表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖界放浪記  作者: 善童のぶ
放浪前記
78/265

77話 真偽の定か

ちょっと中途半端で終わっています。ここは長編でしっかり会話を繋げるつもりです。この先を繋げるとかなり長くなりますし、今後もこの部分に訂正を入れていく可能性もありますので。

雪姫が少し縛り強めなので、雪女らしさと少し重なる部分はあるかと思います。伝承知っている人は多いかもしれませんが、雪女はかなり怖い一面があります。それがこのストーリーでも遺憾無く発揮されるので、温かい目でみてください。雪女自体は好きなので、かなりの活躍をさせてあげたいです。一応、この作品の重要人物とだけは言っておきます。


『妖界放浪記・長編』の方は一応作品名だけは今日にでも作っておこうかと思います。最悪、設定の方だけは投稿するかも知れません。作り込んではいますので、投稿しようなら出来ます。

内容も会話もやり取りや仕草、心情なども含めて追加するので、ここで投稿するよりも内容は濃くなるかと思います。

短縮していた主人公と雪姫との半年間を追記する予定です。鍛錬する期間をごっそり削っているので、成長物語をきちんと書いておこうと思います。

俺達が気付いた頃には、既に宝物庫から転移していた。來嘛羅の転移能力は瞬きする間に起き、一瞬の出来事で頭が回らない。

それを無視して、來嘛羅は席に座ってこちらを見ていた。

「さて、其方らには与えるべきものを与えた。幸助殿には妾の褒美を与え、他の者にもそれ相応の対価を支払った。己が望むものであれば問題ないんじゃが、異を唱える者はおるかの?」

俺は首を横に振って答える。他の皆んなはそれぞれの反応で答え、一応大丈夫らしい。

「うむ!各々がそう思うならば問題なかろう。では、明日より始まる放浪、果たすべき終着を告げ命じよう」

遂にきたか。俺は來嘛羅の言葉を全て余すことなく聞いた。

「松下幸助殿、新城悟美、十六夜紗夜、雪姫、すね子。其方らには“三妖魔”を探し出し、妖都:夜城へ連れてくることを命じる。長旅になるか短旅になるかは示す道標みちしるべを辿る次第じゃ。妾の指した場所に赴き、現地の者からの情報を頼りに、“三妖魔”の出現を暴き、他の妖怪と共に捕獲しておくれ。じゃが、其方らは妾の庇護下に降りし者故、太古の妖怪である者に目を付けられるじゃろう。妾の加護を受けた者ならば大抵の妖怪は見逃しても問題ない。特に、気を付けなければならぬ妖怪の名を教えてやろう」

真剣な表情で扇子を叩き、座っている椅子に尻尾を絡める。


「其方らの知識に『付喪神ツクモガミ』はおるか?」


俺はその妖怪に心当たりがある。知っているが、付喪神自体がどんな姿かは分からねえけど。

この際、付喪神の恐ろしさがこの世界ではどれぐらいなのかを知っておきたい。

「その妖怪って、100年経った物に宿る付喪神だよな?」

「合っておるぞ。室町よりその名は刻まれておるし、平安からも僅かじゃがその存在は謳われておる。善と悪の両面を持つ妖怪は意外と少なく、付喪神はその一人じゃ」

やっぱ間違ってないな。善意と悪意を持ってる妖怪がいるのは別に驚かない。

実際、九尾狐は善良な妖怪と崇められているし、玉藻前や妲己のようにワルな妖怪だっているんだ。

でも、何か含みがあるように感じる。

「何か恐ろしい妖怪なのか?相手を呪ったり、他者を脅したりとか…」

「恐ろしゅう奴じゃよ。言ってしまえば、付喪神は妖界の“神つなぎ”の役目を担う太古の妖怪じゃ。神と物を容易く繋げ、物を通じて他者に訴えるのじゃよ。如何なる武具に現れては他の者に善悪問わずもたらす。それも、其方らが所有する武器から現れるものだから厄介な妖怪として恐れられておる」

