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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
古都・妖狐救済編
84/265

83話 旅につきもの

よく旅系のものを読んだり、冒険物語を読みますが、普通どうしてるんでしょうか?洗濯しなかったら臭いですよね?ただ自分が気になるから書いたので、この回は和むようでちょっとギャグ要素も入れました。シリアス展開が続くと疲れますし、こういった旅の内容も書いていきます。多分、4章辺りから書く量は増えるので、妖怪や人間との戦闘を見たい方は飽きてしまうかもしれませんね。

その代わり、この物語自体が予定すると8章辺りまで書く感じです。とても長く、終わるまで毎日投稿したとしても2年は掛かります。

長編でも追加要素あるので、現段階で9章ぐらいです。


後書きにリンクを貼っておきます。設定が気になる方は見てください。ほぼ確定した設定ですので、今後はこれを基準としてこの物語と『妖界放浪記・長編』を書いていきます。

内容の矛盾点や疑問点、質問があればお答えします!

俺の旅は過酷そのものだった。

一向に真っ直ぐ歩いても建物や山が一切見えない。木々や川は歩く途中にチラッと確認できるから、一応は水問題は困らなくて済む。

人は3日か4日飲まなかったら死ぬと言われているからな。俺は妖術で水を氷にし、雪姫がそれを収納する。水分補給として氷を舐めて解消したわけだ。休むとなれば氷を溶かして水かお湯にすれば飲めるし。


食糧問題?これに関しても、意外と対応が楽だった。

妖界の都市を離れた場所には動物が多いのか、鳥や魚が簡単に見つかる。そして、それらを捕まえるには武器で容易だった。まあ、悟美が空中の鳥に三節棍を投げて墜落させた時はドン引きしたがな。


じゃあ何に困ってるかって?


來嘛羅の人選を疑った。

放浪の旅が始まって10日目、俺は一番苦労することを知ってしまったのだ。

「幸助、そろそろ寝泊まりしましょ?」

それは、歩き始めていると必ず訪れる。

「そうだな。もう随分歩いたしな。この見晴らしのいい場所でテントを張るか?」

「そうしましょ。幸助、あなたはかまくらを作って。私は柵を作るから」

「それでやろう!危険がない方が安心して眠れるしな。二階建てにでもしてやろうかな」

「それは無理。あなたの力ではそんな緻密な操作は出来ない。私が手伝ってあげるから」

俺と雪姫が寝泊まりする場所を作る。その際、俺は家を作り、雪姫には柵と罠を張って貰う。


野宿する上で気を付けるべきは敵襲や夜襲だ。今だにそれはないが、雪姫はその危険性を把握し、俺達はそれに従って野営する。


俺達は日が沈むと休息を取り、次の日に影響しないように休みをしっかり取る。休めなければ歩けなくなるし、俺はそれはなんとか避けたい。

10日もすれば作り慣れてくるし、かまくらに近いものが今は二階建てにまで建てられるようになった。ま、雪姫が俺の建物に手を付け加えてるんだけどな。俺の妖術は雪姫には劣っているのもあるし、二階建てが作れるわけがない。

「無理はしないで幸助。あなたの生気は直ぐには回復しないから疲れてしまう。ここは私に任せて」

「いつも悪いな。俺が頼らなくて…」

「無理もない。幸助は妖力が少ないから妖術は限られてる。本物の妖怪になれば使えるようになるけど」

「妖怪じゃねえから無理だろ。あんたみたいになってみてえよ。妖術バンバン使える肉体でも欲しいぜ!」

俺は馬鹿な妄想を口にして作業を進めた。

いつも俺より働こうとする雪姫。俺は最初反対したが、雪姫の言っていることは理に適っている。

加護は受けたが、妖力を大量に取り込む体質になるわけではなく、あくまでも、妖怪にならない体質を獲得するだけで、妖力を取り込んで回復するのは通常はできない。

だが、俺は雪姫と來嘛羅の妖術を使えるようになってからは自然と回復できるようになった。俺が眠って回復しようとしても全回復はしない。数日は回復し切らず、連続して妖術を使うと枯渇してしまう。

逆に、雪姫は空気中に含まれている妖力を取り込むことで、半日も掛からず回復するそうだ。枯渇しても数時間すれば活動できるのが妖怪の強みである。

俺が三割だとすると、雪姫が七割負担している状況。これがベストだから仕方がないのだが…。

「いつも悪いな。妖力の方は大丈夫か?」

「問題ない。幸助こそ、連日歩いているけど大丈夫?疲れたら私が背負うから」

「それは断るぜ。普通におんぶは遠慮するよ」

「そう…」

日に日に雪姫の心配が目立つようになってきたのも問題だが、これよりもデカい問題があった。


それは、生理現象でも言えるものだった。


雪姫の住処ではそういうのはなかったから良かったが、普通に体の臭いや汚れが気になる。臭いのは嫌いなのが普通だが、歩いた後に汗を掻くのはごく自然な生理現象。同じ服を着ているというのは不快に思う。

