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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
古都・妖狐救済編
91/265

90話 人間強襲

今回は不快な発言が多めです。嫌だと思うのは仕方がありません。自分的にもこの発言をさせるキャラクターに同情するぐらいですので。

このストーリーは少しR 18を超える可能性もあるので、ご了承ください。

多分、7章か8章あたりでその枠を超える可能性があります。

森に入った頃、幸助を追う華名達が幸助達がいる森に到着していた。


夜叉は森に入ろうとはせず、遠回りして行くようにと勧める。

「カナ様、この森は聖域陵サンクチュアリです。私はこの森に入れません」

「どうしてですか⁉︎」

「すいません。この森に生息する木々は妖怪にとって天敵です。妖力を吸い、妖怪を無力化させる幹や土、実があちこちに生えております。私がこの森に立ち入れば、僅か数十分もしない時間に動けなくなってしまいます。どうか遠回りを」

華名は夜叉の言葉に疑問を抱く。これほど拒む様子を見た事がなく、夜叉が遠回りを懇願するのに驚く。

だが、華名は時間を無駄に過ごすのを嫌う。

「夜叉?それは夜叉が妖怪だからですか?」

「はい、残念ながら。私や他の妖怪は、伝承に妖怪と記されてこそこの世界に生まれる事が許されます。この森は、人間を守るために生まれた古来から妖怪を寄せ付けない場所です。幾ら私が太古の妖怪であっても、この森の中では人以下になってしまいます」

「そうですか……。ちょっと待って下さい!いい考えがあります!」

華名は既に考えていた。しかし、どうやって夜叉の弱体化を無効にして移動するのかを考える。

(夜叉がこの森に入れないと、守ってくれる人が守護聖女だけになってしまいます。夜叉がいるからこそ生きている私なので、夜叉無しでは行きたくはありません。かと言って、幸助という人を捕まえるのが妲己に言われた命令…。うーん、難しいです。私の異能にどれぐらい限りがあるかは分かりません。夜叉をこの森でも動けるようにプロテクターでも考えて創ってみないとですね)

華名は遠回りというのが頭にない。夜叉と一緒に居ることを望み、離れるのを拒む。


華名は自分の感覚で好みを選び、いざという時ならば、目的を放棄するのも厭わない。とても切り捨てが良い性格をしているが、華名の場合、少し過剰に現れる。


「夜叉、思い付きました‼︎貴女が大丈夫なものが作れますよ!」

目を光らせ、嬉々と夜叉の問題解決を話す。

「どういうことでしょうか?」

「こうですよ!こう!」

華名は透明な空玉からだまを創る。

「カナ様、それをどうするのですか?」

「この空玉を夜叉の身体に纏わせるのです。空玉の外側は外と中の空間が隔離された状態になり、外の影響は受けません。ついでに、夜叉が10日間万全に動けるぐらいの妖力を内側に補充していますので、心配要りません」

やる事が早く、華名は夜叉の不安を解消する。

不安がなくなり、夜叉も森に入る事が可能になる。


だが、夜叉は森の中から異様な気配を感じ取る。足を止め、森の先を凝視する。

「夜叉?そんな悩んでどうしたんですか?もしかして、私の力不足ですか?」

華名は気付いていない。夜叉は覚悟して口を開く。

「いいえ。この森に人間が多数存在します。偶然にも、目的の彼もこの森にいます。しかし、他の人間に注意しなければなりません。カナ様、人間を殺めなければならないですが、心の準備はよろしいですか?」