それ、相当ヤベェ奴だよな?俺はゾッとした。

冷静に思えば、俺が持つ武器からも出てくるって話と直結するし、何よりも、気紛れ神様みたいな奴だという。

「姿とかはないのかよ?」

「付喪神は肉体を持たぬ。また、妾の妖術や他の者の異能も受けぬ干渉できぬ。魂もない故、触れても捕まえられぬ。誰もその姿を知らぬし、妾ですらその容姿は未確認じゃ」

「マジかよ…。なんでそんなのが俺らが気を付けなきゃいけないんだよ?」

「幸助、化け狐が言っているのはそういう意味じゃない」

雪姫が隣で否定する。

「じゃあどういう意味だよ?」

「付喪神は中立な立場を執り司る物の妖怪。私達が気を付けるべきは、今持つ武器を安易に見捨ててはいけないということ。例えば、幸助が今持つ刀剣がそう」

雪姫は付喪神を知っている口だった。


後から雪姫に教えて貰ったが、妖界の誰もが知る妖怪のようで、その存在は身近なものに宿っているという。特に、長年使うようなものに必ず宿る意思のようなものらしい。


俺が知る限りでは、武器以外にも宿る。後は、人型を模った物にも憑き易い。


俺の見解とは違うが、この世界では雪姫の言うことがそうらしい。


「そうなのか?まあ、これを手放すなんてあり得ねえよ」

「シシシッ、私もかしら!三節棍以外で面白い武器はなさそうだし」

「私も…武器はす、捨てないから大丈夫…だと思います」

俺が決心する横で、悟美と紗夜も自分の意思を見せた。悟美は捨てそうな奴だと思うのは、俺の勝手な思い込みだ。武器を簡単に捨てるのに、こいつは一番躊躇いなさそうだし。

「雪姫の言う通りじゃ。年月を積み重ねた物に彼奴は宿る。当然、其方らが愛用するであろう武具には付喪神が宿るやも知れぬ。理由なく手放せば、ソレは牙を剥こう」

まあ良いや。俺が捨てることは絶対にないし、何よりも、來嘛羅と無名から貰った俺の大事な物だしな。

捨てるっていう考えが可笑しいだろ。

この忠告はしっかり聞いておかないと、今後何かあったら大変だからな。俺は念を押して、自分の武器となった【絶無】と【漸銃】に誓った。




その夜、俺と雪姫は最後になるかも知れない妖都で、宿屋で明日の準備を済ましていた。


更に、俺の誕生日を祝ってくれるみたいで、その準備もしている。

「頼む雪姫!ちょっとカッコいい服ないか⁉︎」

「幸助、そんな大層な服、私は持っていない。化け狐のお祝いに祝服は着なくていい」

雪姫は俺が袴を着るのを駄目と言う。俺は成人式をしないで死んだから、どうしてもそういう行事はしたかった。

「なあ、俺だって未練がなくて死んだわけじゃねえんだ。頼むよ!今日は誘われてるんだし、雪姫の妖術とかで服作れねえか?」

「…呆れた。まさか、私がそんな複雑なことをできると思う?」

「できねえのか?」

「私の妖術はあらゆるものを凍らせてかたどる妖術。自ら望んだ物を作れる万能な妖術ではないの。私が操れるものは天候と空気に人体、後は温度だけ。操れないのは伝承で定められているから仕方がないけど」

普通に万能な力だと思うんだが。天候操れるし、空気中の埃や水滴も操れる。おまけに人も体温も操作できるって怖えけどな?

「いやいや、それ十分だろ?妖術でそこまで出来るなら最強の類だろうぜ?俺は二度かな?氷結を思いっきり放ってみたが、あんたの威力は俺以上だった」

俺は秋水を一発で仕留めたが、あれは油断していたから。腐食した男に全力で放ったつもりで不発に終わった。

だが、雪姫は俺が任せた名妓を倒し、俺が仕留め損なった腐食した男を難なく倒した。


経験の差って言えば納得も納得。俺よりも技術的にも精度的にも格上なのだ。


なのに、不思議なことに、俺は妖術を扱える。しかも二人の力をだ。


雪姫の妖術を扱い始めてから俺の成長は、跳び箱を飛ぶように早かった。剣の腕はからっきしだと思ったが、雪姫の剣技を見て振るえるようになり、來嘛羅に鍛錬して貰い、手合わせを見てから『未来視』ができるようになった。更には、悟美との戦いで狐を模った妖術を無意識に放っていた。

