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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
古都・妖狐救済編
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87話 託された願い

褒姒がそういうキャラクターに思えないかも知れませんが、妲己と褒姒はある共通点があります。それ故に救いたいと強い意志が芽生えているんですね。純妖と混妖を設定で分けた理由もこの二人が大きいです。


明日はこちらは休み、『妖界放浪記・長編』を投稿します。急ですが、不定期に今は投稿しておこうかと思ってます。

俺は雪姫が戻るまで待っていた。叫び声や悲鳴が聞こえたが、雪姫によるものだと直ぐに理解する。

耳を澄ましてみると、思ったよりも防音の性能は疎かだ。

あいつ、俺が妖怪を殺せないからって代わりに担いやがって!俺だって……。


俺はそう強く思ったが、俺は妖怪に手を出せないのを自覚している。


あまり気が乗らず、雪姫の帰りを待つ。


突然、ふわっと風が吹く。一瞬、雪姫が帰ってきたのかと思ったが、冷たさがない。

狭い部屋の筈なのに、風が何処から発生する。

いや違う。何かが入ってきたんだ‼︎

俺は【絶無】を構え、風が吹く方向に向ける。

風が渦を巻き、狭い部屋を荒らす。俺の背後で気配なく現れた不気味な竜巻が恐ろしく感じる。

「誰だ⁉︎」

恐らく妖怪。なら、俺は最悪逃げる手段を取らなければならない。


しかし、俺の目の前に現れた人物に、俺の心が乱される。

「えっ……待てよ」

俺は自分の目を疑った。

「お久しぶりです。お客様」

「な……あんた、どうして…?」

妖都で出会った、寿司屋で働いていた女性店員だ。

あまりのインパクトに、俺は自分の頬をつねった。

「痛あっ‼︎…夢じゃねえ」

「当たり前ですよ?これは現実です。私も本物ですから」

くすっと笑う彼女は本物だと確信した。

その声は聞き覚えがある。姿は質素な着物と異なるが、間違いなく本人だった。

ちょっと色気を感じるのは、俺の気のせいだな。


俺は彼女に聞きたいことがあった。

「なあ、なんで今まで消えてたんだよ?俺、あんたが心配になって探したんだぜ?」

交流会の間、俺は都市中の人を隈なく観察したが、誰一人も一致する人がいなかった。

俺の心配を彼女は笑う。

「ごめんなさいお客様。私もあの時、秋水というお人に狙われていまして。命からがら逃げたのは良かったのですが、私の異能を発動した際、誤った消去をしてしまいました…」

「やっぱそうだったんだな。でも、殺されなくて良かった…」

俺の心配が解消されて気持ちがスッキリした。生きているのと、なんで皆んなの記憶から彼女の記憶が消えていたのかの理由が分かった。

けど、彼女の持つ能力、かなりの能力ものじゃね⁉︎

「異能…あんたが使った異能はとんでもねえ代物だろ?俺以外、誰の記憶にもあんたがなかったんだ。俺が変人扱いされちまって、幽霊でも会ったのかと思っちまったぜ」

「まあ、それは失礼しました!お客様だけ、私を知っていて下さったのですね⁉︎」

不思議な感じで口元を押さえて驚く彼女。

俺だけが覚えていることに、当然驚くだろうな。自分の能力で消したのに、俺だけ覚えているって可笑しいし。

「とりあえず、あそこで死ななくて良かったよ。で、なんで俺の前に現れてくれたんだ?」

急に現れ、俺に何か伝えたかったのかと思う。

その通りみたいで、彼女は苦い表情をする。

「そうですね…お客様には告げておきたい言伝があります。この言伝は他言しても問題ありません。私の存在を明かしても構いません。それでも、必ず果たして頂きたい大事なのです」

頭を下げ、それが意味する重大さを態度から感じる。相当な案件を持ってきたな、これは……。

「分かった。あんたには恩がある。その言伝ってやつを話してくれ」

信じることにした。


俺は聞く姿勢で彼女の話に意識を向ける。彼女はなんでか不思議そうな表情で俺に聞く。

「あの…断らないのですか?」

「ん?別に断る理由なんかねえだろ?俺は來嘛羅との縁を繋げてくれたあんたには凄い恩を感じているんだぜ?そんな恩人の願いを聞かないでバチは当たりするつもりはねえよ」

「はぁ……。お客様はお優しいのですね?」

「優しいのか?」

「はい。私の願いを聞いて下さるというだけでも、人としてはお優しいと思います。他の方は、皆さんが恐ろしいと断るのですが。どうやら、貴方には託せる人と」

何度も頼み込んだみたいだが、皆んなが断ったのか、彼女の表情に疲れがあるように感じられた。

本当にどんな人なんだ?彼女の正体は人間であるのは……。

ただ、その時、俺はある事に気付いた。

「それは辛いよな?俺が代わりに果たしてやるよ。あんたが悩む理由は、俺にしか解決出来ないことだろ?」

彼女は真剣な表情で頷く。

「その通りで御座います。お客様……あの、名前の方、伺っておりませんでした。名前よろしいでしょうか?」

「そうだったな。俺は松下幸助だ」

「そうでしたのですね。では、改めて幸助さんにお願いをします」

名前で呼び、彼女は依頼を告げる。

「現在、幸助さんが向かわれている古都を守護する妲己さ…九尾狐の妲己をお救い下さい」

そう告げると、風に巻き込まれるように姿が消えていく。


消えていく彼女に俺は必死に聞く。

「ちょっと待った!妲己って、なんかあったのか⁉︎」

「言葉通りです。妲己は幸助さんを執拗に狙っています。今、雪女が一掃する刺客も彼女による策略です。お願いです、貴方にかかっています。わたくしめからのお願いです」

「マジかよ⁉︎お、おいっ‼︎まだ聞きたいことが——」

「ご武運を」

そう言い残し、跡形もなく彼女は消えてしまった。

ほんの数分限りの会話と重要な依頼。あまりにも濃い時間だった。

会えた喜びと託された願いの重大さ。あまりにも割に合わねえ。

「名前、聞いておきたかった…」

俺は名前が聞けなくて溜息を吐く。




その直後、片付いたのか、雪姫が帰ってきた。

「幸助、襲ってくる妖怪を退けてきたからもう大丈夫。3日は休養を取りましょ」

「雪姫、敵は妲己だったみたいだ。怪我はなかったか?」

「そう……妲己なのね?あの妖怪を操って幸助を…‼︎」

自分の心配よりも、妲己に対する怒りを露わにする雪姫。

「寒いからやめてくれよ。てか、妲己は俺を目障りに思って……おいおいおいっ‼︎部屋が凍るからめろぉー‼︎」

「幸助には影響は少ないから大丈夫。気持ちが寒くなるだけ」

冗談を言っているようには聞こえないから怖い。火に油を注いだみたいで最悪だ。

「寒い寒い寒い‼︎凍え死ぬから!」

桶屋がとんでもない事になる。それと、俺達のベットが凍って使い物にならなくなってる。

「にゃ…ぁ…にゃあ……」

「すね子⁉︎おい雪姫、もうやめろ‼︎すね子が凍っちまう!」

ベットに忍び込んでいたすね子が半凍状態になり、危うく死にかけていた。

俺は急いで外に出し、焚き火で解凍した。




結局、俺と雪姫は桶屋で寝られず、外にかまくら作って寝る羽目になった。

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