平気に人間に手をかけると発言するが、罪悪感というものは存在しない。夜叉は人間を平等に扱う妖怪であれば、人間を食らう恐ろしい一面も持つ。

女としての夜叉は優しさの一面でんしょうを持つ故、華名は夜叉に守られている。

華名の意思を尊重し、華名の言うままに従う。

「松下幸助を捕らえましょう。妲己さんは怖い人ですし……もう、怒らせるのは嫌ですから。他の人はなるべく、酷い目には遭わせないで下さいね?」

「分かりました。人間は後遺症残る程度で生かすとしましょう」

「それは駄目ですよ⁉︎人は怪我を受けたら死んでしまうので!絶対に、酷い目には遭わせないで下さい!」

華名は人道に反する行為を認めない。夜叉はそれを見て微笑む。


森に入り、華名と夜叉は幸助を探しに走る。尚、華名は夜叉にお姫様抱っこされての移動である。


華名は此処に来るまで、一度たりとも、自力で走ってはいない。


華名の我儘に振り回されながらも、夜叉は怒る事なく要望に従う。




森には幸助と同じ人間が住処としていた。

元々、死んだ人間や迷い込んでしまった人間が安全を求め、妖怪が寄り付かないこの森へと避難した。

避難し、集まった者達で繁殖が行われた事で、何代も此処での生活が強いられている。


だが、この森で生まれた者には常識が通じない人間が大半を占めており、外部の人間や妖怪には容赦なく襲い掛かる。


男は拷問し、女であれば利用価値として生かされる。古来の人間と同じように生活し、本能に近い行動を善とする狂人集団で、殺生に悪を感じない。


聖域陵には約500人がまとまって住み着いており、独自の文化が形成されている。

完全に外部と断ち、立ち聳える木々に家を建て、生活をする為に狩りをする。狩りをするにあたって、住む者達にはルールが設けられている。


一、森から出てはならない


二、森に侵入した者を捕らえ、血肉を散らす


三、森以外の文化に触れてはならない


四、女は殺すな。また、男は殺せ


五、森の禁忌を犯した者には死を



とても同じ人間とは思えないルールが決められており、危険地帯とは知らずに踏み込んだ者達は帰らぬ人となる。

この聖域陵の人間も異能を有しており、この世界で生まれた人間にも異能は宿る。

彼らに名前を呼び合う概念はなく、色の名で呼び合っている。


「おいクロ、これで何人目だ?」

「今月入って4人目だずぜ。女が居ないのが残念ってところだが。アカは女が欲しいんだずぜ?」

「そうだ。花嫁を見つけソイツを捕らえ、ヤれば子供が出来る。どうせ女なんか子供作るだけのお荷物だしな」

「それは言えてるな!どんなヤツを狙ってだずぜ?」

アカとクロは最低な会話を繰り広げる。アカと名乗る男はこの森の支配者とも言える人間である。クロはその支配者に従う一人。

「髪が異質な色が良いな。赤や白、青なんかも良い」

「ブフフフッ!変わりもんだずぜアカ」

「言われたくないものだな。クロこそ、乳房に興奮する変わり者だからな」

不快と思わず、この会話を普通だと認識しての会話のため、彼らの倫理観とは崩壊しているようなものだ。

性に対する知識が欠け、他の常識にすら欠ける部分があり、まともに話し合えるわけがない。


彼らに意思疎通が出来る者がいるのならば、是非とも探したいものだ。


「おいアカ、クロ。人間が入り込んだぞ」

「来たか……。で、誰が死にに来たか分かるか?」

感知したアオは、この森の中で唯一、感知系異能を持ち、森全体にアンテナを張るような感知を得意とする。

限定範囲であるが、正確に相手の容姿と性別を見分けるぐらい、感知力が優れている。

「ああ、アカに朗報だ。女が五人、男が一人、ペットが一匹、聖域陵サンクチュアリに侵入が確認出来た。ちょうど、異色の髪を持つ女とおっぱいのデカい女がいるぞ?」

「ラッキーなもんだずぜ!乳房が豊満なヤツを捕まえられるなんてよー‼︎」

「そうだな。オレの好みの女なら歓迎だ」

アオの報告にクロはガッツポーズをする。アカも卑しい顔で笑う。


二人とも欲に忠実であり、幸助達の侵入に喜ぶ。それに反し、アオの顔は喜びとは違う表情を浮かべる。


雪姫とすね子が妖怪の気配だというのに気付き、みるみる顔が青褪めていく。


アオが青褪めている顔を見て、アカとクロが喜ぶのをやめた。

「どうした?まさか妖怪が紛れているのか?」

アカは何となく気付いていた。アオの只事ではない表情を読み取った。

幸助達の中に妖怪がいる。この森における恐怖の存在なのだ。

「間違いない…妖怪だ。こっちに向かって走ってきてる‼︎」

「馬鹿な⁉︎妖怪はこの森に入れない筈だ。何か感知違いだ」

聖域陵に妖怪が入り込もうとした例はない。それは先代である人間の時も同様で、妖怪が立ち入れない森だという認識があった。

だが、妖怪が数人侵入してきたのは間違いなく事実。アオが青褪めるのも納得する。

アカは恐怖を戦闘欲に変換する。

「いいだろ!このオレがヤツらを叩きのめしてやる‼︎アオ、案内しろ」

「い、いいんですか⁉︎相手は妖怪、他の人員も…」

「要らない。どうせ、自分の異能も理解出来ない連中だ。遅れをとる真似はない」

アカには余裕があった。その溢れる自信は己の確信と異能を理解しているからだ。

「そうだった‼︎アカは唯一の“覚醒者”!この森の首領になったのもそういう事だったな」

人間の中でも、極稀に自分の異能を知覚できる者が現れる事がある。

その者を“覚醒者”と呼び、己に宿る異能を完全に把握する。

異能を理解した者としていない者との異能行使能力に大きな差が生じる。そして、異能の最大活用方法が段違いに変わり、手足のように異能を使用する。


アカは“覚醒者”と呼ばれ、自身の異能を最も理解し、操作力も群を抜く。


「オレを他の人間と比べるな。女は生かし、男は殺す。どうやら、一人の人間は女を飼い慣らしているみたいだしな。男の喜びを知らずに殺すのは忍びないが、どうでもいい」

アカはお気に入りの斧を手に取り、先陣を指揮る。

「お前ら、絶対に女を逃すな!男は容赦なく殺せ‼︎相手はたった七人、容易く捕まえられる。敵は前方と後方でこっちに向かう。オレとアオの部下はオレに付いて来い!クロ、他のヤツらは後方から来る女を迎え撃て」

幸助達、華名達が聖域陵サンクチュアリに立ち入った事で、侵入者として戦闘態勢に切り替わる。


聖域陵に踏み込んだ彼らを迎え、それぞれ武器を掲げ、森の大木や地を蹴る。


その勢いは欲望に従う野獣のように速く、目的の為なら疲れを知らぬ野生の人間の群れが走り出してしまった。

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