訳がわからねえと言えばそこで終わりだ。だが、俺は妖術を知らないわけではない。


妖術は人間には扱うことができない。これは、この世界のルールのようなのだが、俺は知らず内に妖術に目覚めてしまった。

「幸助は確かに私の妖術や化け狐の妖術を身に付けた。だけど、妖怪の力は他の妖怪を脅かすきっかけにもなる。幸助がどうして、私の妖術を会得してしまったのかは理解できない。勝手に妖怪の力を使っていると他の妖怪に知られれば、あなたは襲われる。あなたを目障りだと思い、その命を狙う妖怪が現れる。多分、この旅でも出くわすと思う」

俺に突きつける現実は冷たいものだった。

いや、俺が単に無知なだけだったんだ。


妖怪の妖術を使う俺は、この世界では受け入れ難い人間だという。“妖怪裁判”によって明かされたのは、俺の能力の詳細。だけど、妖術が使えるとは何も知られていない。


來嘛羅は情報操作をしてくれたようで、俺の能力は『名を与えた妖怪に力を与え、妖術を模倣コピーする異能』として噂として拡散された。

本当の能力自体、俺が知っているわけもなく、事実なのか嘘なのかは俺にも分からない。

本当に俺の能力は《名》なのか?俺は僅かばかり疑問を抱いていた。

だから俺は、雪姫から忠告を受ける。


「俺の能力が名と直結する妖怪の妖術を使う。間違いなくそれが認識されているのは分かってる。だけど、そんな俺と敵対する理由なんてねえだろ?」

不安はある。けど、そこは俺がなんとかすればいい。まだ楽観視している自分がいた。

「幸助、それは違う。人間が妖術を使う事を認められていないの。あなたの異能だから思って言わなかったけど、旅をすることでその事実は隠せなくなっていく。分かってないの。その力を無闇に見せて、私の力や化け狐の力を使っていると他の者に知られれば、その命は明日あすもないかも知れないの」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!妖術が俺に残された取り柄なんだぜ⁉︎それ以外は至って普通の人間だ。それが使用不可とかだったら……」

笑い話で済む話ではないぞ⁉︎俺の命がかかってんだ!

大体、來嘛羅はそんな大袈裟なことは話していなかった。俺の能力が可能性あるとまで言ってくれた。

なのに、ここで雪姫に危険な事を告げられ、俺は冷静でいられないぐらい怖くなってきた。


なんだ、この矛盾するのは……?


「間違いなく、幸助は危険に晒される」


旅の直前、俺は本当の意味で、今の事態を理解した気がした。

遅過ぎる真実の呑み込み。俺はバツが悪く、悪態を一言で表す。

「っ……クソ」

「口悪くしても変わらない。だって、あなたが“放浪者”じゃなければ……いいえ、私には悔やむ時間はない。だから、私が今から言うことを守って欲しい」

俺に近寄り、手を力強く握ってきた。冷たいが、力強いと思った手は震えていた。


その時の雪姫は、俺と同じような顔をしていた。


今、雪姫の顔から見えたのは、恐ろしく冷たい表情。そこに隠れ見える悲愴な表情。


我慢しているようで、堪えきれない焦燥を浮かべ、互いに思い悩んでいる。それが俺と雪姫が似ている部分に思えた。


だが、それは俺にしか分かんないんだろう。


俺と雪姫は多分………。


雪姫は俺の首元に手を添え、俺に息を吹き掛けるように言う。

「私が傍にいない時は、私の許可なく妖術を使わないこと。旅の途中、私の傍から勝手に離れないこと。妖怪にちょっかいを出されても、自分の安全を優先して。そして……幸助は、私よりも先に逝かないで」

優しい言葉ではなく、束縛が混ざった約束だった。


雪姫の心配のが可笑しい気もするが、その心配が嘘でないのが俺には分かる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