知れなかった。

「幸助、大丈夫⁉︎」

「首が痛えよ。てか、今矢が……おい!速く行くぞ‼︎」

俺は悟美に命令する。しかし、悟美は足を止めて木の上から動かない。

「幸助君、私達を邪悪に見る人間がいっぱいいるわ。数は200と少し多いわね」

そんなにいるのか⁉︎俺の感知能力は全く機能しないんだった。

俺は目で見える情報を元に分析する。

「木と地面で分かれてやがる。地面の奴らは槍と…剣と盾を持ってる。矢は、木の上から打ってきやがったか。悟美、木の上の奴らは任せていいか?」

「シシシッ!良いわよ。皆殺しにして良いかしら?」

「なるべく抑えろよな?まあ、ヤバい奴らなら好きにしろ」

俺は地面にいる敵を一人で担う。木の上で戦うのは雪姫に負担を掛ける。俺自体、木登りは得意じゃねえしな。

悟美には木の上を任せ、殲滅して貰おう。


俺は【絶無】を握る。

「なあ雪姫、妖術使っていいよな?」

この場面だ、流石に使用しないと生き延びれない。

だが雪姫は言う。

「駄目。ここで妖術は使えない。幸助の異能もここでは…」

「っ…だよな。妖術が使えないんだったら何を使えば良いんだよ⁉︎」

俺は妖術を使える。だが、この森では妖術は使用出来ない。

生気を妖力に変換して使用しよう試みたが、妖術類いが一切使えない。

俺は、ただの剣となった【絶無】で戦う羽目になるのか?

「キケケケケッ!男見つけた‼︎滅多刺しにしてやんよー!」

クソ…こいつら全員が能力を持ってやがる。こんな変な笑いする奴にやられるのはごめんだぜ。

俺は目の前の奴らに何も出来ないかと、自分の力無さに失望する。

こいつらの目的は俺を殺す。雪姫や悟美には目もくれていない限り、俺が標的なんだろうな。

“放浪者”となった俺を殺す為に来たのか?それか、俺らの侵入を拒む人か?

理由なんか別にいい。こいつらは俺を殺したいから大勢で押しかけて来たんだ。

悟美と同じ人格者か……マジでうぜえ。


そう思うと、俺は自然と【絶無】を奴らに向けていた。

「おっ?やんのかガキ。剣を向けたからには死んで貰うのは確定だな」

「まずは皮剥いで血を抜いて、目玉と脳、心臓を取り除き、剥いだ皮は人間剥製に、目玉と脳はアクセサリーに……グヘヘ、想像したら楽しみになってきた」

気持ち悪い事を言う奴らだな。

喋るのはかえってめんどくさくなる。俺は静かに、奴らの出方を見る。

俺は冷静に、目に映る敵を探る。

「おいおい!こいつはもっと痛い目がいいだろうぜ?皮を剥ぐ前に、背中にいる妖怪をなぶり殺しにするのもアリだな⁉︎」

「いやいや違うなムラサキ。妖怪と言っても女だ。いい実験台になりそうだぞい?」

「またまた!そこの女は俺達の女になるんだ。男一人は見せつけさせるように磔の刑にしようぜ?」

怒りはあるが、怖いぐらいにこいつらを人間と思えない。俺の中で引っ掛かる言葉を反復する。


俺をダシにして雪姫に手を出すだと…?


何言ってんだこいつら、俺を殺すだけで済まさねえのか……。


なら良いぜ?てめぇらがその気なら俺がやってやるよ。

容赦なく、俺がてめぇらに磔の刑を下してやるぜ。

俺はこいつらに断罪を下す事を決する。

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