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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
古都・妖狐救済編
85/265

84話  村落到着

台風が激しくなってましたが、今は大分落ち着きました。ネット環境があまり良くないので、1日遅れて投稿するかもしれません。

俺達は同じサイクルを繰り返すように旅をしていた。

10日過ぎ、20日過ぎ、そろそろひと月が経とうとしていた。

旅の間、周りを警戒しながら歩き続け、ただ無口にならないように会話をしていた。話さないと時間が止まっているように感じ、日が沈むまではただ歩かなくてはならない。気分を紛らわすものとして話している。


しかし、それは限界が来るのは分かっている。


幸いというべきか否か、この旅を始めてから俺達は、妖怪に襲われていない。


そう、一度もだ。


不思議なことにだ。俺達は一度も妖怪と出会したことがない。

「全然感じないわね〜。妖怪も人も見つからないわ」

悟美は退屈し始めていた。

狂人のような悟美が退屈すると何をしでかすか分からない。

「暴れるなよ?退屈でも進むしかねえんだからな」

「古都だっけ?來嘛羅が言っていた場所はまだかしら?」

「そうだよ。まずは、大獄丸が出現する古都から言ってくれって言われたからな。道はこの貰った磁石が頼りなんだよ」

俺は懐から磁石を取り出す。

ただの方位磁針のように見えるが、特殊な細工が施されている。この世界に古都・怪都・最都・妖都の四つの都市があるんだが、この方位磁針にはその都市にある妖力に反応する。

妖力に反応し、都市を目指す仕組みとなっていて、行くべき場所が予め組み込まれているため、俺が何か設定する必要はない。

俺が行く順番は、古都・怪都・最都の順番だ。

この方位磁針がなければ、俺達は古都に辿り着けなくなる。これは手放さねえように大事に持っとく。

しかし、一番近い古都でも歩けば数ヶ月掛かるって言われた。恐らく、古都から怪都に行くのはその倍以上掛かると俺は予想する。長旅としては長過ぎる。

だが、寿命を気にする必要がねえから歳は気にしなくて済む。加護によって歳は取らなくなっているみたいだし。

大体、雪姫の加護は100年ぐらいで、來嘛羅は2000年もあるみたいだ。

かなりの差はあるが、俺は別に気にならない。

「それ壊しちゃっていいかしら〜?」

「巫山戯んなよ?これ壊れちまったら何処も行けなくなっちまう」

「えへへ、冗談よ」

冗談が通じるから良いものの、悟美は本気でヤバい事をしかねない。それが唯一する心配だ。

また歩き、俺達の目的地は今だに見えない。それどころか、村落すら見つからねえ。

こうなると、悟美が退屈するのも無理はない。

紗夜はずっと悟美の影に隠れ、夜以外は出てこない。一番疲れない筈なのに、俺達が歩いている間は顔を出すことが殆どない。

気味が悪いとしか言いようがない奴だ。

「おい紗夜!てめぇだけ昼間歩かねえとか狡いぜ!一緒に歩かないのかよ⁉︎」

俺は昼になる度に悟美の影に向かって叫んでいる。

だが、昼間に返事することはほぼない。それどころか、悟美は俺に脅迫する。

「紗夜は一番頑張っているわ。なのに、それ以上言うのなら無駄口叩けないようにしてあげてもいいけど?」

怒るのではなく笑っているのが余計に怖い。

だが、もうひと月歩き続けていた俺は頭にきていたのだろう。悟美に反発するのが止まらない。

「っ…そうかよ。悟美、てめぇはいつも紗夜が強い強いって言ってるが、ホントは可愛がるあまりに庇ってるだけだろうが!」

「シシシッ、幸助君は何も分かっていないわ。紗夜は特別なの。私と違って紗夜は貴方に言われる雑魚じゃないわ。貴方こそ、自分の異能を把握出来ていない未熟者だわ」

悟美は一向に怒りは見せず、俺に対して不敵に笑う。

悟美が嘘を吐かないのは知っているが、紗夜の実力を俺は疑っている。

紗夜を疑うようになったのは、この旅が始まってからではない。妖都にいる間、こいつが影の中にいる以外の能力を見せたことがない。

そこで俺は確信した。紗夜は影を操る異能で、暗殺者アサシンの格好をするのも、影からの奇襲が取り柄なんだろう。

分華から聞いた話をまとめ、俺は紗夜の強さを勝手に測った。

影からの攻撃を得意とする忍者のような奴だ。影さえ注意すれば大したことはない。

「どうせ冗談だろ?俺は來嘛羅に教えて貰ったからな。紗夜も教えて貰ってるんだろ?」

「紗夜のだけは誰も知らないわ。紗夜自身もね」

「なんだよそれ…」

悟美は紗夜の異能を知らないみたいだ。悟美だけは來嘛羅から教えて貰ったみたいだが、紗夜は誰にも明かされていないとのこと。

來嘛羅だったら知ってるだろうに。なんでだ?教える必要がなかったわけなのか?

