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妖界放浪記  作者: 善童のぶ
放浪前記
50/265

49話 不良の対処方法

悟美の不良対象方法、これは正当な暴力……いや、一方的な気が……。

一応、悟美もちゃんと人間味あるので安心して下さい。感じられるかは知りませんが…。 


実はこのキャラ、pixivの転すらの方で登場するキャラクターと性格は殆ど似てます。自分が考えたこだわりあるキャラクターなので、愛着持って下さると嬉しいです。

俺達が話しながら歩いていると、五人組の男一人が紗夜にぶつかってきた。


「ってえなぁ‼︎俺にぶつかんなよクソ女‼︎」


紗夜が持っていた飲み物が派手に溢れる。

「あっ…あぁ…‼︎私の…お茶が……」

余程ショックだったのか、泣き始める紗夜。

男はわざとぶつかってきた。誰からも分かるような酷いぶつかり方だった。

そして、運悪くぶつかってきた男の服を汚してしまった。


「おいクソ女!お前が前見ねえせいで、俺の服が台無しになっちまったぜ?弁償、しろよな?」


如何にもヤンキーっぽい服装の五人なこと。そして態度もウザい。

「あ……私…ちゃ、ちゃんと避けました…」

「あっ⁉︎聞こえねーんだよ‼︎」

紗夜の胸ぐらを掴み、男は激しく揺らす。

分華が止めに入る。

「やめろよテメェら!コイツに手を出しやがって!タダで済むと思うなよ⁉︎」

「なんだお前はよー?あー?罪人がふざけてんのか?口を開くんじゃねえぞ?死にてえのか?」

「テメェらこそ、ソイツを離しやがれ。怖がってるんじゃねえかよ⁉︎」

堂々と止めに入ったはいいものの、分華は凄く震えていた。

すると、他の男は隠し持っていた拳銃を見せつけてきた。

「大人しくしろよ?こいつがどうなってもいいなら構わないがな?」

捕まえた紗夜に銃を突き付ける。

紗夜は震え、凄く怖がっていた。

「さ…悟美ちゃん…」

もがけば撃たれる。紗夜は理解しているのか、声だけ発して動こうとしない。

紗夜が動けない事をいい事に、男達は周りに威嚇し始める。

「この女に近付くなよ?この銃は特殊でな?『魔弾の射手』様によって作られた殺戮兵器なんだぜ?撃たれたものは確実に死ぬ代物だ」

マジかよ……。

伝承は薄いが、ある程度有名な銃の妖怪の名をがいるとは知らないぞ。

そして、こいつらには加護がある。

実力は俺の方が上だが、紗夜が巻き込まれたとなれば話は別だ。

紗夜は俺的には弱いと思っている。撃たれたら殺されるに違いない。




俺が動けないでいると、悟美が臆する事なく男達の方へ歩いて行く。

「っ?動くな!こいつがどうなっても良いのか⁉︎」

男は警告する。

しかし、悟美は歩むのを止めない。

「シシシッ!銃がなんだっていうの?ただのコケ脅しにしか思えない武器だわ。ねえ?その武器で妹みたいに可愛がっている紗夜をどうするつもりかしら?」

笑いを見せている悟美だが、異常なまでに男を睨んでいた。

怒っているのか、ただウザいのか。なんでその目をしているのかは分からない。

ただ、悟美から感じる不穏オーラはいつもの狂気とは違う。

「そんなもん。こいつには服を汚した罪を償わせて貰う。なんせ、前あった服屋は潰れちまって、同じ服がないものだからな」

「じゃあ洗濯しちゃえば?そうすれば問題ないでしょ?」

悟美は正論を言う。

しかし、ヤンキー達が大人しく頷くわけがない。

「洗って済むなら警察いらねえんだよ!此処は俺達人間の町だ。俺達に逆らうなら殺すぞ?」

「へぇ〜殺すね〜?その言葉の意味、貴方は知ってるの?」

「ああ知ってるとも!死ねば何もかもなくなるって事だよ‼︎」

パァン!と乾いた音がする。

悟美がよろっと足元がふらつく。

街中で撃った音は人々に響き、多くの者が逃げて行く。


「馬鹿め、こいつ避けずに受けたぜ⁉︎」

弾は直撃。悟美でも『魔弾の射手』の妖術の籠った威力を受けたら一溜まりもない。


「シシシシッ‼︎これが銃の感覚……ね?シシシッ!ふにゃっとして気持ち悪いかしら?」

よろけていた筈の悟美は体勢を戻し、笑いながら弾の感触を言った。

「なぁっ⁉︎死ななかったのか…⁉︎」

ヤンキー達は全員してたじろぐ。

面白い光景だが、悟美の恐ろしさが勝り、それどころではなかった。

「だって、こんな程度の武器が貴方達の武器なんでしょ?飛び道具がお好きだなんて、随分面白くない遊びしか知らないのね?」

悟美は再びヤンキー達の方へ歩む。

「く…来るなぁ!来たらこの女を殺す‼︎」

「殺す?何言ってるのかしら?貴方達ゴミでは紗夜は倒せないわ。私一人で十分だわ〜」

悟美は口に含んだ何かを鉄砲のように噴いた。

音もなく、一瞬何が起きたのか理解出来なかった。

しかし、男が叫び出し、その事態を瞬時に理解する。

「がぁ…あああああっっーーー‼︎腕が…腕がああっーーー‼︎」

銃を突き付けていた男の左腕は吹き飛び、銃と一緒に腕が落ちた。