旅で洗濯できる場所は見つからねえし、自力で洗うしかない。

だから、服を洗うのに俺は困っていた。そこで、更なる追い討ちに遭う。

「ね〜ご飯獲ってきたわよ?お肉、捌いて良いかしら〜?」

悟美が狩猟担当で決まっている。旅を始めてから悟美の狩猟が決まり、毎回任せている。食べるのは困らないのは悟美のお陰とも言える。

「悟美ちゃん…私がやっときます」

「じゃあお願い。包丁か三節棍のどっちで捌く?」

「いや…包丁にしないと…」

「シシシッ、冗談よ」

料理するから臭いが服に染み付く。悟美は気にしない素振り、まるで野生の女みたいに頓着がない。

紗夜は気にしているようで、どうしても体の臭いは慣れないとのこと。

まあ、旅あるあるといえるのかもな。

洗濯物をどうするかが一番の悩みどころだ。誰も洗濯できるような異能も妖術もねえし、こればかりはどうしようもない。

しかし、この問題をただ黙っているわけにはいかない。不衛生で体の臭いが酷くなれば、互いが不快に思うし、臭いが原因で旅どころではなくなる。


俺はこの問題に取り掛かろうとした。


すね子は俺の背後で焼いた肉にかぶり付き、俺達は火を囲って食べ、夕食を食べている時、俺が提案した。

「なあ、ちょっと言い難いんだけど」

「どうしたの?」

「服、洗わねえか?皆んな、臭いとかありそうだし」

「「「っ⁉︎」」」

全員が驚く。しかし、思うところはあるようで、紗夜は強く否定した。

「いっ、嫌です‼︎不埒者!変態っ‼︎」

そうだよな…。こういう反応するだろうな。紗夜の拒絶は無理もない。

「幸助く〜ん?私達の匂いが良いのかしら〜?シシシッ、変態」

馬鹿にするように笑う悟美。こいつもなんとなく察していた反応をする。

問題は……。

「幸助?どうして、その話をする必要があるの?」

冷たい声で俺を細目で睨む。

「だから、旅してから臭いがキツくなってな?洗いたいんだが…」

「……そう」

あまり雪姫を怒らせたくはなかった。女性のプライバシーを聞いてしまい、俺的にヤバい質問をしたと後悔する。

雪姫は俺に近付き、どういうわけか、俺の首元を嗅ぎ始めた。匂いを嗅いでいる仕草をしているが、全く匂いを嗅いでいる音はなく、無表情でしっかり嗅いでくる。

「おい!雪姫…」

「静かに。臭いは……問題ない。幸助の匂いは汗は混じっているけど、臭くはない。体臭を気にしているみたいだけど、それも特に感じられない。でも、この化け狐の臭いは強い…。幸助を抱きしめた時についた臭いね。でも不思議ね。この匂いが意外と…」

「もう良いから!甘口コメントしなくて良いから‼︎」

雪姫から俺は咄嗟に離れては叫ぶ。

なんでか、雪姫がやり切れていない不満な表情をする。

「恥ずかしがる必要はない。幸助の匂いは悪くない」

「それが恥ずかしいんだって!なあ、流石に汗でやられるのは嫌だから洗濯する。ちゃんと無臭になるまで洗ってくる!」

恥ずかしいと言ったらもう最悪だ。洗った方がマシだと思い、食べている飯を頬張り、近くの川に一人で行った。


「たく、俺は臭いと人に嫌われるから嫌なんだよ。なんで理解してくれねえんだよ」

俺は一人文句言い、着ている服を脱ぐ。

川の水に漬け、俺は臭いを落とそうとするが、肝心なことに気付く。

「石鹸とタオル…忘れた」

外は寒いのに、夏なのかというぐらいの汗を掻き始めた。

イラっとして洗濯しようとしたら、まさか道具を忘れるとは……。

やべえ…やっちまった。

もう全部濡らしてしまった。そして、人には言えない格好をしている。

このまま戻れば、俺は変態と言われてしまう。

取りに行くにしても、かまくらの中にあるタオルは雪姫達の前を通らなければ通過できない。

濡れた服で行くのも考えたが、それはそれで嫌だ。

俺が悩んでいる時、背後から草が何かと擦れる音がした。

俺は咄嗟に地面においていた刀剣を構える。

だが、草むらから現れた存在を見て、俺はほっこりする。

「にゃあ〜!」

「なんだ、すね子か」

そして、俺はすね子の背中に乗っているものを見て神だと思った。

「石鹸とタオルじゃねえか!それと…マッチも⁉︎助かるぜ!」

嬉しさのあまり、俺はすね子を抱きしめた。

「にゃっ⁉︎」

「お前って奴は最高だぜ!神猫かみねこじゃねえかよ!マジで救われちまったよ!」

ちょっと人間みたいな悲鳴が聞こえるが、それは気のせいだと思った。

気の利く奴で凄え良かった。

すね子がいなかったら、俺はここで最悪を迎えていたな。

音もなく目の前に誰かいた。

「……」

「……え?」

俺は幻覚を見ているのか?

俺の目の前に、見覚えある女性がいた。

それも、今日使っていた包丁を持って……。俺の方に包丁をゆっくり向ける。

その目は泣いており、異形を見ているかのような恐怖の顔をしている。

「あ…あぁ…‼︎へ、へん…」

「待て!服を洗っていただけなんだ!今叫ばれたら——」

俺を見た紗夜は絶叫した。

「いやあああーーーっっ‼︎ふしだらな格好をした変態がいますぅ‼︎」

この後、俺は雪姫にこっぴどく怒られたのだけ覚えている。

そして、新たなルールを決められてしまった。今後、俺が洗濯物を自分で洗うのは禁止され、雪姫が洗濯を担うこととなった。

何故……?

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