俺の能力と比べたら強いかも知れねえが、要は実力次第だろう。

これ以上、俺達が喧嘩したところで無意味だと思い、俺は紗夜の件に触れないようにした。

「幸助、喧嘩はやめなさい」

雪姫に咎められる。

「それはそうだが、紗夜はずっと影にいるんだぜ?」

「彼女は私達が動けない時に動いてる。それも、私達よりもね。毎日見ているけど、とても人が出来る真似ではなかった」

「ん?俺達が動けない時ってなんだよ?」

紗夜が動いているところは見ていない。雪姫の言葉を疑った。

「だから、幸助が彼女に対して怒るのは少し違う。怒りを向けるのは、紗夜を理解してからでも遅くない」

雪姫が何か知っている風で、俺はその言葉が間違ってないと信じたい。

人を無闇に疑うのも疲れるしな。

「分かったよ。紗夜が頑張っているなら、もう言わねえよ」

俺は怒りを鎮め、旅の目的を意識して気を紛らわせた。




そして数日が経ち、やっと荒野を抜け出せた。

延々と同じ景色の中に、町らしき建物を見つけた。

景色は荒野で殺風景の中にポツリと置かれてたような町だった。

でも、亡夜とは雰囲気が違う。寒いのは兎も角、なんか町とは思えないような空気が漂う。

誰かに睨まれている気配を感じる。亡夜の妖怪にはなかった殺意ある空気だった。

漸く、寝泊まりがまともにできる場所に辿り着いたのだ。


俺は長旅の末に辿り着いた町の手前で腰を下ろした。どっと疲れが出てきて、歩く気がなくなる。

同時に、俺はやっと休めると思い、安堵した。

「はぁ〜疲れた!」

「暫くは休めるか、私が妖怪に聞いてみる。幸助達は、ゆっくり待って」

雪姫は早速、この町の住民に宿泊可能かを聞きに行った。

時間は夕方を過ぎている。泊まれなければ野宿は決定だな。

俺の肩に乗るすね子は唸っていた。

「どうしたすね子?町になんかあるのか?」

明らかに警戒している。しかも、この町に着いてからだ。今にも飛び付きそうな勢いだ。

「幸助君、この町面白い匂いがするわ」

「何言ってやがる。この町はただの町だろ?」

「シシシッ、まだ古都じゃないのに此処が町な筈がないわ」

「はぁ⁉︎それはどういうことだよ⁉︎」

「分からない?此処は村落なのよ。しかも、かなり面白いのが潜んでいるわ」

俺はもう一度町を睨む。

よく見ると、明らかに建物が統一された感じがなく、高い建物もない。おんぼろの家ばかりが並び、妖怪の服もボロボロだ。

俺は知っている妖怪がいるか確認するが、それらしき妖怪は誰一人いない。

本当に悟美の言う通りだ。此処は間違いなく村落だ。

つまり、この町は町じゃなく、危険地帯の村なんだ。

「マジかよ…。ちょっと雪姫を連れ戻して……」

俺は村に行った雪姫を連れ戻そうと腰を上げる。

タイミングよく、俺の目の前で吹雪が舞う。吹雪の中から雪姫が現れた。

「幸助、この町は村落だった」

「じゃ、じゃあ留まらず野宿するんだろ?」

雪姫は首を横に振る。

「その心配は要らない。3日間、この村落に滞在する許可を貰えたの。そして、村落に住む者が私達に危害を加えないと約束してくれた」

雪姫の手慣れた手続きをしてくれた。そして、俺達がゆっくり休めるように危害を加えないとも約束したらしい。

雪姫が言うなら大丈夫だと確信した。

「そっか。なら良かったぜ」

「でも油断は出来ない。この村落に私達を狙う人がいるみたい。住民じゃない別の存在が隠れ潜んでいる」

雪姫の眼差しが村に向けられている。やはり気にしている様子。

「じゃあ、なんで泊まるんだよ⁉︎泊まったら襲われるんじゃねえのか?」

雪姫が考え無しで宿泊を求めるわけがない。

危険な奴らがいるのなら離れた方がいい。

雪姫は自信ある笑みを浮かべる。

「大丈夫、私が幸助を守る。3日間、村落から離れずに休みなさい。そうすれば、問題なく済むから」

「…本当か?」

「うん、幸助と紗夜、すね子は大分消耗しているからきちんと休んで。悟美は少し手伝える?」

「問題ないわ。寧ろ、退屈凌ぎは臨むところだわ!」

雪姫が悟美に問題ないかを聞く。悟美は二つ返事で承諾する。あまりにもテンポ良過ぎて仲良いのかと疑いそうだ。

「そういうことだから、幸助は私と一緒にいて。他の皆んなも同じ宿屋を取ろうと思ったけど、残念ながら取れなかった」

雪姫は冷静にそう告げる。俺は疑問を聞く。

「おい、部屋は別々なのか?」

「うん、此処には宿屋という大した場所はない。代わりに桶屋おけやがあるみたい。でも、一組二人までが上限ね」

なんか嫌な名前が出てきたな。桶屋って、俺聞いたことねえよ。

ちょっと文句言いたいが、雪姫は危険を顧みずに交渉したんだ。この条件に頷くしかない。




俺達は指定された宿屋であろう桶屋に着いた。雪姫と俺が泊まる宿は思ったよりも小さく、二人にしては窮屈な宿だ。

「合ってるのか?」

「此処で間違いない……狭いね」

「大丈夫か?」

俺は期待しないで古そうな扉を開ける。

しかし、中を見た瞬間、俺は絶句した。


俺の想像をぶち壊す宿が目の前にあったのだ。

僅かな一畳の畳があり、その中にベットが一人分が敷かれている。玄関があるが、人が二人立つのが精一杯の空間しかない。

「…ごめんなさい」

何に謝ったのか、雪姫は薄目で俺に訴えるように見た。

「別にいいよ。休息取れるなら文句言わねえ」

「そう……良かった」

雪姫が手配したものに文句は言わない。困らせるからではなく、単に俺達を思っての行動だから文句言う権はねえ。

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