悟美は弾丸を口で受け止め、口に含んだ弾丸を肺活量だけで吹き飛ばしたのだ。


まるで暗殺者みたいな神業だな。


他のヤンキー達は悟美に怒号をぶつける。

「何してくれたんだ‼︎大怪我させやがって‼︎」

「貴様っ‼︎タダで済むと思うなよゴミ女が!」

「まずは腕を斬り落とし、足ももいでやる。それから荒野に捨てて妖怪にでも食わせてやろうか⁉︎んあぁっ⁉︎舐めてると殺すぞ‼︎」

他の四人も拳銃を取り出す。躊躇いもなく、俺達へ数十発の弾丸を発砲する。

俺は刀剣を握り、攻撃に備える。

だが、俺は『未来視』で視た。

必要ないと分かり、構えるだけにした。

悟美が三節棍で弾丸を全て弾き、誰も被弾しなかった。

「弱いわ。でも、銃の腕だけはあるのね?こんな武器に怯む私に見えたかしら?」

悟美の身体能力は正直に言って、かなりぶっ飛んでいる。

俺が雪姫と來嘛羅から加護を受けていた時ですら勝てなかった。

逆に聞きたい事といえば、秋水の奴が現れた時に悟美が暴れていたら、間違いなく悟美が全員終わらせていたかという事を聞きたい。




「な、なぁ…提案があるんだ。俺らを見逃してくれねえか?服の事は無かった事に、だな⁉︎」

悟美の恐ろしさを理解したヤンキー達の態度が一変。謝る姿勢を見せ、その場から立ち去ろうとする。

しかし、奴らは触れちゃいけない禁忌を犯したんだ。

悟美からは逃げられねえよ。

悟美は落ちた腕を拾い、それを見せびらかすように狂気に笑みをする。

「ねえねえ〜?腕取れて痛みはあるかしら〜?この世界なら簡単にくっつくし、治療すれば後遺症なく使えるよね?この腕、返して欲しいかしら〜?」

「か、返してくれよ!こいつの腕だからさ?」

「じゃあさ……なんで紗夜を返そうとしなかったのかしら?」

「っ‼︎」

ヤンキー達は悟美を見て、人間ではないと悟った。

悟美の声のトーンが反転したように、邪険で冷酷な態度を見せた。

普段のテンションとは違い、見ているこっちまでが萎縮してしまう。

「だって、ゴミ共は私の妹にいちゃもん付けて銃を突き付けたでしょ?そしたらこっちにもその権利はあるわ。この腕がなければ、再生の異能を持たない人間は治療しても腕がないままだもの」

倫理観が崩壊してる。

だが、俺達全員が口を出せる雰囲気ではなく、悟美はただヤンキー達に邪険を向ける。

「何言ってんだよ⁉︎もう返しただろうが‼︎」

男一人はいつの間に戻った紗夜を指差す。震え、自分達はもうやったないと一点張り。

「返した?へぇー返したのね〜?貴方達は紗夜を返してくれたの〜?それだったらそっちは用はないのね?」

怪しく笑う。

ヤンキー達はホッとしたのか、悟美に近付いて腕を返して貰おうとする。


しかし腕は返して貰えない。紗夜は不敵に笑う。

「じゃあさ〜後は私が好きにやって良いのね!」

「えっ…がぁっ‼︎あああああ‼︎」

近付いた男の顔面を鷲掴みし、ミシミシと音を鳴らす。

ヤンキー達は必死に叫ぶが、悟美には一切聞こえない。それどころか、悟美の顔が紅潮し始め、美味しそうな食べ物を見るような嬉々とした表情を見せる。

「もう遊ばないのでしょ?紗夜と遊ぶの飽きたならさ、私が思いっきり遊んであげるから!シシシッ、あんなもの私の前でされちゃうと興奮しちゃうじゃ〜ん⁉︎ゴミ共が悪いのよ?私が誰かも知らないで揶揄って、そんな危険な武器まで見せつけられちゃって……えへへ、退屈してたから遊んであげるわ!気が済むまで、ね?」

「あああああっっーーー‼︎」

町に悲鳴が響く。誰も止める者はおらず、悟美の独壇場となる。

「頭って意外と脆いらしいわよ?まだ一割も力入れてないけど、私が本気出したら卵みたいに割れるかも知れないわ。でも……やっぱりこの悲鳴が心地良いわ‼︎ねえ?もっと叫んで欲しいわ〜⁉︎男なんだし、叫ぶだけは男前でいいわね⁉︎逃げられないのに逃げようと踠く姿は見ていて愉快だわ!」

「離じてくだヒャぃ…離じぇ……」

「え〜?男が泣いてる姿も惨めで心が踊るわ!でも、叫んでいる姿の方が興奮するから、少し力入れるね?」

そう言うと、悟美は掴んでいる男の頭蓋骨が割れるんじゃないかの勢いで力を入れた。

男は今までにない断末魔のように叫び、痛みに絶叫する。

「ギャァァァァァァァッッーーー!!」

数秒でそれは終わるが、悟美は満足したように邪悪に笑う。

「えへへ!ゾクゾクしたわ〜‼︎気を失っちゃったみたいだから……シシシッ!次は四人が遊んでくれるかしら〜⁉︎」

敵のような無慈悲で狂人。

ヤンキー達は、悟美の異常性に震え上がり、脱兎の如く逃亡を図る。


「シシシッ‼︎逃げられないわよ〜?」


ハンターに狙われた獲物は逃げられない。

悟美に目を付けられた存在は、悟美から逃げる事は出来ない。


信じられるか?こいつ、これから俺と旅する奴だぞ?

信じたくないが、こんな危険な奴を隣で歩かなきゃならない。


人選……変えて貰いたい。


俺はそう心の中で強く願った。

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